「政治とカネ」の問題で知事を辞任することになった舛添要一氏。発端となったのが、税金を使った高額な海外出張だったことは周知のとおりだ。搭乗していた航空機の座席はファーストクラス。庶民感覚を売りにしてきた同氏の言行不一致が、自らの首を絞めた格好となった。
“税金でファーストクラス”はどう見ても無駄遣い。それが分からぬ感覚の鈍さは如何ともしがたいが、同じようなことをやっている首長は舛添氏だけではない。九州最大の都市、福岡の高島宗一郎市長(右の写真)もその一人である。
福岡市長、ご乱行の数々
税金の重みが自覚できていれば、少しでも経費を削減しようとするのがまともな政治家。舛添氏には、そうした意識が完全に欠如していた。“何が悪いんだ”とばかりに開き直り、都の職員に責任を押し付けたことで傷口を広げたのは確かだ。エコノミ―クラスやビジネスホテルの利用を当然とする首長がいれば、褒められこそすれ、バカにされることなどあるまい。だが、現実には真逆の行動をとる首長の方が多い。
HUNTERは、福岡市長が出張でファーストクラス(ANAはプレミアムクラス)、ビジネスクラスを利用したケースの旅行命令書を入手。文書の保存期間内とされる平成24年から現在までの状況を一覧表にまとめた。
表中、色付けしたのがファーストクラスまたはプレミアムクラス利用の出張。26年10月まで、東京の行き帰りはファーストクラスかプレミアムクラスだった。じつはこれ以前の市長の東京出張も、ほとんどがファーストクラスまたはプレミアムクラス利用だったことが明らかになっている。
上の表は、高島氏の東京出張問題を追及した一昨年の特集記事の中で、平成22年度から26年度までの旅行実態をまとめたもの。市長は就任直後からずっとファーストクラスまたはプレミアムクラスで、スケジュール変更で同クラスの座席が取れなかった場合だけエコノミークラスを利用していた。わずか2時間弱のフライトに、この贅沢。愚行はこれにとどまらず、都内での移動にハイヤーを使って1回1万円~約7万円を費消。宿泊は、ホテルオークラかニューオータニというのが常態化していた。無用に見栄を張るところは、舛添氏と何ら変わらない。
表のなかで色分けしたのは、片道分の旅費を市長自身が負担する形で延泊したケース。平成25年1月以降の東京出張は38回。そのうち23回は私的に東京の夜を満喫していたと見られている。公私混同ぶりも、舛添氏とまったく同じだ。
HUNTERは、平成26年夏に市長の東京出張について問題提起。市議会でも追及された高島氏は、ファーストクラスまたはプレミアムクラス利用を警備上の理由と逃げを打ち、私的な延泊を「市政のキーマンと会っていた」などとごまかしていた。批判されても謝らず、姑息な言い訳で逃げ切ろうとする姿勢はまさにマスゾエ。私的な東京泊で誰と会っていたのか聞かれ答えなかったことも、家族旅行の実態を明かそうとしなかった辞職知事の姿と重なる。
ファーストクラスの利用や私的な延泊が無くなったのは、HUNTERが一連の出張問題を報じ、市議会で厳しい追及を受けたあと。数か月後に迫っていた市長選を意識した結果でもあろう。この姿勢もまた、舛添氏と酷似している。
東京と違うのは、福岡市役所の記者クラブがダンマリを決め込むこと。市長の方針で、市が加盟各社に多額の広告費を出すようになっており、高島批判は鳴りを潜めている。