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子育て支援、高齢者対策には無関心!? 福岡・高島市政の悲しい現状

2016年3月17日 09:15

高島市長 今年2月、総務省が公表した国勢調査の速報値で、福岡市の人口が神戸市を抜いて全国20の政令指定都市中5位になったことが報じられた。速報値による福岡市の人口は153万8,510人。進学や就職に伴う若年層の転入が顕著だという。
 独り勝ち状態の福岡市で市政のかじ取りを行っているのは、2期目の高島宗一郎市長(写真)。国家戦略特区に選ばれたことで、初当選以来こだわり続けてきた観光やIT、ベンチャー育成といった外向けの施策に、ますます力を入れるようになっている。 
 一方、肝心の福岡市民の暮らし向きについては無関心。興味のない分野は役人任せで、市内部からもため息が漏れるほどだ。パフォーマンス市政の現状について、検証した。 

熱中するのは“外向け施策”
 年頭にあたり、市長が掲げたキャッチコピーが「圧倒的福岡時代」。その後に出された国勢調査の速報値が、市長の鼻息をさらに荒くした格好だ。

 気をよくした市長、ベンチャー育成や外国人優遇のための策を次々と打ち出しているが、彼の視線の先にあるのは「市外」から来る人たち。「外国人のチャレンジを応援!」、「国内初『スタートアップビザ」を開始」、「クルーズ船寄港回数日本一」―― 定例記者会見の内容は、そうした派手なタイトルがつくものばかりだ。

 一方、市民の暮らしにはどう見ても無関心。市役所内部からも「新しいものに関心を持つと、トップダウンですぐ開始。3カ月も経つと関心がなくなり、あとは職員任せ。外国人や若い企業家のための施策には力を入れるが、市民の暮らしのことなど興味がないのか、見向きもしない」といった声が聞こえて来るほどだ。なるほど、国中が注目の子育て支援についても、平成26年4月の「待機児童ゼロ宣言」以来これといった情報発信を行っていない。

増え続ける待機・未入所児童
 一昨年4月、市長は「待機児童ゼロ」を誇らしげに宣言。市長選前のパフォーマンスとしては大成功で全国ニュースにもなったほどだったが、その後どうなったのかについては何も語っていない。そもそも、高島氏の「待機児童ゼロ宣言」の時点で、待機児童にカウントされない「未入所」の児童数は1,100人以上。子育て現場の実態を無視した、“人気取り”だったことは明らかだ。

 福岡市に確認したところ、昨年12月の時点で待機児童は339人、3カ月後の現在は70人あまり増え406人に達しているのだという。未入所児の状況悪化は、さらに深刻。昨年12月で2,360人だったものが、すでに2,722人にまで増加している。

 国は、昨年4月に「子ども・子育て支援新制度」をスタートさせており、小規模の「特定地域型保育」や「認定こども園」の設置を進めてきたため保育施設の数は増えている。しかし、待機児童や未入所児童は、減るどころか増え続けているのである。

 こうした状況について、市長が説明を行ったという記録は皆無。保育環境の改善に向けて、市独自のプランを打ち上げたことなど、ただの一度もない。高島氏の「待機児童ゼロ宣言」が、市長選に向けたただのパフォーマンスだったことは明白だ。

お年寄りにも冷淡
 外国人や若者向けの施策には熱心な市長。子育て世代だけでなく、お年寄りにも冷淡だ。福岡市南区で、町の老人会長を務めている72歳の男性は、次のように嘆く。
 ―― 若い市長さんのやることは、さっぱりわからない。ITだとかクルーズ船がどうだとか、私たちの世代には縁遠い話ばかり。年金生活者の暮らしは苦しくなる一方なのに、配慮のかけらも見えない。国もそうだが、福岡市も年寄りには冷淡。外人や観光客の機嫌ばかりとる姿勢には、いい加減うんざりだ。もう少し、地に足の着いた市政をやってもらいたい。

 たしかにここ数年、福岡市が高齢者向けの施策で注目されたという記憶はない。国の方針に従って施設整備などには予算をつけるが、市独自の施策で現状を変えようという姿勢がないからだ。下は、福岡市における特別養護老人ホームへの入所待ち状況。子育て支援同様、高齢者問題の解決が難しいことを示している。

特養入所待ち推移1 .jpg

 入所待ちが年々減っているのは確かだが、それでも5,000人近くの人が「入りたくても入れない」状態。全国的な傾向ではあるが、施設整備が追い付いていない。市は、在宅介護支援策に力を入れていく方針だとしているが、待機児童問題同様、深刻な状況を最善するメドはたっていない。市長は、こちらについても役人任せ。最近の定例会見の記録を見ても、「ICTを活用した高齢者の見守りの調査検討事業」であるとか「高齢者乗車券・福祉乗車券のタクシー助成券交付開始」程度の話しか出てこない。福岡市で子育て支援策や高齢者対策を支えているのは市の職員。市長でないことだけは確かだ。

 ある市幹部OBは、次のように話している。
 ―― 高島市長は、地味なことが嫌いなんですよ。だから、市民と向き合わずに国とばかり向き合っている。市民の暮らしを良くしようと思えば、現場できちんと市民の声を聞く必要がある。対話集会のまね事はやっているが、官製の集まりでは厳しい意見は出ないものです。そもそも、出張ばかりで市役所に居る時間が極端に少ないのだから、市民の声が聞こえて来るはずがない。携帯電話やインターネットに頼るのではなく、市民生活の中に飛び込んで話を聞くべきでしょう。福岡市を支えているのは市民。外国人やこれから起業するという若者ではないはずです。先行投資も大事ですが、最優先で守るべきものは何なのか、しっかりと考えてもらいたい。



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