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九電に国の補助金、県から負担金が判明
福岡知事選 "傀儡"の証明(下)

2011年3月23日 10:00

 いわゆる「電力会社」は、電気事業法に規定された"一般の需要に応じ電気を供給する事業"を営むため、"経済産業大臣の許可"を受けた会社で、法律上は「一般電気事業者」と呼ばれる。九州電力を含め、北海道、東北、東京、北陸、中部、関西、中国、四国、沖縄の10社しかなく、それぞれが事実上の「地域独占企業」であり、電力供給という公益を担う事業者である。
 そのため、不偏不党、政治的中立が要求されるべき企業であり、所轄官庁である経済産業省との関係においては、さらに一定の距離が必要なはずだ。
 であるにもかかわらず、4月の知事選に向けて同省OBを担ぎ、「相乗り」を推進したのは、ほかならぬ九州電力の代表取締役会長・松尾新吾氏なのだ。

支援組織代表に九電会長 
 九州電力は、前述したとおり、"経済産業大臣の許可"を受けており、電気料金の設定から発電所の設置等々、大半の事業において経済産業省の許認可が必要となる。九電にとっては「頭が上がらない存在」(自民党関係者)だ。
 麻生知事、そして今回の知事選の出馬予定者である小川氏は、ともに京都大学から旧通産省(現・経済産業省)に入省し、特許庁長官を務めたという経歴を有する。両者の古巣である経済産業省は、監督される立場の九電にとっては逆らいがたい存在。同時に、知事選の候補者選定で名前の挙がった他の誰よりも、九電が小川氏に親近感を持っていたことは想像に難くない。
 九電の松尾会長は、小川氏支援を各方面に働きかけただけでなく、小川氏の支援組織である「福岡の未来をつくる会」と「小川洋後援会」の代表にも就任している。繰り返すが、小川氏の出身官庁は九電の監督官庁である経済産業省なのだ。九電会長が公然と経産省出身の小川氏支援を行なうことについて、不適切との批判が上がるのは当然であろう。

資源エネルギー庁から九電に補助金 県からは負担金が判明
資源エネルギー庁 ところで、政治資金規正法は、寄附の質的制限として、国や地方自治体から補助金、負担金、利子補給金その他の給付金(試験研究、調査又は災害復旧に係るものその他性質上利益を伴わないものを除く)の交付決定を受けた会社について、交付決定の通知を受けた日から1年間、国会議員や地方政治家の政治活動に関する寄附を禁じている。
 また、公職選挙法は、国会議員の選挙に関しては国と、地方自治体の議会議員及び首長の選挙に関しては当該地方自治体と、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し寄附をしてはならないと規定している。
 福岡県に確認したところ、九電本体については、平成19年から22年までの間、県から補助金を支出した実績はなく、請負契約も交わしていないとしていたが、情報公開請求によって、平成21年、22年と負担金を支出していたことが明らかとなった。
 さらに、経済産業省及びその外局である資源エネルギー庁への確認取材から、平成22年度に資源エネルギー庁から九州電力に対し、補助金が支出されていたことも分かっている。事業名は「平成22年度分散型新エネルギー大量導入促進系統安定対策事業費補助金」で、東京電力など前述の一般電気事業者10社に合計3億4,000万円あまりの補助金が支出されている。経済産業省と九電の関係を示すひとつの事実である。

支出負担行為決議書 兼 支出命令書  支出負担行為決議書 兼 支出命令書
 ※松尾氏に対しては今月3日、取材のため、同氏が代表を務める「福岡の未来をつくる会」の事務所を訪ね、小川氏が経済産業省のOBであること、同省は九州電力の所轄官庁であり、さらには九州電力が同省の外局である資源エネルギー庁から補助金を受給していたことなどを示した上で、九州電力の会長である松尾氏が、所轄官庁OBを支援するための政治活動をすることは不適切ではないか、との質問書を提出した。応対した麻生元首相の秘書は、松尾氏に伝えるとしていたが、出稿時点では何の回答もない。 

麻生知事側に九電関係80人以上が献金
 九電をはじめ電力各社は、公益事業を行なう会社として企業献金を自粛してきたとされる。このため、麻生知事をはじめ各県の知事などには、九電幹部らが個人献金の形で政治資金提供を続けてきた。
 麻生知事の資金管理団体「清朋会」の平成21年分政治資金収支報告書によれば、同団体に個人献金を行なったのは91人。このうち、確認できただけでも83人が九電の役員や幹部社員だった。会社としての意思が働いたと見なければ、こうした動きは説明がつかない。つまり、九電は、会社ぐるみで知事への政治資金を提供してきた可能性があるのだ。癒着と言われても仕方があるまい。

 九電会長が知事選の陣頭指揮に立つことは、こうした観点からも不適切。松尾氏自身は、個人的な動きであると抗弁するだろうが、「福岡の未来をつくる会」の印刷物には、小川氏を応援する人たちのメッセージが記載されており、最上段中央には松尾氏の顔写真とともに"九州電力会長"の肩書きが明記されている。

