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福岡市長・疑惑の政治資金パーティー 議会答弁検証

2015年3月19日 09:10

九州アジア未来塾 今月12日の福岡市議会。自身の資金管理団体が開いた政治資金パーティー「九州・アジア未来塾」をめぐる疑惑について質問を受けた高島宗一郎福岡市長は、用意した政治資金規正法の解釈を読み上げることに終始。まともに答えようとせず、説明責任を放棄した。
 この時の議会質疑の様子を確認してみると、明らかに虚偽と思われる答弁も……。市長の議会発言について、さらに検証してみた。

問われたのは市長の政治倫理
 九州・アジア未来塾をめぐる議会質疑の最後。質問した中山郁美市議(共産)に、「一連の疑惑と問題点を市民に明らかにすべきではないか」と問われた市長は、次のように答えている。

 九州・アジア未来塾は、政治団体ではありません。ですから、その会費につきましては第5条2項に規定する寄附ではありません。

私の政治資金管理団体が、開催をしている九州アジア未来塾につきましては、政治資金規正法に基づく適正な政治資金パーティーであり、この収入は同法で禁止されている企業・団体献金とは全く異なるものであります。

九州・アジア未来塾の会費につきましては、勉強会や懇親会に参加する債務の履行、即ち対価として支払われるものであり、政治活動に関する寄付ではございませんので、地元企業を中心とした幅広い分野の皆様にご参加いただいておりますが、問題はありません。

また九州・アジア未来塾に参加されている企業が福岡市からの発注や補助金などを受けているかどうか、私は承知しておりませんし、福岡市の業務に関する業者選定については担当部局において、関係法令などに則り、適切な手法を選択し、公平・公正に相手方を決定しております。このようなことから市長の政治倫理条例に違反するような事実は全くありません。

 中山市議とのやり取りの間、何を聞かれても政治資金規正法の解釈ばかりを繰り返した市長。最後の答弁は、わずかに長いものとなったが、中味はお粗末だった。たしかに、政治資金パーティーの収入は、同法上の「寄附」ではない。しかし、「政治資金」であることに違いはなく、市長自身が、質疑中の答弁のなかで次のように明言している。

九州・アジア未来塾につきましては、政治資金規正法第8条の2に基づき、私の資金管理団体が開催する政治資金パーティーであります。私の政治活動を支援するため、概ね四半期に一度、地元企業を中心に幅広い分野から数十名の方々にお集まりをいただき、勉強会や懇親会を催しております。その対価として会費を徴収し、開催に必要な経費を差し引いた残額について私の政治活動のために支出させていただいております

 市長の政治活動のために支出されたのは、すなわち「政治資金」。その認識はあるらしい。だが、市長は、問題の本質を理解していない。企業・団体献金であれ、政治資金パーティーの売上であれ、「政治資金」であることに変わりはない。

 市議会で問われたのは、もらってはいけない相手から、市長が「政治資金」を得ているのではないかということ。九州アジア未来塾に参加したメンバーのなかに、福岡市発注の仕事を受注した企業の幹部がいて、その方々が最低でも3万円の政治資金を市長側に支払っていた――疑惑を持たれても仕方のない事実だろう。仕事の見返りが、献金なのか会費なのかは関係ない。

 また、出資法違反の疑いが持たれているグループの関係者が参加していたことは、別の意味で問題がある。犯罪行為によって得られたカネが市長の政治資金として使われていれば、市政を揺るがしかねない事態になるのは必至。この場合も、市長の政治資金原資が「献金」か「会費」かは関係ない。

 仮に、このパーティーに暴力団関係者が参加していたら、どうなるのか?その場合は当然、市長とパーティー参加者の関係について追求され、責任を問われる事態になるだろう。九州・アジア未来塾をめぐる疑惑については、企業献金か否かが問題になるのではなく、政治家としての倫理観が問われるのだ。

見え透いた嘘
 虚偽答弁を疑われる発言も見逃せない。市長は、『福岡市の業務に関する業者選定については担当部局において、関係法令などに則り、適切な手法を選択し、公平・公正に相手方を決定しております』と言っている。が、昨年3月に退任した市顧問の起こした問題を、“知らなかった”というのだろうか。

 市長は初当選直後、友人の会社社長を市の顧問(広報戦略アドバイザー)に任命した。元顧問はその後、市発注業務委託の業者選定10件に、選定委員もしくは選考委員として関与。その大半が、元顧問の同業者を対象とした業者選定だったことや、懇意にしている企業が数回にわたって業務を受注していたことが分かっている。公平・公正が聞いて呆れる。

 『九州・アジア未来塾に参加されている企業が福岡市からの発注や補助金などを受けているかどうか、私は承知しておりません』との発言に至っては、明らかな虚偽。真っ赤な嘘と言っても過言ではあるまい。これまで報じてきた通り、九州・アジア未来塾には市内の不動産会社「福住」、電気設備工事会社「九電工」、広告代理店「BBDO J WEST」、旅行代理店「JTB九州」の幹部が参加していたことが判明している。

 福住は、認可保育所「福岡中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転先の土地を市に売却し、1億3,000万円にのぼる疑惑の転売益を得た業者。保育園移転にからむ疑惑については、議会でも追及され、市監査委員からも厳しい指摘を受けている。九電工は「福岡市立こども病院」のPFI事業者構成員であり、BBDO J WESTは、廃止が決まった仮想行政区「カワイイ区」の運営事業者だ。JTB九州については、昨年2月の東京出張をめぐる旅行命令書の改ざん疑惑をめぐって、最終的な航空券代の領収書を市長側に出していたことが分かっている。こうした事実について、市長が知らなかったはずはない。

 答弁逃れ、ごまかし、虚偽……。市長がやっていることは、議会軽視――すなわち、その先にいる「市民」を愚弄する行為なのだ。



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