独善的との批判が絶えない高島宗一郎福岡市長の市政運営。2期目を迎えて初めての人事で、益々その傾向が顕著になっているという。
幹部職員や外郭団体トップの人事は、候補となる人物の経歴や実績を基に、副市長をはじめとする事務方、場合によっては議会筋の意見も聞いて、市長が最終判断するものだ。少なくとも、吉田宏前市長の時代まではそうだった。
一変したのは高島市長の就任後。市長は、議会はもちろん、市内部の意見にも耳を貸そうとせず、誰もが「なんでこの人が」と首をかしげるざるを得ない職員が登用されるようになった。偉くなるのは市長にへつらう茶坊主ばかり。今月末にかけて公表される春の人事では、いっそう酷い状況が現出しそうだ。
歪む市政
高島流人事は非常に分かりやすい。まず、市長の指示に少しでも異を唱えると、その職員は左遷。市長室がある市役所9階から、できるだけ離れた部署にとばされるのだという。市長の意に沿わぬ主張もアウト。それが正論であったとしても、市長に認められることはない。高島氏の市長就任以来、閑職に追いやられた職員は数知れず。死屍累々の状況は、歪む市政の象徴でもある。
一方、高島市政下で異例の出世をする職員は、ゴマすりと嘘つきの集まり。市内部では「口も利きたくない」と言われるような人物ばかりが、日が当たるポストに就いてふんぞり返っている。ある市幹部OBは、「茶坊主人事」だと吐き捨てる。その茶坊主の一人が、今年6月、市の第3セクター「博多港開発」の社長に就任することが確実となった。
博多港開発社長に筆頭茶坊主
箝口令を敷いても、人事は漏れるものだ。春に行われる人事のうち、市関係者を不愉快にさせているのが、博多港開発トップの人事。6月の同社株主総会で、新たに社長に選任される予定となったのは、常務理事の角原孝氏。前職は、交通局の理事である。
博多港開発は、福岡市が展開してきた港湾行政の主役。昭和36年から須崎浜、荒津、福浜、箱崎、香椎、小戸・姪浜(現マリナタウン)、東浜など、博多湾の主な埋立造成・分譲を行い、人工島(アイランドシティ)の埋立分譲事業をけん引してきた。これまで社長には歴代の副市長や局長経験者が就いており、局長級とはいえ交通局の理事止まりだった角原氏では、あまりに小粒。同氏に特別な功績があったわけでもなく、先行きを懸念する声が上がるのは当然だ。
さらにはこの常務理事、功績がないどころか、平気で嘘をつく小役人の典型である。昨年9月、高島宗一郎福岡市長の資金管理団体が開催予定だった政治資金パーティーに絡み、市長の政務秘書が角原氏に、パーティー券購入の取りまとめを依頼していたことが判明した。港湾関係者への取材から分かったもので、市長の秘書は、角原氏に対し政治資金パーティーに協力する企業・団体を取りまとめるよう依頼。これを受けた同氏は、港湾関係の企業・団体で組織される一般社団法人の上層部に、パー券販売への協力を求めていた。角原氏は、3セクを使った市長の政治資金集めに協力していたのである。
この折、パー券取りまとめに動いた角原氏は、HUNTERの取材に疑惑を完全否定。港湾関係者の多くが事実関係を認めていたにもかかわらず、「まったく身に覚えがない」とうそぶいた。顔色一つ変えずに姑息な嘘……。この程度の輩が博多港開発の社長というのだから呆れるしかない。
茶坊主が独占する利権ポスト
もうひとつ、気になる人事の動きがある。交通局の理事に、市長側近で道路下水道局の管理部長中村貴久氏を昇任させるのではないかと注目されているのだ。中村氏の前職は、港湾局港湾振興部長。ここをを1年で卒業して、昨年4月に現在のポストへと横滑りしていた。道路下水道局の管理部長は利権に関わるポスト。市長選の足場固めではないかと注目が集まっていたが、それからわずか1年で、同氏を局長級に昇任させ、交通局のナンバー2に据えるのだという。交通局の理事といえば、前述の角原博多港開発常務理事がいたポスト。噂される異動が現実になれば、利権がらみの役職を、高島側近の茶坊主役人でたらい回しにする形となる。一体、誰のための市政なのか……。