昨年夏、福岡市の高島宗一郎市長(写真)が、片道分の旅費を自己負担する形で東京出張の度にプライベートタイムを過ごしていたことを報じた。
平成25年1月から26年6月までに行われた38回の東京出張のうち、23回の出張で前日か当日夜を「私用」にあてていたというもの。税金のプライベート利用だとして厳しく批判する記事をシリーズで配信。市議会でも追及される事態となった。
ところが反省という言葉を知らない市長、新年度になってからは、出張の実態を隠すよう方針転換を図っていた。
変更された旅行命令書の記載
下は、福岡市への情報公開請求で入手した「出張命令書」で確認した、今年4月から6月までの東京出張の内容をまとめた表。出張は計8回。うち7回は往復の航空券代が支払われており、前年まで頻繁にあった「私用前泊」「私用後泊」が影を潜めた形だ。
だが、赤色で示した「スタートアップ都市推進協議会総会」への参加を目的とした4月29日の東京出張には、往復ともに航空券代が発生していない。私的な前泊と後泊があった可能性が生じるが、この出張の旅行命令書の備考欄には航空券代未支給の理由は記載されていない(下がその命令書)。旅行の起点と終点が滞在地である東京23区内であることが書かれているだけ。なぜ東京都内が出張の起点になったのか、公文書上での確認がとれない。
一方、昨年までの東京出張で作成された命令書には、下の2例のように備考欄に航空券代を支給しなかった理由が明記されている。
驚いたことに、福岡市は、昨年まで用いていた命令書の記載方法を変え、出張の実態が分からないようにしているのである。市長にとって都合の悪い情報を排除した形。姑息と言うしかないが、問題はこれだけに止まらない。
秘書課も知らない市長の所在
出張が行われた4月29日は、祝日(昭和の日)の水曜日。前日28日と翌30日は平日で、市役所は平常勤務である。旅行命令書の記載通りなら、出張前後は東京にいたことになる。それが私的な滞在か、別の公務での滞在なのか、市側に聞かなければ分からない。市秘書課に確認を求めたところ、送られてきたのが下のメールである。
4月29日の出張前後、市長が東京にいたかどうかの確認に対し、≪公務外のため、所在は承知しておりません≫――。出張命令書では起点・終点を都内としており、在京は明らか。しかし、市長の行動を把握しているはずの秘書課が、その所在を≪承知していない≫というのである。理由が≪公務外≫だというのだから、なお呆れる。福岡市のトップが、平日の業務時間に東京で遊んでいたと言われてもおかしくない状況を、組織ぐるみで容認したようなものだ。高島市政らしい隠ぺい手法と言えばそれまでだが、これはまともな行政機関の姿ではない。それにしてもこの市長、本当に懲りない方である。