高島宗一郎福岡市長の資金管理団体が開いた政治資金パーティー「九州・アジア未来塾」に、福岡市発注業務の受注企業幹部や出資法違反の疑いが持たれているグループの関係者が参加していた問題が、先週の福岡市議会で取り上げられた。
答弁に立った高島市長は、政治資金規正法の解釈を繰り返すばかり。まともに答えようとせず、事実上説明責任を放棄した形となった。九州・アジア未来塾の正体が都合の悪いものであることを、自ら宣言した格好だが……。
市長の政治資金問題で局長が答弁?
今月12日、市議会条例予算特別委員会総会で質問に立ったのは共産党の中山郁美市議(早良区選出・当選3回)。政治とカネの問題に関する市長の認識を確認した後、「アジアリーダー都市研究会」及び同団体が開催した政治資金パーティー「九州・アジア未来塾」について市長の見解を問いただした。
中山市議が最初に尋ねたのは、市長の資金管理団体「アジアリーダー都市研究会」の平成23年から25年までの政治資金パーティーの開催数と収入額。市長個人の政治資金集めについての質問内容だったが、答弁したのは市の総務企画局長。“県のホームページに公表されているから私から答弁します”と断って、同団体が行った政治資金パーティーの内訳を説明した。市長の私的な愚行を役人が庇う、現在の市役所を象徴しているかのような一コマだった。
総務企画局長が答えるのは明らかに筋違い。市長とはいえ、政治団体の動きは役所の業務とは別個のものであり、切り離しておかねばならない。税金を使って県庁のホームページを開き、市長の政治団体の動きを確認するのが局長の業務とも思えない。ましてや、政治家個人の政治活動の内容を、役人が答弁するなどもってのほかだろう。でしゃばった総務企画局長も、それを許した市長も、公私の区別がついていない。
会費の額、答えぬ市長
次に市長が聞かれたのは、九州・アジア未来塾の概要。どのような集まりで、会費はいくらかというものだった。それに対する市長本人の答弁がこれ。
九州アジア未来塾につきましては、政治資金規正法第8条の2に基づき、私の資金管理団体が開催する政治資金パーティーであります。私の政治活動を支援するため、概ね四半期に一度、地元企業を中心に幅広い分野から数十名の方々にお集まりをいただき、勉強会や懇親会を催しております。その対価として会費を徴収し、開催に必要な経費を差し引いた残額について私の政治活動のために支出させていただいております。
“四半期に一度、地元企業を中心に幅広い分野から数十名の方々”を集めている、というのは正直な答えだ。平成24年、25年と九州・アジア未来塾の開催はそれぞれ3回。たしかに、“概ね四半期に一度”のペースといえる。毎回の参加者は50~60人程度だったとされ、HUNTERが独自に入手した参加者名簿によれば、これまで100を超える企業の幹部ら120人以上が参加していたことが分かっている。
問題は、会費がいくらなのか一切答えていない点。重ねて会費の額を尋ねられ、市長は次のようにはぐらかしている。
政治資金規正法に基づき、適正な手続きを行い、必要な届け出及び公表は行われております。
会費の額を明言しない頑なな姿勢には、それなりの理由がある。これまでのHUNTERの取材によれば、1回あたりの会費は、なんと「3万円」。現職市長の政治資金パーティーとはいえ、歴代市長時代には聞いたことのない高額な会費だ。じつは、この「3万円」と、市長自身が答弁で明かした「四半期に一度」のペースにカラクリがある。
参加者の話によれば、九州・アジア未来塾の1回の会費は、月1万円の計算で算出されているという。「四半期に一度」だから「3万円」なのだ。つまり、参加者は「月1万円」を積み立てているようなもの。会場には行かず、会費の振込みだけを行うメンバーもいるという。事実なら、「会員制」といっても差し支えあるまい。そうなると、事実上の献金。勉強会や懇親会への「対価」だという市長の主張は崩れてしまう。会費について聞かれた市長、口が裂けてもそのカラクリはしゃべれなかった。
逃げる市長とその理由
この政治資金パーティーに疑惑の臭いがつきまとっているのは、市の発注した業務を受注した企業の幹部らが参加し、市長側に政治資金提供を行っていたためだ。質問する側としては、当然、個別の企業について、参加の有無を確認することになる。
パーティー参加者について、情報を得ているという中山市議は、株式会社麻生、九電工、福住、BBDO J WESTなど、高島市政と密接な関係にある企業の名をあげて、参加の有無を確認していった。その度に、市長が下を向いて読み上げたのが次の文言である。
九州アジア未来塾に参加されている皆様の具体的な企業名につきましては、政治資金規正法でも公表の義務はなく、お答えは差し控えさせていただきます。
疑惑の企業名を挙げられるたび、この文言の繰り返し。ペーパーがどこに行ったのかわからなくなり、探すこと2度。2度目は、ペーパーが見つからず、文言を簡略化して答弁するというお粗末さだった。あわてた2度目に聞かれたのが、出資法違反の疑いが持たれている「プレシャスインベストメント」である。
4月の統一地方選を控え、現在の議員らによる市議会はこれが最後。市長は、政治資金疑惑に幕引きしたつもりだろうが、そうはいかない。市長とプレシャスインベストメントの関係を追うなか、重大な疑惑が浮かび上がってきている。なるほど、参加の有無を答えたくないはずだ……。