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幼稚な市長と大人の県知事

2016年1月 6日 09:00

高島市長 昨年、都構想をめぐる住民投票やダブル選で注目を集めたのは大阪。最終決戦で勝利を得た橋下徹前大阪市長が厳しく批判してきたのは「二重行政」だったが、福岡の県都「福岡市」の高島宗一郎市長(写真)も、昨年の会見で「二元行政がある」として小川洋福岡県知事に噛みついていた。
 的外れな批判だったのだが、その高島市長、よほど知事のことが気に入らないらしく、あちらこちらで物議を醸す事態を招いている。

福岡モーターショーオープニング 市長は不参加
 昨年12月18日から4日間の日程で、マリンメッセ福岡などを主会場に「福岡モーターショー2015」が開催された。2年に1度、水素で走る燃料電池車をはじめ最新技術を駆使した国内外の自動車、オートバイなど約230台が展示され、多くのモーターファンで賑わった。

 福岡モーターショーの実行委員会は、国の出先である九州経済産業局をはじめ県、福岡市、北九州市などの自治体、さらには九州経済連合会や県内各大学、大手企業、マスコミ各社がずらりと揃った、まさに産官学オールキャスト。自動車産業を、地域経済の柱の一つに据えてきた福岡県ならではの、イベントだといえよう。

 当然、モーターショーのオープニングには小川知事をはじめ県政界関係者や県内産学の代表者が顔をそろえたが、関係者が首をかしげたのが福岡市の対応。高島市長はもちろん、副市長さえ顔を見せておらず、市を代表して参加したのが所管局長の下にいる「理事」だったからである。会場の関係者からは「福岡市長は、(戦略)特区だのITだのに忙しくて、クルマのことには興味がないんだろう」(財界関係者)といった冷たい声も――。だが、福岡市の関係者が苦々しげに語った次の話こそ、もっとも核心をついた見立てだったかもしれない。

 ―― きょうの主役は小川知事。その他大勢という扱いに『我慢ならん』というのが市長の本音だろう。知事と自分は同格と思っている市長のこと、格下の扱いをされるイベントなど、出たくもないということだ。幼稚。まるで駄々っ子。それにしても、この一大イベントに理事だけとは……。

ラグビーワールドカップレセプション 知事を無視してスマホいじり
 昨年、日本中を元気づけた出来事といえばラグビーワールドカップでの日本代表チームの活躍。スポーツ界最大の大番狂わせといわれる南アフリカ戦での勝利は記憶に新しいが、開催国イングランドでは、高島市長の呆れた行動が県関係者の怒りを買っていた。

 次回大会である「ラグビーワールドカップ2019」は日本での開催。福岡市にある「博多の森球技場」も競技会場の一つに選ばれており、大会最終日を前にした10月30日、小川知事や同行の県議団がラグビーワールドカップ2019組織委員会が主催するレセプションに参加していた。そしてそこには高島市長の姿も――。市長は、29日から31日までラグビーワールドカップを、11月1日からはフランスのボルドーでワイナリーの視察を行うことを目的に海外出張中だったのである。
(下がその時の旅行命令書。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

旅行命令書

 “事件”が起きたのは、レセプション会場に小川知事が姿を見せた直後。そばに来た知事と視線を合わせた高島氏は、挨拶もせずに手にしていたスマートフォンをいじり出したというのである。「まるで悪ガキの所業」「傍若無人とはこういうことをいうんだな」「福岡の恥」――居合わせた県会議員らはそう囁き合い、子どもじみた市長の行動を軽蔑を込めた視線で眺めていたのだという。

敵対心むき出し
 確信犯的な行為だったとは思いたくないが、市長が知事に対して敵対心を持っていることだけは確かなようだ。昨年6月、大阪都構想に対する記者団からの質問に答えた市長は、次のように話していた。

 二重行政があるとするならば、これは、絶対に解消しなければならないと思っています。で、新聞見たら小川知事がきのう、『(二重行政は)ない』って言ってたので、私が『ある』と言えば、知事がおっとっと、ということになるんでしょうがね。福岡の場合はですね、二重行政というか、いわゆる二元行政というものがあるわけですね。

 このあと、県に権限がある河川、特別支援学校、子ども医療費といった施策について県側を非難する話を続け、小川知事に対する敵対姿勢を鮮明にしていた。

 対照的だったのは、高島会見の前日に「二重行政」について質問された小川知事。次のように答えて、自治体間の良好な関係をアピールしていた。

 二重行政があるかないかというところは、大阪府、大阪市の状況と我々の状況は違うのではないかと思っております。まず、面積が違うし、歴史的ないろいろな経緯が違うと私自身は思っています。

 本県では、二重行政は基本的にはないと思っていますが、共通の課題はある。共通の課題を解決するために、両政令市とはこれまでも個別の案件ごとに色々議論をし、調整し、連携してきている。具体的な案件を解決していく上で、連携、協力をしてきているわけです。そして、その連携の実効性を上げることによって、県民福祉の向上、市民福祉の向上を達成してきていると思っています。これからもそれでやっていきたいと思っています。

 どちらが子どもでどちらが大人か、会見での発言を見比べれば瞭然。幼稚さ全開で知事に対抗することが、市民のためになるとは思えないが……。



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