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出資法違反グループの関係者 福岡市長側に政治資金提供か

2015年3月11日 07:00

収支報告 福岡市の業務を受注している企業の幹部らが、高島宗一郎市長の資金管理団体が主催する政治資金パーティー「九州・アジア未来塾」に参加していた問題に絡み、出資法違反に問われているグループの関係者2名が同パーティーに参加していたことがわかった。市長側が政治資金の提供を受けていた疑いが濃い。
 事実関係の確認を求めたHUNTERの取材に対し、市長の事務所は沈黙。政治とカネの問題が国会を揺るがすなか、福岡市長にも疑惑の政治資金が渡っていた可能性が高まった。

出資法違反事件の関係者がパーティーに参加
 問題の政治資金パーティーは、市長の資金管理団体「アジアリーダー都市研究会」が年3回のペースで開催してきた『九州・アジア未来塾』。HUNTERが独自に入手した同パーティーの参加者名簿によれば、東京都港区の六本木ヒルズ内に登記上の本社を置く「プレシャスインベストメント」の社員とみられる2名が含まれていた(下はその部分)。名簿の記載では、一人がファンドマネージャー、もうひとりが営業部所属となっている。

パーティーの参加者名簿

 プレシャスインベストメントをめぐっては昨年3月、元本を保証するなどとして同社が違法に金を集めた事件で、出資法違反(預かり金の禁止)に問われた同社の従業員が熊本地裁において有罪判決を受けているほか、民事でも訴訟が継続中。プレシャスインベストメントへの出資契約は無効などとして九州各地の個人・法人が、同社の経営者らを相手取って約1億円の損害賠償を求める裁判を起こしている。同社が不正に集めた額は6億円ともいわれ、「詐欺」を指摘する関係者も少なくない。

六本木ヒルズ 同社について改めて取材したところ、登記上の本社となっている六本木ヒルズ(右の写真)の該当フロアには入居の形跡なし。会社に電話しても英語で留守番メッセージが流れるだけだった。社員らの携帯も、特定番号以外はつながらないように設定されている。典型的なダミー会社の手法。市長サイドとどのようなつながりがあったのかは不明だが、HUNTERが入手したのは、九州・アジア未来塾に“参加した人”の名簿。プレシャスインベストメントの社員とみられる2名が、パーティー会費を支払ったと見るのが普通だ。

沈黙する市長サイド
 9日、事実確認のため高島市長の事務所に取材を申し入れたところ、会計責任者である市長の政務秘書・木村哲晃氏は不在。応対した別の市長秘書に取材の趣旨を説明したところ、「確認しておきます」。記者の携帯番号を伝えて連絡を待ったが、11日朝まで回答はなかった。10日からは、市長の事務所の電話も、秘書らの携帯も連絡不能となっている。

疑惑の政治資金パーティー
 名簿市長の資金管理団体「アジアリーダー都市研究会」が福岡県選挙管理委員会に提出した政治資金収支報告書によれば、「九州・アジア未来塾」は平成23年10月に第1回目が開催され、24年に3回、25年にも3回開かれていた。収入は、毎回約150万円から200万円。参加者は50人から60人程度で、1回あたりの会費は3万円という高額なものだという。23年から25年までの3年間で、計1,222万円を集めている。

 九州・アジア未来塾には、これまで100を超える企業の幹部ら120人以上が参加していたことが明らかとなっており、そのなかには、市内の不動産会社「福住」、電気設備工事会社「九電工」、広告代理店「BBDO J WEST」や「電通九州」、旅行会社「JTB九州」、「JR九州」など福岡市から仕事を受注したり、市と利害関係を有すなどしている企業の幹部が多数含まれている。

 福住は、認可保育所「福岡中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の移転先の土地を市に売却し、1億3,000万円にのぼる疑惑の転売益を得た業者。九電工は「福岡市立こども病院」のPFI事業者構成員である。また、BBDO J WESTは、廃止が決まった仮想行政区「カワイイ区」の運営事業者。JTB九州については、昨年2月の東京出張をめぐる旅行命令書の改ざん疑惑をめぐって、最終的な航空券代の領収書を市長側に出していたことが分かっている。その他、平成25年12月に市が配信を開始した「徘徊高齢者捜してメール」のシステム提供会社「パイプドビッツ」(東京都港区)の役員らの名前も参加者名簿に記載されていた。

 福岡市が平成10年に制定した「福岡市長の政治倫理に関する条例」では、市長及びその資金管理団体が、道義的に批判を受けるおそれのある寄附を受けることを禁じており、業界関係者の政治資金パーティーへの資金提供が、この趣旨に反するのは明らか。加えて、出資法違反を犯した疑いがあるグループの構成員からも政治資金提供を受けていたというなら、まさに疑惑まみれのカネ集め。高島市長をめぐる「政治とカネ」の問題が、改めて注目を集めそうだ。



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