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福岡市 新規ウェブサイト急増の背景

2015年5月 8日 09:25

福岡市ウェブサイト 先月、高島宗一郎福岡市長の思い付きで始まったネット上の仮想行政区「カワイイ区」が廃止される一方で、市のホームページ上に、市民生活とは無縁のウェブサイトが複数開設されていることを報じた。
 認知度もアクセス数も極端に低く、費用対効果を度外視した愚行。消費増税などが市民生活を圧迫するなか、暮らし向きの予算ではなく、観光やIT関連などに湯水の如く公費を注ぎ込む高島市政の実態だ。今回、改めてネットを活用した事業について検証したところ……。
(右は福岡市ホームページのトップ画面)

無駄は「カワイイ区」だけではなかった
 「カワイイ区」の話題性が下がるなか、福岡市は、シティプロモーションの一環として2013年11月に「Fukuoka Facts(フクオカ ファクツ) 」を、昨年8月には「# Fukuoka (ハッシュ フクオカ)」というサイトを新たに開設していた。

 「Fukuoka Facts 」は、福岡市の様々な統計データをイラスト等で紹介し、市の優位性や特徴を示すことを目的として立ち上げられたサイト。「# Fukuoka」は、クリエイティブ人材を福岡に集めるため、映像、アニメ、ゲームなどのデジタルコンテンツを中心としたクリエイティブに関する情報を発信するため新設されたサイトだという。

 市のホームページ上から両サイト(下参照)にたどり着くのは容易ではなく、存在を知らぬ市民の方が多いのが実情。だが、認知度の低い両サイトに投じられた税金は2,000万円にのぼる。費用対効果を度外視した事業であることは明らかで、Fukuoka Factsに至っては、1日平均943件のアクセス数で、最低が100~300という日さえあった。

Fukuoka Facts、# Fukuoka (ハッシュ フクオカ) 福岡市サイト3

新規ウェブサイト続々
 市がホームページの利便性をアップさせるのは結構なこと。しかし、思い付きで次々と新たなサイトを加えていては、情報過多になってしまう。実際「市のホームページは利用しづらい」、「必要な情報にたどり着くまで、手間ひまがかかり過ぎる」といった市民の声もある。前述の「Fukuoka Facts 」や「# Fukuoka」のように、市民からほとんど存在を知られていないサイトがあるもの事実だ。

 それでは、「Fukuoka Facts 」や「# Fukuoka 」の他にも無駄なサイトはないのか――市への情報公開請求で入手した資料から、ネット活用事業の状況をまとめた。下は、平成19年度から本年度までに、市がサイトの制作・運営を委託した契約の一覧である。

福岡市業務委託契約

 高島市長の就任は平成22年12月。それまで年間1~2件だったウェブサイトの新規立ち上げが、高島カラーが色濃く出た平成25年度は5件。26年度は一気に19件となり、本年度も4月で10件に達していた。当然予算も急上昇。年間数百万円~1,900万円程度だったものが、26年度には8,900万円台まで膨らんでいる。(注:21年度に、国の失業対策で実施された「ふるさと雇用再生特別交付金」を使った『授産品製品販路拡大業務』は、カタログ製作や配布などの業務が含まれるため予算額が多い)

 ウェブサイトの利用頻度を確認するためのアクセス数の報告は、契約ごとにあったり、なかったり。防災関連情報など必要不可欠のサイトは閲覧数が多いが、日に数十件というものもある。すべて無用とは言えないが、ネット事業への過剰投資は再考する必要があろう。

ネット頼みの問題点
 高島市政の特徴は、派手な事業への過大投資。観光やIT関連には、ふんだんな予算をつけてきており、ネットの活用もその一環だ。しかし、報じてきたように「費用対効果」が度外視される傾向が強く、行政のあるべき姿を逸脱するケースも。廃止された「カワイイ区」はその典型だったと言えよう。

 戦略特区をはじめ自身の思いが詰まった事業には異常なまでに力を入れる市長だが、市民の暮らし向きを心配する姿など見たことがない。戦略特区にしても、それによって市民に何がもたらされるのかという肝心の部分は、説明不足のままだ。近年、個別の事業について市側に説明を求めると、必ずと言ってよいほど返ってくるのが「ホームページ上に掲載していますから」という一言。ネット頼みに走るあまり、行政にとって必要な「説明責任」を放棄する形になってはいないか――新規ウェブサイトの急増が、市政の歪みに疑問を投げかけている。



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