「誰がやっても同じ」と言われる政治家に費やされる費用は莫大で、歳費や文書通信交通滞在費、公設秘書(3名)給与、グリーン車乗り放題のJR特殊乗車券や議員会館、議員宿舎の維持管理費などなどを合わせると、一人当たり8,000万円前後になる。大雑把な計算だが、最低でも総額約600億円の税金支出。これに年間300億円以上の政党交付金が支給されるというのだから、“盗人に追い銭”とはよく言ったものだ。
実はこの政党交付金、交付額の算定方法はあまり知られておらず、単純に議員数で決まるものと思っている国民が多いという。改めて交付金の仕組みを検証してみると、おかしな実態が浮き彫りとなる。
■複雑な政党交付金の算出方法
受取りを拒否している共産党を除いて、与野党が平成29年度に支給を受ける政党交付金の額は約318億円。巨額の税金が、期待を裏切り続けてきた「政党」に支出されている。
この政党交付金、議員数の多い政党ほどもらう額が多いのは確かだが、意外と知られていないのが、算出方法。議員一人当たり約2億5,000万円という、信じられない額を交付されている政党もある。一体、どうなっているのか――。
政党交付金(政党助成金)制度がスタートしたのは平成6年。不正の温床となっていていた企業・団体献金を制限する代わりに、一定の要件を満たした政党に、税金で政治活動費を交付する制度だ。
交付を受けることができる政党は、所属国会議員が5人以上いるか、または所属国会議員が1人以上で、前回の衆議院議員総選挙の小選挙区選挙もしくは比例代表選挙または前回か前々回の参議院議員通常選挙の選挙区選挙若しくは比例代表選挙で得票率が2%以上の政治団体となっている。
交付額は、国民1人あたり年間250円。直近の国勢調査で確定した人口を元に計算され、平成29年度は約318億円が各党に交付される予定だ。複雑なのは、各党への交付額算出方法。単純に議員数で割っているのではない。
政党交付金は、「議員数割」と「得票数割」で構成され、それぞれ総額の2分の1ずつ。前者は所属議員数に応じたもので、後者は直近の総選挙と2回の参院選における得票数に応じて交付される。計算式も複雑。下が、総務省がホームページ上で公表している仕組みだ。
■仰天!議員1人当たり2億5,000万円
この計算式に従って算出された平成29年度における「得票数割」と「議員数割」、各党ごとの交付額、議員一人当たりの交付額をまとめるとこうなる。
交付金の受取額が最も多いのは、当然ながら「一強」の自民党。約176億円でダントツだ。次いで約87億円の民進党、約31億円の公明党と続くのだが、たった二人の所属議員しかいない「日本のこころ」に、なんと5億円近い公金が交付される。自民が議員一人当たり約4,300万円程度であるのに対し、日本のこころの議員には一人当たり約2億4,500万円。自民党の6倍となる計算だ。「国民の非常識」を常識とする永田町にあっても、さすがに「これはおかしい」という声が上がる。こうした形になるのは前述した通り「得票数割」のせい。「得票数割」は、多くの有権者が支持した政党に公平に交付金を配分するためだというが、さすがにこれは度を越えている。
「日本のこころ」の前身は、平成26年に石原慎太郎元東京都知事を中心に結党された「次世代の党」。翌年「日本のこころを大切にする党」に、今年2月からは「日本のこころ」に党名変更していた。次世代結党時に20人近くいた所属議員は、選挙の惨敗と相次ぐ離党で激減。現在は、代表の中山恭子氏と中野正志氏の両参院議員しか残っていない。もともと極端な右寄りだった同党は、今年1月から完全与党化。参院で統一会派「自由民主党・こころ」を結成している。27年度には次世代の党として政党助成金約5億6,000万円を、27年度には日本のこころを大切にする党としてほぼ同額を交付されていた。重ねて述べるが、たった二人の政党に5億円の税金投入。明らかに公平性を欠いている。
日本の国会議員は衆議院が475人、参議院が242人。合わせて717人もの選良がいる。しかし、国権の最高機関である国会はまともに機能しておらず、「一強」の政治状況下、国民の声を無視して特定秘密保護法や安保法制、共謀罪法が強行採決されてきた。主権者の期待を裏切り続けている国会議員への公費支出が、本当に国家・国民のためになっているのか――。政党交付金の在り方を含め、再検討するべきだ。