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加計疑惑の政権を擁護 福岡市長の認識不足

2017年6月16日 08:50

1-高島.png 安部政権が、議会制民主主義を無視した強行採決で、共謀罪法案の成立を図った。国会を閉じ、加計学園の獣医学部新設を巡る疑惑にフタをするためだ。幕引きを急ぐ政府だが、最高権力者の友人に便宜供与が行われた疑いが強く、国民が抱いた疑念は晴れそうもない。
 内閣支持率の急落に焦る政府・与党。権力にすり寄り、うまみを享受している方々にとっても他人ごとではなく、元霞が関官僚で大学教授の岸博幸氏や高橋洋一氏などは、そろって政権擁護の論陣を張り、前川喜平前文科事務次官を徹底攻撃する始末だ。
 そうした中、首相にもっとも近い首長と言われる高島宗一郎福岡市長が的外れな主張をブログに掲載、国民ではなく権力に寄り添う姿勢を露わにしていた。

■ブログで政権擁護
 高島市長は今月6日、自身の公式ブログで、「福岡市はまさに国家戦略特区の当事者ですので一言」と題して、事実上の政権擁護を行っていた。ブログで高島氏は、国家戦略特区の制度を活用して実現した自らの施策を自慢。≪前例や慣習を重んじる文化の役人≫を批判し、≪岩盤と化している規制に「政治主導でスピード感を持って」穴を開け、その成果を速やかに全国に広げていくという国家戦略特区の意義はとても大きい≫と記している。下が、ブログの記述の全文だ。

福岡市はまさに国家戦略特区の当事者ですので一言。
ものすごいスピードで技術が進化し、社会のニーズが変わる中で、現状にそぐわない規制が多数存在しています。
そうした中、これまで地方自治体が各省庁に直接要望しても全く相手にされていなかった規制緩和が、国家戦略特区に指定されてからは「立場の弱い地方」に変わって「国のトップダウン」で主導して頂けるようになり、次々に実現できるようになりました。
例えば福岡市の場合、博多駅近くは土地を探すのが困難で30年以上も新設の保育所がありませんでしたが、特区で公園内に保育所を設置することが可能となり、この春から子ども達の声が響いています。またスタートアップに力を入れている福岡市では、海外の優れた起業家が日本で創業をしやすくする「スタートアップビザ」や創業初期の企業を税制面から支援する「スタートアップ法人減税」などをパッケージ化して100社以上が新しく起業しました。また、これまで決して破れなかった航空法の高さ規制の緩和を勝ち取り、税金ではなく規制緩和で民間にメリットを作ることでこの10年間で30棟ものビルを生まれ変わらせる「天神ビッグバン」プロジェクトが動き出しました。
前例や慣習を重んじる文化の役人にとって、これまで正しいものとして運用していた法規制を変えていくことは自己否定するようなもので、これを自治体が単独で規制緩和を要望しても簡単に通るものではありません。また規制に守られて市場に新しいライバルを入れたくない存在いわゆる既得権が、岩盤をより強固にしています。
だからこそ時代に合わなくなった規制や、岩盤と化している規制に「政治主導でスピード感を持って」穴を開け、その成果を速やかに全国に広げていくという国家戦略特区の意義はとても大きいと思うのです。
駒崎さんの記事をシェアします。駒崎さんは子ども施策を前に進めるために特区を活用してどんどん規制を突破しています。どうぞご覧ください。

■認識不足を露呈
 結論から述べると、このブログの記事はただの自慢話。公園内の保育所、スタートアップビザ、天神ビッグバンといった自分が進めてきた施策を誇っただけで、政権擁護にはなっていない。国家戦略特区の有用性を強調し、窮地に立つ政権を援護射撃したかったのだろうが、なにせ認識不足。市民の共感を得られる可能性は低い。≪「政治主導でスピード感を持って」(岩盤規制に)穴を開け、その成果を速やかに全国に広げていくという国家戦略特区の意義はとても大きい≫――。たしかにそうだが、高島氏は二つの点で間違いを犯している。

 まず、国が認めて来なかった事案を、なんでもかんでも「岩盤規制」と思い込んでいる点だ。例えば、いま問題になっている獣医学部新設に関する国の規制方針が、本当に岩盤規制なのかどうか。一番肝心なところなのだが、市長はこの点について何も考察していない。本当の岩盤規制を崩すのは大いに結構。しかし、分野ごとの秩序維持が必要なのも事実で、獣医師の数を抑制することは、まさにそうした一例なのである。ペットは減る傾向、家畜も減る一方という現状において、これ以上獣医師を増やす必要はあるまい。獣医師の質を維持する上でも、過剰な学部創設はむしろ害にしかならないことを、市長は知るべきである。

 次に、加計学園が獣医学部を新設しても≪成果を速やかに全国に広げていく≫という特区の理念にはつながらないのだが、高島氏にはそこが理解できていない。土地代と補助金、合わせて100億円以上の利益を得た加計学園にとっては結構な話。しかし、獣医師が増えることで全国に恩恵をもたらすかというと、そうとは言い切れない。地域によって不足しているのは「公務員獣医師」。公務員として働く医師や歯科医師に比べ、極端に給料が安いからだ。つまり、本当の岩盤規制は獣医師の身分を高めようとしない現在の役所の体制。獣医学部ができたとしても、根本的な解決にはならないのである。

 そもそも、国民が抱いているのは加計学園の獣医学部新設が決まるまでの“過程”に対する疑念。そこで首相のお友達に便宜供与が行われたのではないかという疑いがあるだけで、国家戦力特区そのものに疑問が持たれているわけではない。高島氏は、加計学園問題の本質を理解せぬまま、安倍首相の気持ちを“忖度”し、特区の必要性を強調したということだろう。政権擁護を狙ったつもりが、自らの不勉強をさらけ出した格好。市民感覚からすれば、ズレていると言うしかない。論理的な話が苦手なのか、最後は駒崎弘樹氏のブログに助けを求めている。

 駒崎氏は、病児保育の専門家。新しい発想で、保育を中心に様々な分野で活躍している人物だ。同氏の公式サイトによれば、内閣府政策調査員、内閣府「新しい公共」専門調査会推進委員、内閣官房「社会保障改革に関する集中検討会議」委員などを歴任しているのだという。内閣府は、言わずと知れた加計疑惑の震源地。同氏のブログ記事を一読してみたが、上手に政権を擁護する主張だった。

 重ねて述べるが、国家戦略特区が「悪い」ということではない。問われているのは、国の最高権力者とその友人の関係が、国政を歪めたのか否かの一点。それが加計学園問題の本質である。便宜供与の裏に金品のやり取りがあれば、贈収賄事件。疑惑が疑獄になれば、安倍べったりの首長にも厳しい視線が注がれることになる。



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