政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
行政

福岡・高島市政で進む情報公開の形骸化

2017年8月25日 05:55

市役所.jpg 自衛隊の日報や森友・加計両学園の問題で注目されることになった「情報公開」の在り方。安倍政権が証明したように、“あるもの”を“ない”と言ったり、やたらと非開示扱いにする場合は、役所にとって都合の悪い事実が隠されている場合が多い。
 安倍首相のお気に入りといわれる高島宗一郎氏が市長を務める福岡市で、時の政権同様、情報公開の形骸化が進んでいる。
(写真は福岡市役所)

■デタラメな情報公開
 先月20日にある件で福岡市港湾局に情報公開請求したところ、送られてきたのは開示決定期限の延長通知。「対象公文書が多く、検索及び非公開情報の特定に時間を要するため」という理由が記されていた。

1-通知.jpg

 20日間もの延長の末、ようやく対象文書が開示されたのが22日。実施された文書開示は、不完全なものだった。まず、“あるべきものが、ない”。要求したのは、かつて公募で売却された市の所有地に関する全ての文書。当然公募に関する書類や、当時の登記簿、公図などがあるはずだが、市側が開示した文書の中には見当たらない。出てきたのは、公募から後の関連資料。公募に関する書類はなく、開示された登記簿は、市が昨年取得したものだった。

 理由を尋ねると、公募に関する書類はあるが、そこまで必要がないと判断したという。こちらは、現在の土地所有権者が企業であるため「○○が所有していた土地に関する全ての文書」という形で請求したのだが、市側は所有権が市から当該企業に移転された後の文書だけでいいと考えたのだという。何が必要か請求者に確認することもなく、文書を特定しているということだ。

 情報公開請求がかかった場合、請求の趣旨や必要な文書について、役所側が請求者に確認するのが普通。数年前まで、福岡市の各部局は誠実に対応していたものだ。開示までの流れが変化したのは、高島氏が市長に就任して数年経った頃から。所管課によっては、一方的に開示対象を決め、平気で不十分な情報開示を行うようになっている。今回の場合も、どの時期からの文書が必要なのか相談があればトラブルにならずに済んだはずなのに、面倒なのか市民をバカにしているのか、いい加減な情報公開でお茶を濁そうとしていた。

 土地登記簿の扱いについての対応も、完全に情報公開の趣旨を逸脱したものだった。古い登記簿や公図の存在を確認したところ、担当課長は「あるのか、ないのか分からない」と言う。さらに追及したところ「謄本の内容は同じですから」と言い出した。とんでもない役人だ。

 登記簿の内容が同じかどうかは、確認してみなければ分からない。過去の登記簿があるのなら当然開示すべきなのに、それを怠ったあげく「内容は同じ」などとデタラメなことを言う。お粗末過ぎる言い訳である。

 福岡市情報公開条例は市民の知る権利を守るために制定されたものであり、『市の保有する情報の一層の公開を図り、もって市政に関し市民に説明する市の責務が全うされるようにするとともに、市民の監視と参加の下にある公正で開かれた市政の推進に資することを目的とする』と定めている。役所が説明責任を果たすためには、保有する全ての文書を開示しなさいというのが条例の趣旨。市側の勝手な解釈で、保有する文書を間引いて開示するのでは、条例違反を咎められても仕方があるまい。結局、このあとも「あるはずのものが、ない」という事例がありながら、非開示対象の文書に記載がないことが判明。市側が「開示・非開示決定書」の作り直しをすることになった。

■後退する情報公開の姿勢
 条例形骸化の証拠はまだある。福岡県をはじめほとんどの自治体は情報開示の際に職員が立ち会い、請求者に求められればその場で文書の説明を行うのが一般的。福岡市も、数年前まではそうだった。しかし、ここ数年福岡市は、開示実施の際に所管課の職員が立ち会うことを止めており、市役所2階の情報公開室に、該当文書を投げ込むだけだ。その都度所管課の説明を求めなければ、開示の場に立ち会うことはない。市側には、真摯に説明責任を果たそうという意思が、はじめからない。不誠実な姿勢が、不完全な情報公開につながっているのは確か。高島市政下、理不尽な開示決定期限の延長、勝手な文書の間引き、酷いケースでは不都合な文書の隠蔽まで行うようになっている。

1-延長・非開示.jpg

 今回のケースでは、開示決定期限を延長する理由として「対象公文書が多い」ことを挙げてきた。しかし、開示されたのはわずか150枚程度の文書だ。土地を買った企業との協議記録や企業側提出資料が沢山あるというが、それらにはマスキング(黒塗り)したわけではなく、全部の書類が「非開示」。ばっさり「出さない」と決めており、時間がかかる作業ではなかった。こうしたケースが、いかに多いことか……。

■市長公約「徹底した情報公開」は反故
 高島市長は、初当選した平22年の市長選で経済や観光など10項目の選挙公約を発表。その中で「徹底した情報公開・情報発信」を謳い、市長就任後には「市長公約」として、次のような約束をしている。

2-20130619_h01-04-thumb-480x207-7416.jpg

 「徹底した情報公開」はどうなったのか?反故にしたのなら、市長には理由を説明する責任があるだろう。形骸化した情報公開では意味がない。



【関連記事】
ワンショット
 永田町にある議員会館の地下売店には、歴代首相の似顔絵が入...
過去のワンショットはこちら▼
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