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まやかしの「税収増170億円」 福岡市長自慢話の実態

2016年4月 6日 08:25

福岡市役所 高島宗一郎福岡市長が最近よく口にするのは、人口と市税収入が増えたという話。国勢調査の速報値で、福岡市の人口が153万8,510人となり、神戸市を抜いて政令指定都市で5位に。市税収入は、1期4年間で170億円増えたのだという。あたかも、自分の施策があたって人口や税収が増えたかのような言い草なのだが、じつはこの主張、何も知らない市民をペテンにかけたに等しい。
 福岡市における税収の推移と、国や他の自治体のそれを比較したところ、市税収入の増加が福岡市に限った話ではなく、自慢するほどの伸び率でもないことが明らかになった。
(写真は福岡市役所)

税収増170億、自慢する市長だが……
高島市長 そもそも、阪神・淡路大震災で受けた痛手を引きずる神戸市と、人口や税収で張り合うこと自体が無意味。人口が神戸市を抜いたといっても、わずかに650人上回っただけ。自慢できる話ではあるまい。

 それでは、税収についての主張はどうか――。最近開かれた市長の政治資金パーティーの案内状には、「市税収入も1期目4年間で約170億円増加し、その伸び率は6.3%と政令指定都市の中で第1位へと大きく躍進しました」と、市長本人が明記している。(下が市長の挨拶文。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

高島市長挨拶文

 数字に間違いはないのか?本当に市長の功績なのか?確認のため、福岡市の税収について改めて調べてみた。下は、平成19年度から26年度までの福岡市の税収の推移。平成20年に一度ピークに達し、この年9月に起きたリーマンショックの影響で翌年度に下降。高島氏が市長に就任した22年度から上昇に転じ、26年度は約2,820億円という税収を記録していた。

福岡市税収の推移Ⅰ

 高島氏が言う「4年間で170億円の増収」とは、22年度の2,653億9,410万5,000円から、26年度の2,821億3,598万4,000円へと「167億4,100万円」増加したことを指す。3億円近い下駄をはかせた話というわけだ。しかも、リーマンショックが起きた平成20年度と比較すれば、94億9,010万円しか増えていない。実態としては、景気の良かった頃の税収に戻り、プラスアルファが生まれた程度。人口が7万人以上も増えた上に国内経済が回復しているのだから、当然と言っても過言ではない結果だろう。高島市政だから、増えたというわけではない。それは、他の自治体と比較すればすぐ分かる。

伸び率を比較したところ……
 税目ごとの検証は別稿に譲るとして、税収全体のアップ・ダウンを分かり易くするため、年度ごとの数字をグラフ化してみた。

福岡市の税収の推移Ⅱ

 次に、「福岡県」の同時期における税収の推移が下のグラフ。平成22年度(4,813億円)から26年度(5,458億円)にかけて645億円の税収増。じつに13.4%の伸びである。高島氏自身が主張しているように、福岡市の伸び率は6.3%。政令指定都市の中では第1位なのだが、県との比較では半分にも満たない伸び率だ。

福岡県の税収の推移

 福岡市のお隣に位置する春日市はどうか。人口11万人、自治体としての規模も経済環境も福岡市に及ばない同市の税収の推移が下のグラフだ。

春日市の税収の推移

 平成22年度の116億円から26年度の126億円へと10億円の税収増。伸び率は8.6%で、福岡市の6.3%を上回っている。高島市政のような派手なパーフォーマンス型施策を用いることなく、着実に税収を伸ばした格好だ。

 『1期目4年間で市税収入が約170億円増加し、その伸び率は6.3%と政令指定都市の中で第一位』という高島氏の自慢話は、嘘ではないが身近な例を無視したもの。識者が聞けば笑いしか出てこないような主張を、得意になって市民に吹聴しているだけのことなのだ。ちなみに、国の税収の推移はこうなる。

国の税収の推移

 22年の41.5兆円から26年の54.5兆円に31%の伸び。平成26年4月から消費税が8%になったため単純に比較することはできないが、グラフの動きは福岡市や福岡県、春日市などとほぼ同じ。高島氏の1期目の期間、国はもちろん一定規模の自治体なら、よほどの失政か特別な事情がない限り「税収増」が当たり前だったのである。

税収増の裏で箱モノに620億円
 市長が税収増を声高に叫ぶ理由は、無駄な公共事業への巨額投資を隠すため。福岡市は今後、次にまとめた表にある通り、箱モノ建設に620億円を投じる予定となっている。

事業費表

 何でも1番でなければ気が済まないといわれる高島氏。まやかしのテクニックは、歴代市長の中でダントツ「1位」である。



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