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問われる小選挙区制と政党交付金

2018年11月 7日 08:25

8af47d3e1469444682567b07fd6704149c314769-thumb-230xauto-24414.jpg 昨年、小池都知事率いる「希望の党」公認で衆院選に出馬し、比例代表で復活当選した小川淳也議員(比例四国)と、同様に比例代表で復活当選した今井雅人議員(東海比例)が国民民主党を離党し立憲民主党に入会を申請した。立憲民主党は会派入りを認める方向だ。
 国会法は比例代表で当選した議員の政党間移動を規制しているため、小川・今井両氏は立憲民主党への入党は出来ない。そのため「会派」に入って国会活動を続けるとしており、入党は衆議院の解散後となる。一連の動きに違和感を覚えているのは、記者だけではあるまい。

■問われる「政党交付金」の必要性
 小川・今井両氏は「希望の党」と書いた有権者の票によって復活当選している。昨年の公約を見ると、希望の党と立憲民主党とでは憲法や安全保障、原発といった基本政策に大きな隔たりがある。この二人の行動には、「当選するためなら何でもやるのか」「政治信条があるのか。有権者への背信行為だ」といった批判的な声もある。

 毎年のように年末が近づくと、政党の離合集散が始まる。政党交付金の額を決定する基準日(1月1日)の直前に政党の議員数を確定しておかないと、翌年の政党交付金がもらえないからだ。「とりあえず5人以上の政党を作る」など、交付金を受け取るためだけに、理念の無い離合集散が繰り返されている。

 政党交付金制度は1995年に開始されたもので、国民の税金を原資(1人あたり250円)として所属国会議員が5名以上の政党に与えられる。この制度のきっかけとなったのは、リクルート事件や佐川急便事件、共和汚職事件といった汚職事件。政治とカネの問題を巡り国民の批判が高まったことを受け、「金のかからない政治」を目指し「政党助成法」を成立させ、衆議院に「小選挙区比例代表並立制」を導入した。

 本来は、国民に政治資金を出させることで、“企業・団体献金をなくす”という約束だった。しかし現実には各政治家の傘下にある「政党支部」が今でも企業・団体献金を受け取っている。さらに、政党交付金の使途に関して明確なルールがないため、キャバクラ代など不適切な支出への問題が度々起きている。

 また、「人件費」については、国に出す交付金の使途報告書や政治資金収支報告書に支出先の記載が求められていないため、「人件費支出」との名目で飲食費や情報提供者への謝礼などに使われる事例が後を絶たない。人件費は、支出全体の3割を占めているのが現状だ。

 「人件費ならバレない」として、毎月数十万円の支出を計上し、それを飲食に使っているケースもある。また、1万円以下の交通系ICカードのチャージ代で、議員の息子らが飲食や生活費に使うと明かされたケースもあった。1万円以下の領収書(少額領収書)は請求がない限り提出する必要がないため、ICカードのチャージ代などを不正に利用しているのだ。政党助成金制度を悪用した「錬金術」が横行している。

 平成29年度における政党交付金の支給額を、制度を成す「得票数割」と「議員数割」の金額に分け、さらに各党への総額と所属議員一人当たりの交付額などをまとめるとこうなる。

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 交付金の受取額が最も多いのは自民党。約176億円でダントツだ。次いで約87億円の民進党、約31億円の公明党と続く。驚いたことに、たった二人の所属議員しかいない「日本のこころ」に、5億円近い交付金が支給されていた。自民が議員一人当たり約4,300万円程度であるのに対し、日本のこころの議員には一人当たり約2億4,500万円。自民党の6倍となる計算だ。こうした形になるのは 政党交付金制度が所属議員数に応じた「議員数割」と、直近の総選挙と2回の参院選における得票数に応じて交付される「得票数割」で構成されているせいで、多くの有権者が支持した政党に公平に交付金を配分するという得票数割の趣旨は分かるが、さすがにこれは度を越えている。そもそも、いまの国会議員たちに、歳費の上に政党交付金まで上乗せして渡す意味があるのか疑問だ。

■何故、政治家が小粒になったのか?
 安倍首相に忖度して「意見を言わない空気」が蔓延する中、政治家や官僚が非常におとなしくなってしまった。ハッキリ言って「つまらない」。

 かつての自民党には、いわゆる「三角大福中」(三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘)がいて、それぞれ個性的で強いリーダーシップをもっていた。いずれも派閥の創業者で、「日中関係に強い田中、経済に強い福田 、国鉄改革の中曽根」というようにそれぞれが特徴を持っていた。そして、三木派は「ハト派」、中曽根派は「タカ派」。財政に関しては、田中派は「財政出動派」、福田派は「緊縮財政派」。こうした個性の違いが政策論争となり、自民党を常に活気づけバランスを保ってもいたが、今はすっかり様変わりだ。

 選挙制度が「中選挙区制」から「小選挙区比例代表並立制」に変わり、派閥に入会する利益が失われた。それまでの中選挙区では派閥が推す候補者が競い合い、派閥同士の戦いが他の政党との競争よりも激しいほどだったが、小選挙区制になると候補者は1人。公認権を持つ党に力が集中し、総裁と幹事長が力を握ることになる。これも党の活力を奪った要因のひとつだろう。

 政党助成法のおかげで、派閥が持っていたカネの威力も消えた。かつての派閥には、政策、教育機関として人を育てるということがあったが、今や派閥は仲良し倶楽部に毛が生えた程度の存在だ。小選挙区比例代表並立制に期待されたのは、「政権交代可能な二大政党制」という政治システムだったが、この制度は得票率が51対50の僅差であっても、選挙区で勝てば「得票率51」が議席を取り、死票が多くなるという問題を抱えている。

 その小選挙区制の利点を最大限に生かしたのが、小泉純一郎元首相だ。90年代初頭に政治制度改革の議論が持ち上がった当時、小泉氏は小選挙区制には大反対だった。ところが同氏は、小選挙区制度を利用して権力基盤を強化する方法を見つけ出し、2005年の郵政解散選挙で296議席を獲得して勝利する。この時の選挙で小泉氏は、郵政民営化に反対した政治家を公認しないばかりか、その選挙区に「刺客」を立て、落選させるという強硬な手法をとった。総裁や幹事長に誰も反対できない体制は、小泉氏が作り出したということだ。

 その後、次第に自民党は支持されなくなり、2009年の総選挙では民主党が308議席へと大躍進。歴史的な政権交代が実現し、「二大政党」と「政権交代実現」という小選挙区導入の狙いは成功していたように見えた。民主党と自民党が切磋琢磨する状況が続けば何の問題も無かったのだが、2012年の総選挙で、自民党が政権を奪還すると14年、17年の選挙でも自民党が圧勝する。以来、野党は自民に対抗することができず、民主党は自滅して「一強」が常態化することとなった。

 過去3回の総選挙で、自民党は40%台の得票率で6割以上の議席数を獲得してきた。小選挙区制度の本来の目的とは逆に、強い党をより強く、弱い党をより弱くしてしまっているという結果になっており、実はこれこそが日本の政治を歪めている元凶だ。ゴタゴタばかりで幼稚な野党に、優秀な人材が集まるはずがない。

 「消費税増税の前に、自らが身を削るべきだ」などと声高に叫ぶ議員は多い。しかし、本当に政治を変えようとするならば、諸悪の根源である衆議院の小選挙区比例代表並立制を改めるとともに、それに伴ってできた政党交付金制度を改めるべきだろう。「過ちては改むるに憚ること勿れ」というではないか。



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