地震の震源は人工島(アイランドシティ=福岡市東区)――多くの市民はギョッとするだろうが、これは事実だ。
3月5日に福岡市周辺を揺らした地震の震源が、人工島直下だったことが気象庁の公表データから明らかとなった。防災対策に責任を持っているはずの福岡市(高島宗一郎市長)は、震源が人工島の真下だったことをHUNTERの指摘があるまで把握していなかった。
3月と言えば、5年前の11日には東日本大震災が、11年前の20日には福岡西方沖地震が発生した月。防災への意識に欠ける高島市政の実情が、浮き彫りになった形だ。
(右の図、×は気象庁の資料で示された震源)
震源は「北西沖」と報じられたが……
地震が発生したのは、今月5日の午後8時すぎ。震度は1~3で、大きな被害こそ出なかったものの、身体に感じる揺れは久々のことだった。気象庁の発表として新聞やテレビが報じたところによれば、震源地は福岡県北西沖。震源の深さは約13キロで、地震の規模を示すマグニチュードは3.6とされていた。
「福岡県北西沖」とあるが、詳しくはどの地点か――気象庁の公表資料で、震源地を確認したところ、次のように特定されていた。
資料には、「震度分布図」と各地の震度が掲載されており、その分布図には震源地点が×印で示されている。下、左が市のホームページから引用した該当地点の地図、右が気象庁の分布図だ。
気象庁の分布図にはないが、市の地図には「人工島」がある(ピンクの丸い囲みはHUNTER編集部)。気象庁が示した×印の場所は、まさに人工島付近であることが分かる。ここで、さらに震源を詳しく見るため、気象庁のデータに明記された緯度と経度=「33°40.3′N 130°25.0′E」を、ネット上の緯度・経度検索システムで確認してみた。出てきた答えを、人工島の事業計画図にあてはめたのが下の結果である(画面クリックで拡大可)。
震源(図では震央)は、建設が予定されている「市総合体育館」の真下。そこから歩いて数分の位置には、平成26年11月に市内中央区から移転した「福岡市立こども病院」があり、西側は照葉小中学校や住宅街があるゾーンとなっている。
震源は人工島直下―知らなかった福岡市
震源が人工島直下だったことを、福岡市は知っていたのか?23日夕、防災対策を所管する市防災・危機管理課に話を聞いた。まず震源について聞いたが、無責任にも、市が発信している防災メールや気象庁のホームページで確認が可能だと言う。詳細が答えられない様子で、折り返しの連絡をもらうことになった。
しばらくしての回答は「西方沖」。やむなく震源が人工島直下であることを告げたが、職員は実情を知らなかった。緯度・経度を見ただけで、詳しく震源を調べなかった証拠である。担当課の職員が分からないという以上、市として震源に関する情報を把握していないことは確か。災害対策を実施する上で震源に関する情報は不可欠のはずだが、市はこれを収集する作業を怠っていた。外国人のおもてなし対策ばかりに精を出す高島宗一郎市長だが、足下の揺れを見過ごすようでは、市民の安全は守れまい。
注目される「宇美断層」
ちなみに、昨年3月から今年3月までの1年間に、福岡県「北西沖」で発生した震度1以上の地震について気象庁のデータベースで調べたところ、以下の7回であることが分かった。
同じ「北西沖」でも、うち6回の震源は博多湾の西側。平成24年に西方沖地震を引き起こした「警固断層」に関係すると想定されるが、今月5日の震度3は、「宇美断層」の延長部が震源だったとする見方があり、RKB毎日放送が13日のニュース番組で詳しく報じている。