「つくる会」会計責任者は知事の金庫番
 小川氏の支援団体である「福岡県の未来をつくる会」は、今年2月10日に設立され同日付けで県選管に政治団体設立届を提出しているが、会計責任者は小川氏擁立に狂奔した麻生知事の資金管理団体「清朋会」の会計責任者と同一人物だった。腐敗県政に加え、麻生知事の金庫番、そして政治資金の流れがそのまま小川氏に引き継がれるとしたら、「傀儡」はいっそう現実味を帯びる。
 
 小川氏の支援団体「福岡の未来をつくる会」は18日、震災をよそに会費2万円の政治資金パーティを市内のホテルで開催した。会場で、同団体と麻生知事の資金管理団体「清朋会」の会計責任者を兼任する人物に話を聞くことができた。

 ―― あなたは、麻生知事の資金管理団体「清朋会」の会計責任者ではないか?
「そうです」

 ―― あなたは、福岡県のOBではないか?
「そうです」

 ―― 「福岡の未来をつくる会」の会計責任者は、誰に頼まれて引き受けたのか?
「経済界とか知事とかですよ。急に(小川氏支援の)政治団体を立ち上げなければならなかったから。がたがた言わんで、(会計責任者を)しなさいと・・・」」

 ― 麻生知事の政治資金システムは、そのまま小川さんに引き継がれるということか?
「それはないと思うが、後援会を作って、それからだから」

なぜ「傀儡」が許されないのか
 一連の事実から見えてくるのは、高い確率で次の福岡県知事になると予想される小川氏が、九電、さらには九電をコントロールする経済産業省と不可分な関係を持っており、元首相や不祥事を受けて引退するはずの麻生・現知事には頭が上がらないという図式だ。中央官庁と元首相、さらには引退知事の「傀儡政権」と化す可能性は否定できない。とくに、中央官庁の存在は容認できない。
 ではなぜ、「傀儡」が許されないのか。答えは、今回の震災による福島第一原発の事故を巡る電力会社と、経済産業省原子力安全・保安院の姿勢が雄弁に物語っている。
 
 東日本大震災が発生し、放射性物質飛散の恐怖を与えている福島第一原発の事故を巡っては、事業者である東京電力、監督する側の経済産業省原子力安全・保安院、ともに不確かな情報や理解できない言葉を並べ立て、国内外からひんしゅくを買った。あたかも互いの失策を巧みにかわそうとしているようだ。隠蔽と言っても過言ではない。背景には、電力会社と経済産業省の癒着体質が存在する。実態を示す事例を挙げてみたい。

 今年1月、経済産業省の外局である資源エネルギー庁長官だった石田徹氏が、退官してわずか4カ月後に東京電力顧問になったことが判明、「天下り」として批判を浴びた。政府は退官後に東電側が就任要請したもので、あっせんによる、いわゆる「天下り」ではないとして火消しに躍起になった。が、どう見ても「天下り」である。
 
麻生県政を継承 九電も、平成10年に資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課長や官房審議官を歴任した旧通産省OBを顧問に採用。登記簿などを確認したところ、同17年には取締役に、同19年から20年6月までは常務執行役員に据えていた。東電のケース同様、九電と経済産業省が一体と見られてもおかしくはないだろう。

 プルサーマル計画を実施中の九電・玄海原子力発電所から、福岡県糸島市までの距離は約20km、福岡市なら約50kmだ。玄海原発に重大な事故が発生した場合、小川氏は福岡県知事として、九電や経済産業省へのしがらみを断ち、毅然とした態度で臨むことができるのだろうか。小川氏の、同省や九電との距離が近すぎるだけに疑念は払拭できない。ましてや、自身の後援組織の代表者である松尾会長や世話になっている九電に対し、強い態度を示せるとは思えないのだが・・・。
 さらに、経済産業省に限らず、中央省庁OBは、古巣の権益を守ろうとする傾向が強い。出身官庁やその管轄下にある電力会社トップの後押しで権力を掌中にした場合、その傾向はより強いものになると考えるほうが自然だろう。しかし、県知事は中央省庁や一企業のための存在であってはならないはずだ。そうした意味で、経済産業省の管轄下にある九電の会長をトップにした小川氏側の陣立てには大いに疑問がある。
 原発事故など、万が一の場合に、県民ではなく出身官庁や一企業の方を向いている知事では困るのだ。

 一方、福岡県庁では、県営住宅課が、震災に遭った福島県の避難2世帯に対し、到着が3連休となり業務時間外となることを理由に鍵の受け渡しを拒否していたことが明らかとなっている。官至上主義ともいえるこうした県庁の体質は、麻生渡知事による4期16年という長期政権の歪みである。幹部職員が接待漬けにされたあげく、副知事が収賄で逮捕・起訴(有罪が確定)された、いわゆる"町村会事件"も遠因は同じだ。
 こうした腐敗県政が継承されていいはずがない。しかし、小川氏の支援団体「福岡の未来をつくる会」の印刷物には、堂々と「麻生県政の継承」と記されている。
 断っておくが、腐敗県政の継承を誰より望んでいるのは麻生知事自身であり、九電を軸とした経済界の一部と連合福岡の幹部などが追随しているに過ぎない。多くの県民にとっては、迷惑この上ない。

 中央官庁、電力会社、元首相、そして引退する知事。多くのしがらみに、がんじがらめにされた知事が誕生する可能性は高い。知事の「傀儡化」は、県民不在の県政の象徴である。

おわり



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