今月16日に投・開票が予定される福岡市長選挙の現職陣営に、衝撃が走った。
7日、党が推薦した現職候補の支援に動く自民党市議団の一人が、市議を辞め無所属で市長選に出馬した新人候補の個人演説会に応援で登場。参会した支持者らを驚かせた。
市議は、会派離脱も覚悟の上での行動とみられ、このまま新人を応援する構え。市議団に起こった分裂含みの動きは、現職陣営の結束を揺るがす事態といえそうだ。
くすぶる火種
自民党市議団の一人が新人候補の応援に登場したのは7日。中央区天神で開かれた個人演説会でガンバロー三唱の音頭を取り、現職候補との決別を印象付けた。新人の応援に回った市議は、会派離脱も視野に入れているとされ、志を同じくする自民市議らが同調する可能性もある。
自民党が推薦した現職候補陣営は、もともと一枚岩ではない。前線で戦うはずの自民党市議団が、現職派と反現職派に分かれて対立を続けてきており、やっと支援を決めたのが8月。現職の初当選を支えた与党会派の動きとしては、異例の展開だった。争いの火種は、くすぶり続けていたということだ。
前市議の市長選新人候補は、こうした状況に業を煮やした形で立候補を決意したと言われており、現職不信が顕在化したものと受け止められていた。それに次ぐ身内の反乱。選挙戦にどう影響を及ぼすかが注目される。
ある市議会関係者は次のように話している。
―― ようやく形になった、ということだろう。選挙前から自民党市議団が分裂する可能性があったのは確か。一時は10名前後が会派を離脱して、現職批判の姿勢を示すとの観測も出ていたほどだ。現職と市議団の溝は、報道されている程度の浅いものではない。食うか食われるのかの世界なんだから、もっと早く行動していてもよかったと思う。選挙中のこととはいえ、覚悟は立派と言うべきだ。(自民市議が応援についた)新人候補と市議は選挙区も同じ、高校の先輩・後輩という間柄。身近な先輩の応援ということで、腹を固めたのだろう。
別の自民党関係者はこう語る。
―― 北九州の政治家やら若い市長秘書が、幹部然とふるまうことに、耐えられないと漏らす連中は少なくない。出陣式で、ひな壇に並んだ麻生太郎や(自民党)県連会長、参議院議員は北九州や筑豊方面の方々ばかり。これが福岡市長選か、と思って見ていたのは私だけではないだろう。選挙の最中でもあり、現職批判をするつもりはないが、進むべき道が違うということで、別の候補者を応援する者が出るのは致し方がない。自由と民主主義を愛する党なんだから、事情は察してやるべき。現職推薦に異を唱えたのは、市議だけではなかったんだから。
優勢が伝えられる現職陣営だが、騒ぎの火種はまだ消えていない。