安倍晋三首相に近い自民党若手が開いた勉強会「文化芸術懇話会」で、「マスコミを叩くには、広告料収入と、テレビの提供スポンサーにならないこと。日本全体でやらないといけない。一番こたえるだろう」」などと報道を封殺する発言をしていた井上貴博衆議院議員(福岡1区。当選2回)。その後、政党交付金1,300万円の処理を巡る疑惑が発覚し、地元マスコミから逃げ回るという醜態を演じていたが、この御仁、やっぱり「政治とカネ」に関する意識が庶民とずれているようだ。
井上氏の資金管理団体「井上貴博後援会」が福岡県選挙管理委員会に提出した平成26年分の政治資金収支報告書と支出を証明する書類を確認したところ、不適切と思われる支出がぞろぞろと出てきた。
ブランド品を政治資金で購入
下は、井上後援会が昨年2月にお買い物をされた折の領収書。「ブルガリ 福岡店」とある。
“ブルガリ”は宝石や時計、化粧品などを扱うイタリアの高級ブランド。金額に24,150円とあるだけで何を買ったのか分からないが、収支報告書上は「贈答品代」。どなたかへの贈り物として処理されているが、高級ブランド品を政治資金で購入する感覚には呆れるしかない。
井上後援会の昨年の総収入は約1,889万円。前年からの繰越金約255万円を除いた26年だけの収入約1,634万円は、政治資金パーティーで得た943万円と井上氏が支部長を務める「自由民主党福岡県第一選挙区支部」からの収入だ。同支部の主な収入は、1,900万円に上る党本部からの交付金。つまり、税金で高級ブランド品を買ったも同然なのだ。これを政治活動の一環と言うなら、井上氏に政治家としての資格はあるまい。
ファミリー企業に多額のタクシー代支出
次に、多額のタクシー代金。井上後援会は昨年8月に17万9,500円、9月29万9,170円、10月27万5,270円、12月に14万4,810円のタクシー代を「旅費交通費」として支出していた。政治活動に、これほどタクシーを利用する陣営は珍しいが、支出先は今年春まで井上一族が経営していたタクシー会社「西日本自動車」。井上後援会は、経営が苦しいと言われていたファミリー企業のタクシーを頻繁に使って売り上げアップに貢献していた。
伝統文化の振興―チケットの配布先は?
「文化芸術懇話会」のメンバーだっただけに、井上センセイは伝統文化の振興にも力を入れておられるようだ。下は、組織活動費の中の交際費支出の一つ。チケット代として「宵待之翁プロジェクト実委員会」に11万5,000円が支払われていた。
調べてみると、「宵待之翁」とは井上氏の選挙区内にある神社で行われる薪能のこと。宵待之翁プロジェクト実委員会のウエブサイトにはチケット料金が記されており、「S席/5000円 A席/3000円 C席/1000円」となっている。支出額からみてS席かC席をお買い求めになっていたようで、5,000円席なら23人分、1,000円席なら115人分のチケットを買っていたことになる。収支報告書にはこれに見合う収入がなく、選挙区内の有権者にチケットが渡っていたら、公選法で禁止された寄附にあたる可能性も出てくる。
支出の実態について尋ねるため井上氏の地元事務所に連絡したところ、会計事務を担当している秘書が「外出」しているという。時間をおいて再度連絡を取ろうとしたところ、今度は「お休みしてます」――。政治とカネの問題に、真摯に向き合おうという姿勢は感じられない。
昨年の政治資金収支報告には、まだまだ疑問点があるが、それはまた別稿で……。