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忖度・ご意向の背景

2017年5月22日 09:45

 10億円以上する公有地を“ただ同然”の価格で購入した森友学園と、38億円あまりの土地を“ただ”でもらった加計学園。支給が決まった補助金の額を含め便宜供与の大きさはかなり違っているが、いずれも役所の協力がなければできない話であることは言うまでもない
 民間には冷徹な役所が大盤振る舞いに及んだのは、森友や加計の背後に、絶対に逆らえない「権力」の存在があったからに他ならない。この国の絶対権力者は「内閣総理大臣」。「ご意向」や「忖度」の前提に、総理やその周辺の指示があったのは確かだろう。

■獣医学会の現状
 加計学園が得たのは評価額37億7,500万円の土地と96億円もの補助金。国家戦略特区は安倍政権の看板政策であり、決定事項に総理のご意向が影響したとすれば、歪んだ国策を税金で賄った形となる。無駄な投資なら、安倍政権のやったことは背任行為に等しい。

 そもそも、国も学会も反対していた獣医学部新設が、「国家戦略特区」で規制を外してまで実現させるべき課題だったとは思えない。日本獣医師会の幹部によれば、国内の獣医師数は十分に足りている状態。質の低下を招く獣医師増員には学会も獣医師会も反対で、50年来、文部科学省も学部新設を認めて来なかったのだという。安倍政権が無理やり決めた獣医学部新設だが、特区利用の根拠は乏しい。

 特区申請にあたって獣医学部を誘致した愛媛県今治市や加計学園側が強調したのは、「公務員獣医師」の増員。たしかに、公務員獣医師のなり手は少なく、特に四国地区で少ないのが現状だが、これについては原因がハッキリ分かっている。

 同じ公務員でも獣医師のランクは医師や歯科医師の下。給与も安く、そのため希望者が少ない。待遇が悪い公務員獣医師より、民間で動物病院を開いた方が儲かるに決まっている。ならば、公務員獣医師の待遇改善が先であって、安易な獣医学部新設はかえって獣医師界の首を絞めることになるだろう。

■「岩盤規制」の嘘
 政府は、加計学園の獣医学部新設を認めたことを「岩盤規制に穴をあけた」と自賛している。だが、獣医学部の設置が認められなかったのは官も民も「必要がない」と認めていたからであって、決して「岩盤規制」ではない。役所の無駄な規制は、役人か特定勢力の既得権益につながっているものだが、こと獣医学部新設問題に関しては、規制によって文科省や獣医師会が特別な利益を得るわけではない。むしろ、特区による獣医学部新設で利益を得るのは加計学園だけというのが実情。学部を新設して学生を集めたからといって、四国の獣医師が増えるという保証もない。

 獣医学部の新設には、さらに大きな問題がある。じつは、獣医学会には「教授」が少なく、教える側の体制が整っていないというのが現状。独立した「学部」があるのは北海道大学、麻布大学など数えるほどで、大半が「学科」となっている。事実、加計学園の獣医学部に集められる教授陣は、かなり年配の先生方になると見込まれており、先行きを不安視する関係者は少ないないという。文科省が規制するには、それなりの理由があったということだ。

 無理が通れば道理が引っ込む。国家戦略特別区域諮問会議(議長:安倍首相)や同会議ワーキングチームの議論も乱暴。特区を利用して獣医学部新設を目指していたのは加計学園と京都産業大学だったが、両者が提出した資料をみれば、京産大の提案が優れていたのは明らかだ。京産大の説明資料は、京都大学iPS細胞研究所との連携などを柱とする20ページに及ぶもの。一方、加計学園の説明資料はわずか3ページで、国際レベルの獣医師養成、ライフサイエンスへの貢献、感染症対策など大まかな内容が並んでいるだけの陳腐なものだった。

 無理が通ったのは、最高権力者もしくはその周辺の指示があったればこそ。そうでなければ、「ご意向」や「忖度」が一人歩きするはずがない。



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