まさに、“お友達の、お友達による、お友達のための政治”である。
国政を揺るがしているのは、加計学園の加計孝太郎理事長、失態続きの稲田朋美防衛相、政治資金に関する疑惑の釈明で傷口を広げる形となっている下村博文元文科相、加計疑惑の中心人物である萩生田光一官房副長官といった首相のお友達ばかり。森友学園の籠池泰典氏にしても、元は安倍昭恵首相夫人のお友達だった。
国民不在の安倍政治を象徴する事態なのだが、この期に及んでも政権にしがみつかざるを得ない“お友達”の方々がいる。(写真は、首相のお友達・高島宗一郎福岡市長)
■政権擁護のパフォーマンス
先月26日、国家戦略特区諮問会議の民間有識者議員を務めている八田達夫アジア成長研究所所長や竹中平蔵東洋大教授らが、関係自治体の首長と、特区制度の推進を求める要望書を山本幸三地方創生担当相に提出。その後、そろって内閣府で記者会見した。
23日に告示された都議選直後のこの動きは、安倍政権擁護のためのパフォーマンス。特区の意義を強調することで、批判が集まる加計学園の獣医学部新設問題から国民の目を逸らそうという魂胆がミエミエだった。首長も有識者議員も、大切なのは自己保身。安倍政権が崩壊した場合、自分の立場が危うくなると思ってのことだろう。懸命に特区の必要性や選定の公平性を訴えたが、見え透いた政権擁護が共感を呼ぶはずはなく、逆に反発を買う形となっている。(下が、26日に開かれた記者会見。FNNネット動画の画面より)
特区担当大臣への要望書提出や記者会見をリードしたのは、全国の首長の中で安倍首相に最も近いとされる高島宗一郎福岡市長。ここ数年、戦略特区にご執心で、市民の暮らし向きのことには目もくれず「天神ビッグバン」だの「観光」だのにうつつを抜かしている御仁である。毎年正月には首相の地元にある神社に出向き、記念撮影に収まるのが恒例。昭恵夫人とも昵懇なのだという。
大臣への要請のみで会見には参加しなかった黒岩祐治神奈川県知事は、同県内を地盤とする菅義偉官房長官と極めて近い関係。高島氏も黒岩氏も、“官邸の最高レベル”とお友達という共通点がある。つまりは、お友達がお友達を庇うため、公金を使ってパフォーマンスを行ったということ。国政だけでなく、地方自治も私物化されていると言わざるを得ない。
■加計の獣医学部を推進した竹中、八田
民間の有識者議員にしても、まったく信用できない。諮問会議の議事録などから獣医学部の認定過程を確認してみると、あららさまに加計学園の計画を推したのがワーキンググループの座長でもあった八田氏。それを竹中氏が援護射撃するいう展開だった。両人とも、政治権力と結びつくことで名を成してきた学者。安倍政権が選んだ彼らが、総理の“腹心の友”を粗略に扱うはずがない。加計の獣医学部新設について、「一点の曇りもない」としてきた有識者議員たちだが、選定過程は不透明。曇りがないどころか、真っ黒で見えないというのが加計学園疑惑なのである。
■誰も信じぬお友達の主張
そもそも、加計学園疑惑と戦略特区の是非は別問題。「特区がけしからん」という国民は少ないだろう。岩盤規制は確実に存在するし、そこに穴をあけるのは結構なことだ。ただし、獣医学部新設が認められてこなかったのは、獣医師が不足する状況ではない上に、大学で獣医学を教える人材が少ないという理由があってのこと。決して岩盤規制なのではなかったというのが本当のところである。
戦略特区は、一部の規制を外すことで、全国にその効果が波及することを目的とする制度。加計学園だけが利を得る計画が、特区の目的に合致しているとは思えない。高島市長や有識者議員らの主張は、「特区制度を推進するため、加計学園問題を早く終わらせろ」という趣旨。自分たちの主義・主張のためなら、犯罪行為に目をつぶれと言っているに等しい。
首相のお友達から、特区推進の要請を受けた山本幸三大臣も、アベノミクスの仕掛け人と言われる首相側近だ。時の宰相が、お友達のために国政をゆがめたあげく、それをまた首相のお友達が庇うという見苦しい構図である。安倍くんグループの言い訳など、信じる国民は少ないはずだが……。