政務調査費をめぐる不適切な経理処理は、県議会だけではなかった。
福岡市議会の橋田和義議員(福岡市中央区選出・無所属・当選1回)が議長に提出した政務調査費の支出報告が、按分したとされる資金管理団体の支出と合致していないことが判明。政調費の報告とともに、政治資金収支報告書の記載内容まで疑われる事態だ。
取材に対応した橋田議員は、「調べてみないとわからない」と話し、自身の政治資金処理について、十分に把握していない実態をさらけ出した。(右上、橋田議員が提出した政調費支出報告の記述)
「按分」に疑問
下は、橋田議員が提出した領収書などの政調費支出を証明する書類に基づき、人件費、事務所家賃、光熱水費(電気、水道代)だけを抜き出してまとめた表だ。政調費は4月~3月までの年度主義だが、政治資金収支報告は1月~12月までのカネの出入りを明らかにするもの。このため、政調費の支出を月ごとに整理し、政治資金収支報告書の記載内容と対比できるようにした。
次に、橋田議員の資金管理団体「かけはし会」が平成23年分として県選管に提出した政治資金収支報告書の支出内訳のページ。赤いアンダーラインで示した数字は、上から人件費、光熱水費、家賃などの経常経費だ。
平成23年、橋田議員は「後援会活動と兼任している」として職員給与の2分の1を政調費から支払い、797,500円を費消している。橋田議員の後援団体は資金管理団体「かけはし会」だけで、そうなるとかけはし会の人件費支出は、最低でも政調費支出と同額の797,500円が計上されているはずだ。しかし、政治資金収支報告書にある人件費は687,500円。政調費の人件費より11万円も少なく、2分の1ずつ按分した形にはなっていない。
3分の2を、政調費でまかっているという事務所費や光熱水費を見てみると、家賃の政調費支出が381,101円であるのに対し、政治資金収支報告書の「事務所費」は72,222円。全体の3分の1どころか、政調費支出の5分の1にも満たない。政治資金収支報告の「事務所費」には、電話使用料や切手購入費なども入ることから、家賃支出以上の数字があがってくるのが普通だが、かけはし会の事務所費には、そうした経費を計上した形跡すらない。
一方、家賃同様3分の2を政調費から支出している光熱水費は、政調費支出46,334円に対し、かけはし会は23,691円。こちらはほぼ政調費の報告とほぼ一致する按分率になっていた。平成24年は、按分率に見合う政調費支出と政治資金支出で、大きな差異はなく、食い違う23年分と対照的だ。
平成23年の政調費支出と政治資金収支報告書上の支出を比較すると、人件費や事務所費における按分率「2分の1」や「3分の2」が、実態と違うことは一目瞭然。政調費の支出報告と政治資金収支報告書、どちらか一方か、あるいは両方の報告内容が、虚偽である可能性もある。
「わからない」では済まないが…
6日、橋田議員本人に取材の趣旨を伝え、事実関係の確認を求めたところ、当初は元秘書が、現在は橋田氏の夫人が経理処理を行っているため、「自分はわからない。調べてからお会いしたい」という。なんとも心もとない話だが、按分されたはずの政調費と政治資金が合致しない状況であることは確か。政調費の原資が税金である以上、「わからない」では済まされまい。人任せで逃げずに、市民に対する説明責任を果たすべきだろう。もうひとつ、余計なことだが橋田議員の政調費支出報告では「按分」が「安分」になっている箇所が複数あった。政令市の市議として、恥ずかしいことだと思うが……。