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【加計疑惑】真相究明阻む今治市の隠蔽姿勢(下) 
「国会の要請」を無視 露骨な安倍・加計擁護

2018年5月31日 09:05

市章2.png 次々に飛び出す新証言や証拠文書によって、深まるばかりの学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡る疑惑。真相究明を阻んでいるのは、愛媛県今治市(菅良二市長)の隠ぺい姿勢である。
 愛媛県は国会の要請に従って一部の公文書を提出したが、今治市はこれを拒否。同市の情報公開請求も形骸化しており、すでに開示した加計関連文書を、一転して「非開示」にするという異常な対応だ。
 情報公開請求や国会の資料提出要請は、いずれも主権者である国民の意思に基づくもの。これを無視する今治市の姿勢は、異常と言うほかない。一体、何を守りたいのか――。

◆国会の要請を尊重した愛媛県と無視した今治市
 愛媛県が国会に提出した文書は計27枚。参議院予算委員会の要請に従って提出されたもので、この中に、安倍晋三首相と首相の“腹心の友”加計孝太郎加計学園理事長が会談した時のやり取りが記された復命書などが含まれていた。下が、参院予算委が愛媛県に出した要請文である。

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 提出が求められたのは、平成27年3月27日、4月2日、6月4日ないし5日の前後を含む日程で行われた国家戦略特区に関する出張の命令書や復命書など。愛媛県と今治市の職員が加計学園関係者とともに内閣府や官邸を訪ねたとされていたことから、出張の状況を確認するためだった。

 これに対する愛媛県側の姿勢を知ることができるのが、下の文書。同県が加計関連文書の提出にあたって添付した回答書で、県としての対応、提出文書の内容が記されている。

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 冒頭には、『参議院予算員会における与野党の合意により、国政調査権に基づいて平成30年5月10日付けで依頼があり――(以下省略)』とある。提出されたのは、存在が確認された4月2日の出張関連文書だったが、愛媛県は“国政調査権”に基づく依頼であったことから、“県庁をあげて調査”し、提出に応じたとしている。

 当然今治市にも同じ文面の要請が送られているのだが、同市は参議院の要請を拒否している。なぜ同じ愛媛の県庁と市で、こうも対応が違うのだろう。確認すべきは、資料提出の要請が“国政調査権”に基づくものであったか否かという点だ。

◆今治市が歪めた「国政調査権」の解釈
 国政調査権は、憲法に定められた国会の権能で、第62条に「両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる」と規定されている。官公庁に対する資料要求は、国会法104条の「各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない」という規定に基づいている。

 今回の愛媛県と今治市に対する資料提供の要請は、たしかに参議院予算委員会から出されたものだ。しかし、前掲した愛媛県の回答書の冒頭にあるように、「参議院予算員会における与野党の合意」によってなされた要請で、じつは議決を経たものではない。国政調査権に基づく資料要求を行うためには委員会なり院なりの「議決」が必要だったのだが、参議院の予算委はこれを省いて要請を行っていた。厳密にいえば、愛媛県と今治市に出された資料提供の要請は、「国政調査権を背景にしたもの」であって、「国政調査権に基づくもの」ではない。

 参院側は、地方の一都市が、議決の有無を理由に資料提出を断ってくるとは思っていなかったのではないか。今治市側に取材したところ、「参議院に確認したところ、資料提供の要請が『国政調査権に基づくものではない』という回答だったので、資料提出を断った」と明言している。国政調査権の解釈を歪めた今治市に、国会がなめられたということだ。

 ならば、参議院予算委員会の要請に効力が全くなかったのかというと、決してそういうわけではない。今回の資料提出要請にあたっては、参院予算委の理事会で合意がなされており、自民党も賛同している。つまり、議決可能な状態にあったということだ。「国政調査権」を背景とする資料提出要請であったことは間違いない。愛媛県は、そうした事情をすべて承知の上で、国会の要請に応じたと考えるのが妥当だろう。日本の役所として、極めて常識的な判断をしたと言えよう。県が国会に資料を提出した後の騒ぎについては、周知のとおりである。

 理論上、今治市の「国政調査権に基づく資料要求ではないから、資料提出を断る」という主張は間違いではない。だが、“予算委理事会での与野党合意”を前提とした今回のケースに限って言えば、それは同市が議会制民主主義の本質を理解していないことの証明でもある。

 国会は、選挙で選ばれた国民の代表によって組織されており、特定の委員会であったとしても、与野党合意がなされた場合は、合意事項が“国民の意思”に等しいと見るべきだ。議会制民主主義である以上、当然の解釈だろう。しかし、今治市はなんとかして資料提出を拒む構えで、いまだに国会の要請を無視し続けている。同市が守ろうとしているのは国民ではなく、加計学園であり安倍首相なのだ。

◆隠蔽は加計と安倍のため
 HUNTERの情報公開請求によって、今治市が、同市の職員らが官邸を訪ねた平成27年4月2日から国家戦略特区諮問会議で加計学園の獣医学部新設が事実上決まった28年11月9日までに、内閣府に19回職員を出張させ、加計学園側とは13回も協議を重ねていたことが分かっている。すべての出張命令書と復命書が開示されれば、より詳しい状況が明らかになるはずだが、重要とみられる大半の文書は「非開示」としており、原本を見せることさえできないという。

決定結果.png 隠蔽姿勢も度を越すと犯罪的で、かつて他の情報公開請求で開示した平成27年4月2日の出張復命書を平気で「非開示」にし、理由を問うと「状況が変わったので、方針を見直した」と開き直る。今治市に、正常な判断ができなくなっている証左であろう。

 同市は、加計絡みの出張関連文書を「非開示」にする理由として、“関係者との信頼関係”が損なわれることを挙げている。しかし、行政機関がもっとも信頼関係を保たなければならない相手は「国民」。今治市にとっては「市民」ということになる。

 同市は加計学園に対し、評価額36億7500万円の約16.8ヘクタールにおよぶ広大な土地を無償譲渡しており、さらに施設整備費として63億円の補助金まで支出する予定だ。その方針決定過程を隠蔽することが、本当に許されるのか?



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