福岡市長選の投・開票まであと4日。選挙戦は終盤に向けて激しくなっているが、意外と知られていないのが選挙における身近な法令違反。各種選挙のたび、違反文書の頒布や掲示違反の警告が絶えないが、堂々とルールを破る候補者陣営には困ったものだ。
今回の市長選でも、街の景観を無視した看板の設置が横行している。そうした行為を行って平然としている陣営の候補者に、偉そうに政治や行政を語る資格などあるはずがない。本稿は、繰り返される愚行への警鐘である。
堂々と違反看板
右は今月8日、福岡市南区内の道路沿い、街灯の柱に括りつけられた「ステ看」である。ステ看とはつまり「捨て看板」のこと。高さ2mほどの枠組みだけの簡易な造りで、一度限りの使用に供されるのが普通だ。文字通り、すぐに捨てることを前提としている。
選挙時には、主として街中の電柱や街灯の支柱に括りつけて、「大物」が特定候補の応援に駆け付けることを周知するのに使われている。選挙では当たり前となった光景だが、じつは明らかな法令違反である。
「屋外広告物法」に従って制定された「福岡市屋外広告物条例」の第4条には、『広告物を表示し、又は掲出物件を設置してはならない』物件について、次のように定めている。
(1)橋りよう、トンネル、高架構造物及び分離帯
(2)街路樹及び都市の美観風致を維持するための樹木の保存に関する法律(昭和37年法律第142号)第2条第1項の規定により指定された保存樹又は保存樹林
(3)銅像及び記念碑の類
(4)公衆電話ボックス、公衆便所、郵便ポスト並びに路上に設ける変圧器及び配電器
(5)信号機、道路標識、歩道柵、路上に設ける車止め、道路の石垣及び擁壁並びにこれらに類するもの
(6)消火栓、火災報知機、防火水槽標識及び火の見やぐら
(7)電柱、街灯柱その他電柱の類で市長が指定するもの
(8)送電塔、送受信塔及び照明塔
(9)煙突及びガスタンク、水道タンク、石油タンクその他タンクの類
(10)景観法(平成16年法律第110号9第19条第1項の規定により指定された景観重要建造物及び同法第28条第1項の規定により指定された景観重要樹木
(11)前各号に掲げるもののほか、市長が特に必要と認めて指定する物件
写真のステ看は、市内南区から中央区にかけての幹線道路沿いに設置されたうちの1枚。ほとんどのステ看が、電柱や街灯に括りつけられている。麻生太郎氏が大物と呼べるのかどうか疑わしいが、違反は違反。電柱や街灯柱を勝手に使ったうえに、都市の美観を損ねているのは確かだろう。もちろん、取締りの対象であることは言うまでもない。
このステ看を設置したのはどこの陣営か、およその見当がつくだろうが、ルールを守ることのできない陣営に、政治や行政をより良くしていくことなどできまい。もちろん、市長選の候補者として、「知らなかった」では済まされない。ちなみに、前述した福岡市屋外広告物条例第4条の規定に違反して広告物を表示し、又は掲出物件を設置した者には、100万円の罰金が科せられることになっている。