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「政策合意」の背景 三反園訓 背信の証明(下) 

2017年8月17日 09:05

1-鹿児島知事-2.png 昨年7月の鹿児島県知事で、新人の元テレビコメンテーター三反園訓氏が初当選を果たした。勝因は、反原発派の代表として立候補表明していた平良行雄氏との間で話し合いがまとまり、現職・伊藤祐一郎氏との選挙戦で候補者一本化を実現させたこと。平良氏が降りるにあたって担保となったのが、「政策合意」だった。
 しかし、知事に就任した三反園氏は反原発派との連絡を断ち、平良氏側からの面会要請も無視。原発容認の姿勢を強める中、先月26日の定例会見で人間性を疑われる発言を繰り返していた。「政策合意」はどうなったのか?

■だまされた反原発派
 三反園知事誕生の最大の功労者は、反伊藤陣営一本化のため、立候補を取りやめた平良行雄氏である。平成24年の鹿児島県知事選挙で、反原発派が担いだ候補の得票は約20万票。その後に行われた伊藤知事へのリコール(解職請求)で15万という署名が集まったことを考え合わせると、“反伊藤票”が、15~20万票あったことがわかる。評判を落としていたとはいえ現職・伊藤氏の壁は厚く、新人が2人出馬した場合は“反伊藤”の票が割れ、共倒れが確実視される状況だった。

 勝利の絶対条件は、候補者の一本化。支持者に押された三反園-平良両陣営は協議を重ねたが不調に終わり、一本化の話は破談に。再協議を持ちかけたのは、“川内原発の停止要請と反原発派を入れた検討委の設置”を提案した三反園陣営だった。再協議の場で三反園氏は、「廃炉」を前提に「政策合意」するとした上で、平良氏ら関係者に何度も「私を信じてもらいたい」と訴えたという。下が、その時に結ばれた「政策合意」。平良氏らが、三反園氏の言葉を信じた結果である。

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 知事選は、三反園氏の426,471票に対し伊藤氏342,239票。候補者一本化が奏功したことは疑う余地がない。「脱原発」を願う有権者の票がなければ、三反園県政は誕生していなかったのだ。しかし「政策合意」は、三反園氏自身が明言した「(検討委には)反原発の方々など幅広い人に入ってもらう」という約束が反故にされた時点で、事実上破棄されたも同然となっている。反原発派を排除した原発の検討組織は、まさにアリバイ作りのための装置だ。

 九電への原発停止要請は行われたものの、まさに形だけ。通常点検と同レベルの「特別点検」でお茶を濁し、「鹿児島県原子力安全・ 避難計画防災専門委員会」と名を変えた原発問題の検討委員会は、原子炉の安全性を検証しないまま、営業運転にお墨付きを与えている。その後、検討委の委員長が九電から2億円もの研究費をもらっていることが発覚。HUNTERの鹿児島県への情報公開請求で、専門委の人選理由が記録として残されていないことも分かっている。

■人間失格
 原発停止も検討組織の設置も格好だけ。「廃炉」については、昨日の配信記事でも明らかな通り、「政府も40年と言っている」を繰り返し、明確な姿勢を示していない。県民への背信行為は明らかだが、とくに政策合意を結んだ平良氏への冷遇ぶりは顕著。平良氏側の面会要請を黙殺し、電話やメールにも一切反応していない。先月26日の会見で、この点について聞かれた三反園氏は、記者団と次のようなやり取りを行っている。

 記者:1年前に三反園知事は、選挙前に反原発団体の方と政策合意を結んで、反原発の意思を持った有権者の票も取り込んで当選されたと、我々は認識しております。ですから、知事の脱原発の姿勢ということについて、これだけ何度も何度もこの場でも繰り返し質問しているかと思うのですが、そうした知事の脱原発の姿勢が、反原発団体の方達からは「我々とはもう姿勢が、そもそも異なった」という、非常に憤りの声も上がっているわけですが、そういった方達に対する説明責任が果たせていないと私は思いますが、知事はどうお考えでしょうか。
 三反園:反原発団体とおっしゃいましたが、記者さんも取材されてみてよくお分かりですよね。反原発団体の方々も、実はいろんな考え方の方がいらっしゃいます。今、私自身が進めていることに対して、さまざまな意見があることは私も承知はしております。本当しています。だからこそ、私自身はこういう記者会見の場で皆さま方に対しても、いろんな形で説明させていただいて、そして原発の広報誌、そして議会もそうですがさまざまな場で自分の考え方を述べさせていただいているところでもありまして、そういった中でご理解いただこうと思っております。

 記者:この結ばれた政策合意というのは、三反園知事と平良さんという両者が結ばれた合意文書であるわけですが、手元にこの文書がありますが、その平良さんご本人とこの1年間一度もお会いされることはありませんでした。でも、ご本人からは会いたいという意思があるということは、当然三反園知事も把握されているかと思いますが、その当人とお会いにならない理由というのを改めて教えてもらえますか。
 三反園:これはもう前からずっと言っているとおりでありまして、必要があればどなたとでもお会いしたいと思います

 記者:という、この質問になると毎回そのお言葉を繰り返して。
 三反園毎回同じ質問だから同じ答えをしているのです。

 記者:我々としては逃げられているような感じがするのですが、それはつまり会う必要が無いという考えだという裏返しになりますが。
 三反園:いや、私は必要があればどなたとでもお会いしたいと思っております

 記者:その一言で十分説明ができているとお考えですか。
 三反園:いや、私は、おっしゃるとおりですが、必要があればどなたとでもお会いしたいと思っております

 ここでもまた、同じ逃げ方。平良氏側と会おうともしない姿勢について問われ「必要があればどなたとでもお会いしたいと思っております」を繰り返している。「必要があればどなたとでもお会いする」と言いながら、面会どころか電話やメールにさえ対応しないというのだから「必要がない」ということ。政策合意の相手であり、三反園県政誕生にあたっての第一の功労者とも言える平良氏を「会う必要がない」と切って捨てた形だ。政治家である前に、人間として最低の証拠。利用価値のある相手には積極的に近づくが、用済みとなれば平気で縁を切るのが三反園訓という男なのである。「県民のための県政」は真っ赤な嘘。実態は、「三反園のための県政」と言うべきだろう。

 三反園知事は今年4月、母校「指宿高校」の創立記念講演会で、後輩の生徒たちにこう述べている。
 「言葉って大事なんです。すごく言葉が大事なんです。あの~、知ってるかどうか分かりませんが、『政治家にとって言葉は命』って知ってます?知らないですよね。知らないと思います。それぐらい、言葉っていうのは大事なんですよ。皆さんご存知の通り、言葉というのは人を勇気づけたり、人をやる気にさせたり、同時に人を傷つけたり、いろんなことがあります。だからこそ言葉というのは大事なんです。だから、その大事な言葉というのを、皆さん日頃から学んでいただければなと、こういうふうに思っています」

 おっしゃる通り、「政治家にとって言葉は命」。「信義を守る」のが政治家としてのあるべき姿なのだ。しかし、三反園氏の政治手法は真逆。平気で嘘をつき、都合の悪い質問には意味不明の文言を繰り返し、回答を拒否する。「廃炉」も「私を信じて下さい」も、その場限りの口から出まかせ。反原発派を平気で裏切り、後援会長をはじめ気に入らない支持者は平然と切って捨てた。三反園氏にとって「言葉」は、人を騙す「道具」に過ぎないのである。この男、『恥』という言葉を知っているのだろうか?



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