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「ユニバーサル都市・福岡」の実態
― 「みんなにやさしい」を否定する新中央児童会館の造り ―

2016年4月28日 09:30

福岡市立中央児童会館1 福岡市が、市政の柱の一つとして推進してきたのが「ユニバーサル都市・福岡」の実現。市は、“ユニバーサルデザインの理念に基づいた、誰もが思いやりを持ち、すべての人にやさしいまち”を目指すとしており、高島宗一郎市長も事あるごとにユニバーサルデザインの重要性について語ってきた。ユニバーサルデザインとは、バリアフリーのもう一段上を行く概念。すべての人にとって使いやすいように工夫された製品・施設・情報などのデザイン(設計)のことだ。
 市長の発案で整備された施設なら、当然その思想が生かされているはず。ところが、最近オープンした子育て支援施設を見学して、『みんながやさしい、みんなにやさしい』というユニバーサル都市・福岡の理念が、肝心なところで否定されていることが分かった。

新中央児童会館、どう見ても「SONY」のビル
福岡市立中央児童会館2.jpg 問題の子育て支援施設とは「福岡市立中央児童会館 あいくる」。4月1日にオープンした複合施設『西鉄 天神CLASS』の6階~8階(屋上)部分に入居しており、乳幼児から高校生までを対象に、遊びや交流の場を提供する新形態の施設だ。

 PPP(官民協働事業)の手法の一つである定期借地・賃借入居方式により、西鉄を事業者に進められてきた「中央児童会館等建替え整備事業」によって建設されたのが天神CLASS。旧中央児童会館と認可保育所「中央保育園」の建物を解体して、現在のビルに生まれ変わった。

 1~2階に「ソニーストア 福岡天神」、3階にモノづくり体験施設、4階に「福岡市 NPO・ボランティア交流センター あすみん」、そして5~8階(屋上)が「あいくる」だ。ただし、建物自体はどう見ても「SONY」のビル。他に看板はなく、ビルの入口に立つまで、市民が児童会館の存在に気付くことはないだろう。

ベビーカーが上がれない屋上広場
 「あすみん」は、5階が子どもプラザ、一時預かり室、児童体育館、ベビーカー置場。6階には、年代に関係なく利用できる交流スペースや図書スぺ―ス、パソコンスペースが配置されており、7階がダンスや演劇、音楽(バンド演奏も可)の練習などが可能な多目的ルームなどだ。

 問題は、その上の階となる「屋上広場」への移動方法と、広場そのものの造りにある。屋上では、一輪車や三輪車(幼児用)、ローラースケートなどで遊ぶことができる他、人工の緑地帯があり、憩いの場としての利用が謳われている。しかし、ベビーカーを押した状態では、屋上広場に行くことができないのだ。

 下の写真は、施設内に掲示してある案内と屋上に続く階段。エレベーターは7階まで。屋上に出るには写真の階段を使うしかなく、お母さんひとりでベビーカーを押して上がるのはまず困難だ。

福岡市立中央児童会館3

屋上

 西鉄の設計思想に問題があったとしか思えないが、エレベーターが7階までしかない言い訳は考えていたらしく、あすみんの職員によれば「小さいお子さんが一人で屋上に行くと危険ですから」。だが、エレベーターがあっても赤ちゃんが一人で利用するはずはないし、小さい子といえども階段は上ることができ、理屈になっていない。屋上の利用について、事業者側が深く考えていなかったと見るのが自然だろう。「ユニバーサルデザイン」は見事に否定されており、屋上に出てみれば、そのことがよりハッキリする。 

屋上広場

 上の写真、中央の奥にあるのは7階から階段を上がって屋上広場に出るドア。そこから広場までに、またも2段下りなければならない。「すべての人にやさしい」はずのユニバーサル都市・福岡がやることとは思えない。さらに、ユニバーサルデザインとは程遠い設計思想がうかがえるのが下の写真である。

屋上広場2.jpg

 一番奥に緑地帯、木製デッキの上が「憩いの場」なのだろうが、そこに行くにも2段上る必要がある。これのどこがユニバーサルデザインなのか?

事業の背景が否定する「みんなにやさしい」
 天神CLASSのオープンには高島市長も参加。テープカットの後、挨拶の中でこのビルを絶賛した。屋上にも上がったはずで、問題点に気付かなかったとすれば、かなり無神経・無責任と言うしかない。この複合施設建設を強行したのは、他ならぬ高島氏だったからだ。

 平成23年、高島市長は、旧中央児童会館と中央保育園の現地建替え方針を撤回。新たな建物に「商業施設」を入れるよう指示したことで、中央保育園の移転が決まった。保育園の移転先はラブホテル街の中。保護者会の猛反発する中、HUNTERの取材で市が福岡市内の不動産業者から、不自然な形で9億円もの移転用地を購入していたことが判明。その後、社会問題化し、市監査委員から「事業の不透明さが拭えない」とする異例の指摘が出されている。

 商業ビル建設を指示する際、市長は「ふたつ(中央児童会館と中央保育園)とも出してしまえ!」と言い放ったとされ(複数の元市幹部が証言)、子育て支援とはまったく無縁の、企業との癒着さえうかがわせる市政の実態が明らかになっている。出発点で、すでに「みんなにやさしい」という理念は失われていたのである。



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