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福岡市長 米国出張中止の裏
― 傲慢市政の証明 ―

2015年1月 5日 07:30

高島市長 福岡市の高島宗一郎市長が公務での米国出張を中止し、昨年12月の総選挙に立候補した自民前職の選挙運動を行っていた問題で、新たに市民を無視した市政の実態が浮き彫りとなった。
 福岡市への情報公開請求で入手した10月起案の旅行公命令書などによれば、出張計画自体が市長選の結果を度外視した異例なもの。選挙をまたいだ上、1期目の任期ギリギリに設定されていた。
 非常識な日程を組んだあげく、親しい代議士の選挙運動のため一方的に出張を中止。その尻拭いを市民に押し付ける形となっていることもわかった。

帰福予定は任期満了日
 福岡市への情報公開請求で入手した文書によれば、問題の米国出張は福岡市の国家戦略特区絡み。11月30日に福岡を発ちシアトル経由でサンフランシスコ入り、同地で米国政府関係者やベンチャー企業経営者との意見交換に臨むほか、福岡市のPRなどを行い、6日に帰福する予定となっていた。下が、この米国出張の旅行命令書だ(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。

米国出張の旅行命令書

 日程を巡っての問題は二つ。まず、市長選の告示日は11月2日だったが、命令書の起案日は「10月14日」。選挙開始の20日前という時期に、投票結果を度外視して海外出張の予定を入れていた。

 次に、帰福予定日となっていた「12月6日」が、高島氏の任期満了日だったことが挙げられる。高島氏の1期目の任期は、平成22年12月7日から26年12月6日まで。一応、任期内に帰り着く計画になっており、市長選で落選しても米国出張は可能だった形。しかし、天候や航空機の状態によっては、帰国が遅れる可能性もある。そうした場合のことは考えていなかったということだ。

 実態を知ったある福岡市の幹部OBは、次のように話している。
「非常識。歴代市長なら、こんなバカなことは絶対にやらなかった。選挙を冒とくしているとしか言いようがない。特区絡みとはいえ、米国出張は喫緊の課題ではない。選挙が終わってから取り組むべきだろう。第一、スキャンダルでも吹き出したら、再選されない可能性もあったはずだ。市長選をまたいで組むべき日程ではない。選挙直前に、こんな傲慢な計画を立てること自体論外。アメリカ出張は、『どうせ勝てる』と踏んだ市長選の骨休めとしか思えない」

 市長選をまたいでの海外出張計画、しかも任期切れギリギリの日程――。勝ち戦(いくさ)を見越しての愚行は、有権者の審判を軽んじる姿勢が顕在化した証しだ。もし高島氏が敗れていたとすれば、何の意味も持たない出張計画だった。どう見ても不必要。「骨休め」との市OBの指摘は、中らずといえども遠からずといったところだろう。

出張中止 ― じつは選挙応援のため 
 それでは、いったん下された旅行命令が取り消されたのは何故か――。命令書の下段に記された理由は、次のようになっていた。
特区関連法の情勢急変』。(下が命令書の該当部分。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

特区関連法の情勢急変

 市側の説明によれば、11月18日に安倍首相が衆議院の解散を表明したため、特区関連法案の取り扱いが不透明になったからだという。しかし、この主張にはかなり無理がある。

 安倍政権が進める国家戦略特区については、一昨年12月に「国家戦略特別区域法」が成立しており、方向性は既に定まっている。福岡市はこれを受けて昨年の5月に特区指定を受けた。命令書に記された「特区関連法」とは、特区構想を進めるにあたって弊害となる規制の特例措置などを規定するため、改正もしくは整備される関係法のこと。衆院解散で国会への法案提出が遅れたのは確かだが、衆議院が解散したからといって、いったん法律で決まった国の戦略や福岡市の方針自体がそう簡単に変わるわけがない。市は、粛々と準備を進めるだけのことで、米国出張を中止する必要はなかった。『特区関連法の情勢急変』という出張中止の理由は、本当の理由を糊塗するための、苦し紛れの言い訳に過ぎない。

 HUNTERの取材過程で、市長周辺から漏れてきた出張中止の本当の理由は、“福岡1区で総選挙に出馬した自民前職の井上貴博氏を応援するため”というもの。実際、市長は衆院選公示日の12月2日、市役所の業務時間中であるにもかかわらず井上氏の出陣式に参加し、以後も選挙カーに乗るなどして井上氏の勝利に貢献していた。市長周辺の話が事実なら、市民に対する背信行為。辞任に値する愚行である。(下は井上氏の選挙運動に参加した高島市長。井上氏のFacebookより)

井上氏の選挙運動に参加した高島市長

尻拭いに市民の税金
 市民無視の出張計画を立てたあげくに、お友達の選挙運動で身勝手な中止――。最低の市長の尻拭いが、じつは市民の血税で行われることも明らかになった。

 問題の米国出張にかかる予定だった旅費は、ビジネスクラスの航空券代や日当、宿泊費など市長分だけで約110万円。随行職員の旅費などを加えれば、さらに額は増す。起案した10月14日の段階で旅行代理店を通じて航空券の手配をしており、11月21日に出張を中止すると、当然ながらキャンセル料が発生する。
 市の担当課に確認したところ、年明けの支払いになるというが、その額は数十万円。市長の愚行の尻拭いを、市民に押し付けるというのだ。開いた口が塞がらない。

 驕り、傲慢、不見識……。やっぱりこの市長にはつける薬がなさそうだ。



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