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問われる福岡市議会の存在

2015年3月31日 09:50

掲示板 統一地方選挙がはじまった。26日、北海道・神奈川・福井・三重・奈良・鳥取・島根・徳島・福岡・大分の10道県で知事選挙が告示されたのに続き、29日には札幌、広島など5政令指定都市の市長選挙が、さらに来月3日には道府県議会議員と政令指定都市の市議会議員選挙が告示される。
 身近な「選良」の存在について考えるいい機会になりそうだが、気になるのは投票率。国政選挙をはじめ首長や地方議員を決める選挙でも低投票率が続いており、有権者の政治離れは深刻だ。原因は政治不信。とくに、機能しなくなった「議会」には厳しい視線が注がれている。

福岡市議会の機能不全
 4年に一度の統一地方選。福岡市では市議選、県議選、知事選のトリプル選挙となる。市民にとっては身近な政治に触れる良い機会のはずだが、投票率が上がる要素は、いまのところ見当たらない。直近では、昨年暮れの総選挙が戦後最低の52%という投票率。11月の福岡市長選挙は、38.73%という低さだった。有権者の政治離れが顕著だが、責任が政治家にあることは疑う余地がない。

 それでも候補者たちは走る。知事選の告示前後からは、立候補予定者たちのビラが次々と各家庭のポストに投げ込まれるようになった。一度に4枚という日もある。訴えは様々。実績強調型もあれば利益誘導型、イメージ優先型もある。しかし、どれも共感を抱くまでには至らない。とくに、与党会派に属する福岡市議たちの主張には、説得力がないと言わざるを得ない。改選を迎える定数62の福岡市議会。与党会派にはこの4年間、二元代表制の一方としての自覚がなかったからである。

チラシ

 今月上旬に開かれた福岡市議会の条例予算特別委員会。質問に立った自民党市議団の質問者たちが、高島宗一郎市長に答弁を求めないという異例の展開に。市長が答弁するのは、他会派の議員から質問を受けた時だけ。自民党議員と市幹部職員とのやりとりが続き、同委員会最終日近くになって、ようやく一人の議員が市長との質疑を交わした。助け船を出したのは市長の側近議員。体裁は整えたものの、自民党市議団と高島市長との確執の深さを示す出来事だった。

 事の発端は昨年12月の総選挙。福岡1区では、前々回の総選挙で選挙区から出馬した井上貴博氏と、比例に回った新開裕司氏が、自民公認を巡って対立。井上氏を推す麻生太郎副総理、新開氏を抱える古賀誠元幹事長の代理戦争でもあったが、党本部での調整もつかず、両人とも無所属で立候補するという事態となった。

 公示後。地方議員たちが慎重な動きを見せるなか、高島市長は自民党市議団の制止を振り切り、井上氏だけを支援。遊説にまで同行する熱の入れようだった。顔をつぶされた形の市議団は怒り心頭。市長に抗議文を突き付けたが、この動きを市長は徹底的に無視。2月に始まった市議会でも関係修復は進まず、前述したように、自民党市議団が市長を無視するという、子どもじみた展開となった。

 昨年11月の福岡市長選では、自民推薦を巡ってギリギリまで市長派と反市長派が対立。一部の長老議員が高島推薦を押し切ったものの、火種はこの後もくすぶり続けることに――。そうしたなかでの市長の井上氏支援。市議団の意向を踏みにじった市長に、彼を擁護していた長老議員もさじを投げた格好となっている。

 同党市議団が怒るのも無理はない。高島市政1期目の4年間。自民党、公明党、みらい福岡の与党3会派は、市長の暴走や議会軽視に歯止めをかけるどころか、事あるごとに擁護してきたからだ。

 市長の市議会軽視については、枚挙に暇がない。2年で廃止となった仮想行政区「カワイイ区」、市役所の1回の改装工事、中国からの研修職員受入れ、人工島での総合体育館建設等々――市議会に報告するのはいつも施策の公表後。人事もいきなり発表し、与党会派には事後承諾で事を済ませてきた。これだけ虚仮にされながら、長老や一部の側近議員たちが市長をかばって水面下で収拾を図ってきたというのが実情だ

 その結果、高島執行部が提案した議案は、この4年間否決はもちろん修正されたためしさえない。議会で市長を追及するのは決まって共産党の市議。民主党議員も、それらしい動きはしたものの、決め手を欠く質問ばかりで市民に市政の実態を伝えるまでには至っていない。事実上の機能不全。福岡市議会は、死んだも同然の状態が続いている。

 この間、市長はやりたい放題。前述したような思い付きの施策で市役所や議会を振り回し、無駄な事業を次から次への実施してきた。人事においては、気に入らない職員をかたっぱしから異動させ、へつらう者を要職に就けるといった具合だ。歪む福岡市でチェック機能が働かなったのは、明らかに与党会派の責任である。

県議会との差は歴然
 オール与党体制となっている福岡県と比べてみても、福岡市議会の酷さは際立つ。県と県議会は、慣れ合いに陥るどころか、時には小川洋知事の執行部と県議会が真正面からぶつかり合い、知事が度々議会側に理解を求めることも。県議会改革も進められてきており、暴力団排除や危険ドラッグ追放のための条例でも全国の注目を集めている。二元代表制が機能しているのは確かだ。

 問題の政務活動費についての取り組みも、県議会と市議会では違っている。県議会では、政務活動費の領収書を即日閲覧することが可能だが、福岡市議会の場合は、情報公開請求を行って営業日で7日間待たねばならない。市議会は、積極的に情報公開を行う覚悟がないのである。

 かつての福岡市議会は、県議会と対等の立場で競い合う存在だった。市長にもモノを言えた。それがいま、県議会の圧倒的な存在感に比べ、市議会は余りに小粒。市長の暴走に歯止めをかけることができないのでは、存在する意味さえない。

 市議会議員に求められるのは、地域のお世話だけではないはず。二元代表制の一翼を担う存在として、きちんとチェック機能を果たすことこそ、市議の使命ではないのだろうか。福岡市議会の奮起に期待したいものだが……。



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