国家戦略特区を利用した加計学園の獣医学部新設計画をめぐり、前川喜平前文部科学事務次官が25日、「総理のご意向」などと記した一連の文書が同省内部で作成・共有された文書だったことを証言。永田町に衝撃が走った。
前川氏の人格を攻撃することで問題の打ち消しに躍起となっている政権側だが、同氏の証言は詳細を極めており一連の文書が実在することは明らか。なにより、安倍総理自身が議長として参加した「国家戦略特別区域諮問会議」の議事録に、前川証言を裏付ける“加計ありき”の証拠が残されていた。
■符合する諮問会議の動き
前川氏の証言によれば、内閣府側から文科省への“圧力”が強まったのは、「昨年の9月から10月」。問題の文書は、この時期に文科省高等教育局の専門教育課が作成したものだという。同氏は、「官邸の最高レベルが言っている」と記された文書は昨年9月28日、「総理のご意向」が出てくる内閣府の見解を示す文書は昨年10月17日と、受け取りの正確な日付も明らかにしている。確かに、加計学園の獣医学部新設計画は、10月から急速に現実味を増していく。
今年5月までに30回開かれている「国家戦略特別区域諮問会議」のうち、加計絡みで問題となるのは昨年10月4日の第24回と11月9日の第25回。10月4日の会議では、まず国家戦略特区諮問会議有識者議員でワーキンググループの座長を務めた八田達夫アジア成長研究所所長が次のように発言し、あからさまに加計学園の獣医学部新設計画をプッシュしていた。(以下、赤いアンダーラインと矢印はHUNTER編集部)
これに続いたのが、小泉内閣で経済財政政策担当大臣や総務大臣などを歴任したを歴任した有識者議員の竹中平蔵東洋大教授。獣医学部新設の必要性を説いていた。
八田、竹中両人の発言を引き取る形で飛び出したのが、安倍総理の次の発言。これが、事実上の「指示」である。
「総理の指示」を明確にしたのが、11月9日の会議における山本幸三特区担当大臣の次の発言だ。
山本大臣は、前回会議で具体例がなかったはずの安倍の発言を「指示」と断定。直ちに実現へ向けての措置を行うものとして「先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など、新たなニーズに対応する獣医学部の設置」だと明言していた。先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策は、加計学園の計画内容。特区認定で権限を有する関係者たちが、そろって加計の獣医学部新設を後押しした格好だ。注目したのは、山本発言に出てくる「資料3」である(下の文書が「資料3」)。
■加計を推した竹中平蔵氏らの提言
前回会議からわずか1か月。追加の規制改革事項として、いつのまにか獣医学部新設が正式決定し、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする」という条件まで付けていた。それまでの諮問会議やワーキングチームでの議論には無かった話が、唐突に出てきた形。怪しい「資料3」のアリバイに使ったのは、諮問会議に参加している有識者議員4人の連名による次の文書だった。
有識者議員による提言の形式をとっているが、いかにも性急。議論を省いて「具体的プロジェクトとして、実際の獣医学部の立ち上げを急ぐ必要があり」と結論付けていた。加計の獣医学部新設が仕組まれたのは確かだが、急いだあまり、一気に最終的な着地点を示すところまで行っている。「関係告示の改正」という一語だ。
加計の獣医学部新設で、最大の壁となっていたのが文科省の告示。同省が平成15年に告示した「大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準」第1条第4号には、大学の新設等に関する認可基準について「歯科医師、獣医師及び船舶職員の養成に係る大学等の設置若しくは収容定員増又は医師の養成に係る大学等の設置でないこと」と規定しており、獣医師養成のための学校・学部の新設は認められていなかった。諮問会議の有識者議員4人が、規制解除の対象としたのがこの告示。獣医師学会や関係官庁との協議抜きで、「改正しろ」と提言したのである。乱暴な事の進め方は、総理の意に沿うため。なりふり構わず加計学園の獣医学部新設を認める方向に持って行った証拠だ。そのためだろう、昨年11月9日の諮問会議では、焦った八田氏が不可解な発言を行っていた。
(つづく)