着地点が見えなくなったモリ・カケ問題。昨年の総選挙で政府・与党による強引な幕引きが行われたが、新たな事実が出るたびに疑惑が再燃する状況だ。
真相究明を阻んできたのは、国や関係自治体の隠蔽姿勢。疑惑発覚当初、それぞれの役所が関連文書の「不存在」を理由に情報開示を拒否したことが、問題を長引かせた原因だろう。
とりわけ悪質なのは、加計学園の獣医学部を誘致した今治市。重要な関連資料を保有しながら頑なに情報公開を拒んでおり、国会の資料提出要請もはねつけている。今治市による隠蔽の実態とは……。
◆真相究明のカギを握る「今治市文書」
昨年から続く加計学園の獣医学部新設を巡る問題。前川喜平元文部事務次官の告発、文科省メール、愛媛県文書と次から次に安倍晋三首相の関与をうかがわせる証言・証拠が出てくる状況だが、疑惑の中心人物である首相はギブアップしそうにない。「(加計学園の問題に)関わっていない」「(加計孝太郎理事長から)獣医学部新設について聞いたことはない」「一点の曇りもない」――。首相の口から出るのは、何の根拠もない強弁ばかりだ。
誰もが首相の言葉に疑問符を抱く事態となっているが、ここに来て首相をはじめ政府・与党がもっとも恐れているのは、今治市が保有する公文書が明るみに出ることだ。評価額36億7500万円の約16.8ヘクタールにおよぶ広大な土地を学園に無償譲渡し、施設整備費として63億円という莫大な公金まで投入した同市は、加計学園にもっとも近い自治体。獣医学部が新設されるまでの過程では、頻繁に学園側と協議を重ねていたことが分かっている。加計疑惑解明のカギを握っているのは明らかに今治市。しかし、同市は加計学園関連資料の重要な部分を開示しようとしない。
下は、HUNTERが今治市への情報公開請求で、開示決定書に添付されてきた関連文書一覧表の一部だ。赤い囲みの中が、愛媛県、今治市、加計学園の関係者が内閣府と首相官邸を訪れ、国家戦略特区担当の藤原豊内閣府地方創生推進室次長(当時)や柳瀬唯夫総理秘書官(同)と面談した平成27年4月2日の出張関連文書である。
旅費支出など、どうでもいい文書は開示されるが、出張命令や復命書といったアンダーラインで示した肝心な文書は「非開示」。その後の内閣府や県庁に出張した時の復命書も「非開示」となっていた。開示対象文書は7,715枚と膨大だが、「非開示」の文書はカウントされていない。
◆国会の文書提出要請も拒否
問題となっている内閣府・官邸への出張があった平成27年4月2日から、国家戦略特区諮問会議で加計学園の獣医学部新設が事実上決まった28年11月9日までに、今治市が加計絡みで内閣府、加計学園、愛媛県とそれぞれ協議したとみられる折の記録は計40件。その時の復命書や協議記録について、相手ごとの件数と市が出した情報開示の方針をまとめた。
内閣府への出張は19回ともっとも多く、次が加計学園側との協議の13回。県との協議はわずか8回で、数字がそのまま今治市とそれぞれの機関、法人との関係性を示している。今治市が守ろうとしているのは、政府と加計学園なのである。だから、重要な記録は「非開示」。加計の獣医学部新設までの過程は、完全に隠蔽された形だ。
しかし、愛媛県は国会の要請に応えて、一部の文書を提出した。なぜ今治市だけが国会の要請を拒絶できるのか――?
(つづく)