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【加計学園疑惑】 隠蔽の果てに「首相案件」文書
― 追い詰められた安倍政権 ―

2018年4月11日 08:45

DSC05803.JPG 学校法人「森友学園」の国有地払い下げに関する疑惑が再燃したとたん、今度は加計学園の獣医学部新設を巡って安倍首相本人の関与をうかがわせる文書の存在が明るみになった。愛媛県職員が作成した文書に記されていたのは、加計学園問題で重大な意味を持つ「首相案件」という文言。“やっぱり”というのが正直な感想である。
 新設された獣医学部の関係自治体である愛媛県と今治市は、保有する加計学園絡みの文書を隠蔽し疑惑に蓋をしてきた。だが、問われているのは首相が関与したかもしれない“便宜供与”の有無。関係機関は、速やかに情報公開を行うべきである。(写真は、「首相案件」を報じた朝日新聞の紙面)

◆安倍首相答弁に虚偽の疑い
 朝日新聞が10日の朝刊やデジタル版で報じたのは、2015年(平成27年)4月に愛媛県や今治市の職員などが首相官邸を訪れ、柳瀬唯夫首相秘書官(当時)及び藤原豊内閣府地方創生推進室次長(同)と面会した際の記録文書の内容。それによると、柳瀬氏が面会で「本件(加計学園の獣医学部新設)は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」と発言、藤原氏も「要請の内容は総理官邸から聞いており」などと安倍首相の意向で進める特別な事業であることを示唆していた。

 その後、同様の内容について報道各社が報じており、新たな加計文書が存在するのは確か。一連の報道を受け、愛媛県の中村時弘知事が10日午後に緊急会見を開き、県職員が作成した文書であることを認めている。

 問題の文書には、「先日安倍総理と学園理事長が会食した際、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があった」とも記されており、安倍首相が2015年4月2日以前に“腹心の友”である加計孝太郎学園理事長と獣医学部新設について話し合っていたことを示す内容だ。首相は、国会答弁で獣医学部新設計画を把握したのは「2017年1月20日以降」と明言しており、文書の記述が事実ならば虚偽答弁が証明されることになる。「(加計学園の獣医学部新設に)関わっていれば、辞める」と言った首相の喉元に、匕首(あいくち)が突き付けられた格好だ。

◆隠蔽の実態
 「首相案件」発言があったとされるのは2015年4月2日。この日、愛媛県と今治市の職員、加計学園の関係者が首相官邸を訪れていたことが同市が保有する旅行命令書などから明らかになっていたが、主な内容などは「非開示」とされていたため、官邸側の面談相手や会話の中身については分かっていなかった。

 都合の悪い情報を意図的に隠してきた愛媛県と今治市――。今年2月、HUNTERの記者が愛媛県と今治市に加計学園に関する公文書の開示請求を行ったが、県は関連文書の種類や分量さえ明らかにせず「隠蔽」。一方、保有文書を明示した今治市は大半の書類を「非開示」にして、説明責任を放棄している。今治市による隠蔽の実態は、下の通りである。(*赤い矢印とアンダーラインで示したのが、同市や県の担当者が柳瀬秘書官らと面談した日の復命書)

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 森友に続いて昨年5月に浮上したのが、国家戦略特区を悪用した学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題だ。その後の解散総選挙でうやむやにされた形となっていたが、学部新設のため加計学園に評価額36億7,500万円の土地を無償譲渡した上に96億円もの補助金を愛媛県と分担支出する今治市は、この問題に関する情報公開請求に対し、意図的な引き延ばしで開示決定時期を遅らせるなど後ろ向きの姿勢を露わにしていた。

 財務省の文書改ざんが明らかになったことで森友問題に関する情報開示は進みつつあるが、加計絡みの公文書は眠ったまま。愛媛県と今治市は悪質な隠蔽を続けており、真相解明に必要な文書は一切開示されていない。昨日会見した中村時広愛媛県知事は、問題の文書を「備忘録」と位置付けたが、「備忘録」は役所が内部文書を開示対象となる「公文書」から外す時に使う常套文句。公文書を破棄していれば公文書毀棄に問われることもあって、予防線を張った可能性が高い。

 加計学園の獣医学部は今年4月に開学して新入生を迎え入れており、開学認可が取り消されることはない。ならば、政府や愛媛県、今治市は保有する加計学園関連の公文書をすべて公開し、すっきりした形の教育環境を整えるべきではないのか。それでも国民への説明責任を果たせないというのなら、首相の知事も市長も、即刻辞任するしかあるまい。



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