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言論封殺の威勢はどこに 逃げ回る自民・井上貴博議員
1300万円の主張に疑義

2015年7月29日 08:35

井上貴博事務所 安倍晋三首相に近い自民党若手が開いた勉強会「文化芸術懇話会」で、「マスコミを叩くには、広告料収入と、テレビの提供スポンサーにならないこと。日本全体でやらないといけない。一番こたえるだろう」などと報道を封殺する発言をしていた井上貴博衆議院議員(福岡1区。当選2回)。暴言直後に、平成24年12月の総選挙で井上氏本人が受けとった政党交付金1300万円を隠していたことが発覚し、公職選挙法違反(虚偽記載)だとして刑事告発される事態となった。
 騒動以来雲隠れし、説明責任を放棄した格好の井上氏だが、問題の1,300万円についての主張に疑義が生じている。 

一変した選挙余剰金の説明
 疑惑が持たれている1,300万円の処理について、井上氏側の会計責任者は当初、HUNTERの取材に対し次のように説明していた。

 ―― 党から1,300万円の交付金を受け入れ、選挙費用として支出計上しながら、選挙運動費用として報告することを怠っていた。言い訳になるかもしれないが、理解不足だったと反省している。(選挙余剰金)1300万円は通帳で管理してきた。

 説明が事実なら、選挙の余剰金は1,300万円。これがまるまる井上氏の懐に入ったことになる。しかし2日後、他の報道機関への説明は一変する。

 ―― 1,300万円の収入があったたため、自己資金7,646,405円を差し引き、535万3,595円だけが現金で残った。残った現金の存在は忘れていたので、自民支部に寄附する形で返金した。

 「1,300万円」が「535万3,595円」に、「通帳管理」は「現金保管」へと変わっている。さらに、自己資金で足りたはずの選挙資金を、わざわざ税金で補てんしたというのだから、開いた口が塞がらない。だが、いずれの言い訳も通用しそうにないことが、井上氏の政治資金の流れから明らかになりつつある。

資金不足は明らか 
 井上議員の関連政治団体は二つ。同議員が代表を務める「自由民主党福岡県第一選挙区支部」と資金管理団体「井上貴博後援会」だ。井上氏側が福岡県選挙管理委員会に提出した平成24年、25年の政治資金収支報告書によれば、両団体の収入は次のようになっている。

【自由民主党福岡県第一選挙区支部】
平成24年 
総収入:1,811万2,343円(前年よりの繰越金244万7,151円)
同年収入:1,566万5,192円
・自民党本部から1,412万5,000円(うち1,300万円が井上氏に流れた交付金)
・党支部から153万9,800円
・その他392円

平成25年
総収入:4,497万5,584円(前年よりの繰越金175万4,609円)
同年収入:4,322万975円
・党本部交付金1,250万円 
・政治資金パーティー1,335万9,685円 
・麻生太郎氏政治団体から200万円 
・企業献金1,536万1,290円

【井上貴博後援会】
平成24年
総収入:436万5,526円(前年よりの繰越金48,705円)
同年収入:431万6,821円
・井上議員本人から180万円
・自民支部から250万9,641円
・その他7,180円

平成25年
総収入:1,828万9,199円(前年よりの繰越金228万9,199円)
同年収入:1,600万円
・自民支部より1,600万円

 井上議員本人が支部または後援会に寄附を行ったのは、2年間でわずかに1回。金額は180万円に過ぎない。確認したところ、この寄附は平成24年12月1日付け。12月10日に党本部から支出された問題の1,300万円とは関係のないカネだった。

ファミリー企業から1,600万円
 後援会の収入はほとんど自民第一支部からの寄附。その自民支部の収入は、党本部からの交付金、政治資金パーティー、所属派閥(麻生派)からの寄附、そして企業献金によるものだった。下は自民第一支部の平成25年分の政治資金収支報告書。注目すべきは、企業献金を行った3社である。

収支報告書

 企業献金のページに登場するのは、井上吉商事株式会社、有限会社福岡自動車学校、九州産業不動産株式会社。各社はそれぞれ750万円、466万1,290円、320万円を自民第一支部に寄附している。じつはこの3社、井上議員の実弟で今年の春から福岡県議会議員となった博行氏が代表、井上議員自身も取締役を務めているファミリー企業だ。井上吉商事はパー券65万円分の購入も行っており、3社の政治資金提供額は計1,601万1,290円に上っていた。自分のカネは出さないという吝嗇ぶりには呆れるしかないが、資金不足は否めない。

 井上氏のファミリー企業は、いずれも苦しい経営が続いているとされ、一族のタクシー会社「西日本自動車」は、つい最近経営権を譲ったばかり。余裕があるとは思えないファミリー企業から資金を出させねばならないほど、井上陣営の資金繰りは苦しかったということだ。そうした状況で、540万円もの現金の存在を「忘れていた」ということがあるのか?誰が考えても答えは「NO」。井上氏側の主張は、虚偽である可能性が高い。もちろん、“1,300万円の通帳管理”もあり得ない。

 当初1,300万円全額が選挙の余剰金であることを認めたものの、返金額が多すぎることに困った井上議員が方針転換。24年選挙の自己資金と相殺する形で余剰金の額を減らす形にし、傷口を広げたと見るのが普通だろう。

 “540万の現金を、紙袋に入れたまま忘れていた”――こうした非常識な説明を平気で行い、HUNTERをはじめ報道各社による取材要請から逃げ回る井上貴博議員。検察はマスコミほど甘くはないと思うが……。



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