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公選法違反の疑い
癒着の証明(2) ― 福岡市長と九電工 ―

2015年3月24日 09:00

高島市長と九電工 昨年11月の福岡市長選挙で、2期目の当選を果たした高島宗一郎市長(写真)の陣営に、九州電力のグループ企業で福岡を代表する電気設備工事会社「九電工」開発営業部の現役課長が、「選対」の一員として参加していた。
 九電工は、これまで福岡市から何件もの工事を受注しており、会社公認の選挙支援なら人件費分が公職選挙法に違反する寄附だった疑いも生じる。判断材料となるのは、福岡市と九電工の「利害関係」の有無。公選法に直結する「請負契約」の状況について調べてみると……。

重なる選挙と請負契約期間
 高島陣営への人的選挙支援が、九電工公認ものだったとする。すると、選挙期間中の社員の給与分は、九電工から市長への寄附とみなされる。公選法は、候補者への寄附に制限を設けており、地方公共団体と請負その他特別の利益を伴う契約者の寄附について、当該企業が地方公共団体と請負その他特別の利益を伴う契約者で、なおかつ契約期間が終了していない場合は、「寄附をしてはならない」と定めている。もちろん、請負契約期間中の企業から、寄附を受け取るのも違法だ。

【参考:公職選挙法】
(特定の寄附の禁止)
第199条  衆議院議員及び参議院議員の選挙に関しては国と、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に関しては当該地方公共団体と、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならない

(特定人に対する寄附の勧誘、要求等の禁止)
第200条  何人も、選挙に関し、第199条に規定する者に対して寄附を勧誘し又は要求してはならない。
2 何人も、選挙に関し、第199条に規定する者から寄附を受けてはならない

 まず、九電工と福岡市の間に「請負契約」があるのかどうかを確認した。その結果、市長選前後の年で、九電工が市から受注した請負工事は、次の4件であることがわかった(注:「新青果市場卸売場棟等電気設備」はJVでの受注)。

九電工工事1

 問題は、この4件の工事の工期が、市長選の時期に契約期間中であるか否か。契約期間中のものがあれば、九電工は市長選にからむ「寄附」はできない。上の表に、確認できた工期を加えてみるとこうなる。

九電工2

 工期に注目してみると、ピンク色で色分けした「新青果市場卸売場棟等電気設備」、「東部水処理センター消毒機械設備更新」、「新青果市場駐車場管制設備」の3件は、平成26年11月2日告示、同月16日投・開票の福岡市長選の期間中も工事の真っ最中。従って「契約期間中」ということになる。九電工は高島候補への寄附ができない状態だった。ちなみに、公選法が禁止する請負期間中の候補者への寄附を行った場合は、寄附をした方にも、もらった方にも罰則がある。

【参考:公職選挙法】
(寄附の制限違反)
第248条  第199条第1項に規定する者(会社その他の法人を除く)が同項の規定に違反して寄附をしたときは、3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。 2  会社その他の法人が第199条の規定に違反して寄附をしたときは、その会社その他の法人の役職員として当該違反行為をした者は、3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

(寄附の勧誘、要求等の制限違反)
第249条  第200条第1項の規定に違反して寄附を勧誘し若しくは要求し又は同条第2項の規定に違反して寄附を受けた者(会社その他の法人又は団体にあつては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)は、3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

会社公認かボランティアか
 高島陣営の選対メンバーとして市長選に参加し、選挙活動を手伝った九電工の課長は、会社が認めた出向だったのか否か――。公選法に抵触するかどうかは、その一点にかかっている。昔からよくある企業選挙の抜け道は、「有給休暇をもらって選挙の手伝いをした。ボランティアだった」という言い訳。今回の件でも、九電工本社や課長は、そう逃げるしか道はない。休暇願など、後付けでどうとでもなるからだ。だが、問題の課長の取材対応は、堂々と選挙を手伝ったという感じではない。HUNTERの電話取材に対して、問題の課長は当初、高島陣営との関わりを否定しているのだ。

 ―― 高島市長の選対におられましたよね?
 課長:いいえ。いないですね。

 ―― ○○△△さんですよね。高島事務所におられた○○さんではありませんか?
 課長:まぁ、事務所には行ってましたけどね。

 「まぁ、事務所には行ってました」という表現で、高島事務所への出入りがあったことを認めたものの、選対のメンバーになっていたことは否定した形。一支援者としての行動だったと言いたいのだろう。しかし、前稿で指摘したようにHUNTERが入手した選対の出勤簿には九電工の課長の氏名が、出陣式の業務分担表にに名字と携帯番号が明記されている。選対組織の一員として組み込まれていたことは疑いようのない事実だ。有給休暇をとった上でのボランティアなら、隠し立てする必要はあるまい。実際に、同課長は選挙戦初日の出陣式で受付業務を統括し、自らは『来賓・報道』の担当をしていたはず。「事務所には行ってましたけどね」程度の話ではないのだ。

 課長クラスの幹部社員が動く場合、会社の業務にも支障が出る。会社が「知らなかった」ということは考えにくい。周辺取材からは、九電工の課長が有給休暇をとっていなかった可能性が浮上しており、そうなると、九電工公認の選挙支援だった疑いが濃くなる。

 そもそも、会社公認の選挙支援であれボランティアであれ、福岡市と請負契約期間中の九電工の幹部社員が、市長選の手伝いに出ること自体が間違い。癒着を疑われても仕方のない状況だろう。だが、市長と九電工の癒着ぶりは、「疑い」という言葉を超えるレベルにある。

―以下、次稿―



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