先月末、ある指名手配犯が熊本県警に逮捕された。捕まったのは、九州一円で違法にカネを集め、姿をくらましていた白石勢輔容疑者(58)。「ファンドマネージャー」の肩書を使って多くの人を騙しており、被害額は6億円とも10億円とも言われている。
じつはこの詐欺師、犯行を重ねるなかで政治家の政治資金パーティーに参加し、政治資金を提供していたことが分かっている。
その政治資金パーティーとは、高島宗一郎福岡市長の資金管理団体「アジアリーダー都市研究会」が開催してきた『九州・アジア未来塾』。騙し取られたカネが市長の活動資金になった格好で、詐欺師との関係も含め、市長の説明責任が問われる事態となりそうだ。
被害額10億円超の可能性も
白石容疑者の逮捕容疑は出資法違反(預り金の禁止)。東京都港区の六本木ヒルズ内に登記上の本社を置く「株式会社プレシャスインベストメント」のファンドマネージャーとして、元本保証を謳って投資ファンドへの出資を勧誘。平成23年8月から24年12月にかけて熊本、宮崎、福岡などで計1億1,850万円を集めたとされる。出資法違反に問われる事案での被害額は6億円以上になると言われているが、HUNTERの調べで東京や福岡を舞台に詐欺を重ねていたことも分かっており、実際に騙し取った額は10億円を超える可能性もある。
プレシャスインベストメントの設立は平成22年10月。登記上の本社となっている六本木ヒルズ(右の写真)の該当フロアには入居の形跡はなく、会社に電話しても英語で留守番メッセージが流れるだけとなっていた。社員らの携帯も、特定番号以外はつながらない設定。典型的なダミー会社の手法で、多くの人を騙していた。
同社をめぐっては昨年3月、出資法違反(預り金の禁止)に問われた同社の従業員が熊本地裁において有罪判決を受けているほか、民事でも訴訟が継続中。プレシャスインベストメントへの出資契約は無効などとして九州各地の個人・法人が、同社側を相手取って約1億円の損害賠償を求める裁判を起こしている。
プレシャス社の行為が事件化した後、行方をくらましていた白石容疑者だったが、昨年春頃には警察の捜査をあざ笑うように東京-福岡を往復。実在する東京や福岡の複数の会社のファンドマネージャーを名乗り、別の詐欺事件を起こしていた疑いが持たれている。
市長の政治資金パーティーに参加
一方、問題の政治資金パーティーは、高島市長の資金管理団体「アジアリーダー都市研究会」が年3回のペースで開催してきた『九州・アジア未来塾』。市長側が福岡県選挙管理委員会に提出した政治資金収支報告書によれば、「九州・アジア未来塾」は平成23年10月に第1回目が開催され、24年に3回、25年にも3回開かれていた。収入は、毎回約150万円から200万円。参加者は50人から60人程度で、1回あたりの会費は3万円という高額なものだったという。23年から25年までの3年間で集めた政治資金は計1,222万円。市長にとっては、貴重な資金源だった。
HUNTERが独自に入手した同パーティーの参加者名簿には、プレシャスインベストメントの社員2名が含まれており、名簿の記載では、一人がファンドマネージャー、もうひとりが営業部所属となっている。(下はその部分)
前述したように、白石容疑者のプレシャス社が違法な金集めを行っていたのは平成23年8月から24年12月の間。出資法違反で摘発される25年までは、プレシャスインベストメントの名刺で活動していたが、いくつかの偽名を使っていたことも分かっている。東京では主として「白石大輔」、多くの被害者を食い物にしていた九州では「安達和彦」――そう、市長の政治資金パーティーの名簿にあったファンドマネージャーこそ、白石容疑者なのである。
下は、白石容疑者が昨年春頃に使っていた名刺。携帯電話の番号は、市長の政治資金パーティーの名簿に掲載されていた安達和彦の携帯番号と一致している。
複数の事件関係者の証言によれば、白石容疑者は福岡県内に本拠を置く指定暴力団との関係を公言。人から騙し取ったカネの一部を、暴力団側に渡していることを自慢げに語っていたという。
許されぬ説明責任放棄
今年3月、高島市長(写真)の事務所に対しプレシャス社との関係や未来塾への参加回数などについて確認を求めたが、「連絡する」としながら無回答。また、同月に開かれた福岡市議会で、未来塾へのプレシャス社参加の有無について聞かれた高島市長は、「九州アジア未来塾に参加されている皆様の具体的な企業名につきましては、政治資金規正法でも公表の義務はなく、お答えは差し控えさせていただきます」として説明責任を放棄した形となっていた。
白石容疑者が騙し取ったカネが、市長の政治資金になったとすれば由々しき事態。暴力団がらみの事案である可能性もある。詐欺師との関係も含め、市長の口から一連の経緯を説明するのが当然だと思われるが……。