一連の文科省文書が怪文書でなくなったいま、検証すべきは、文書の記述内容と現実に加計学園の獣医学部新設が決まるまでの過程がいかに符合するかという点。文部官僚がヤンキーあがりの副大臣に守秘義務違反で脅され、表立って証言ができない以上、真相究明は国会や報道に課せられた義務である。
前稿で指摘した通り、“加計学園の獣医学部新設”を決定付けたのは昨年11月9日に開かれた国家戦略特別区域諮問会議で配られた1枚の文書。この「資料3」として用意されていた「国家戦略特区における追加の規制改革事項について(案)」の記述を巡り、加計学園の身内ともいえる萩生田光一官房副長官の暗躍があったことを文科省文書が暴いている。
(写真は、萩生田氏の公式サイトより)
■諮問会議決定、3カ所加筆で加計学園に限定
昨年11月9日の諮問会議。まともな議論を経ぬまま、事務方が用意した「国家戦略特区における追加の規制改革事項について(案)」が、『意義なし』の唱和によって決定事項となっていた。“加計学園の獣医学部新設”を決めたのが、同文書に記された次の一文である。
○ 先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など、新たなニーズに対応する獣医学部の設置
・ 人獣共通感染症を始め、家畜・食料等を通じた感染症の発生が国際的に拡大する中、創薬プロセスにおける多様な実験動物を用いた先端ライフサイエンス研究の推進や、地域での感染症に係る水際対策など、獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要に対応するため、現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う。
『広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域』というのは四国。ここに『限る』となれば、該当するのは加計学園の獣医学部新設を特区申請した愛媛県今治市だけ。この時点で、同じく獣医学部新設を申請していた京都産業大学は、周辺地域に獣医師養成機関があるため失格ということになる。つまり、『広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域』という文言を入れたこと自体が、加計への便宜供与。公表された文科省文書は、この文言が入ることになった経緯を示すものだった。
■加筆指示は萩生田氏
下の2枚は、政府が存在を認めた文科省文書。上が問題の一文の原案で、下はその修正案だ。手書きで加えられた『広域的に』『存在し』『限り』がどのような意味を持つのか、もうお分かりだろう。この三つのワードを加筆した人間に、「何がなんでも加計に獣医学部新設を」という意思があったことは明白だ。
文科省文書のうちのメールの記述(下のメール参照)には、はっきりと加筆を指示した人間の名前が記されていた。原案に手書きの文言を入れるよう指示したのは、萩生田官房副長官。指示が事実なら、萩生田氏こそ加計の獣医学部新設を実現させた立役者ということになる。
■写真は語る
萩生田氏の立ち位置を示す写真が存在する。2013年5月、萩生田氏は自身のブログに次のように記し、数葉の写真を添付していた。
≪GW最終日は青空のもと安倍総理とゴルフをご一緒させていただきました。きっと外遊の疲れがあったので、一年ぶりにクラブを握った私に・・・(笑)スコアは国家機密です。前日は夕方から河口湖の別荘にてBBQ。国民栄誉賞授与式から戻ったばかりの総理から長嶋・松井のサイン入りユニフォームと、審判としての現場のホットな話を聞き、盛り上がりました。背番号96は96条ではなく第96代内閣総理大臣の意味です。
寒い中取材待ちで外にいた番記者さん達もインタビュー無しを条件に中に招き、〆は総理自慢のスパイスやきそばを自ら振る舞っていただきました。≫
添付された写真の中の一枚がこれ。左端が安倍首相、右端でビールを片手にポーズしているのが萩生田氏。そして真ん中に立つ人物こそが、首相の“腹心の友”加計学園の加計孝太郎理事長である。場所は首相の別荘。萩生田氏が自慢げに添付した写真が、3人の親密な関係を物語っている。
首相、首相の親友、首相の側近――。獣医学部新設の裏に、この3人による共謀があったと見るのが自然だろう。