福岡県議会自民党県議団の中村明彦県議(北九州市小倉北区選出、当選8回)が、実態と違う政務調査費(平成25年度から『政務活動費』)の支出報告を行っていたことがわかった。
中村県議が提出した政務調査費の支出報告では、一部の支出を「後援会と按分」と明記。一方、同県議の資金管理団体「中村明彦後援会」の政治資金収支報告書では支出を「0」と記載していた。
政調費の支出報告と政治資金収支報告書が合致しない状況は、少なくとも平成19年から24年まで続いており、同県議の資金処理の在り方に疑問符がついた形だ。
(写真は2日、福岡市長選の現職陣営出陣式に顔を見せた中村明彦県議)
「後援会と按分」――後援会は支出「0」
下は、中村県議が議長に提出した政務調査費及び政務活動費の人件費支出を証明する書類の一部。平成21年度から25年度までの5年間にわたって、人件費などに政調費・政活費が充てられ、「後援会と按分」と明記されている(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。人件費は45%を、駐車場代金(平成23年度から)は20%を政調費・政活費から支出している。
「按分」したという年度ごとに報告された政調費・政活費における人件費と駐車場代を、政治資金収支報告の会計期間に合わせ1月~12月の年ごとに区分けし、その合計をまとめると次のようになる。
・平成21年 2,376,540円
・平成22年 2,376,450円
・平成23年 2,437,635円
・平成24年 2,946,000円
・平成25年 2,541,000円
一方、同県議の資金管理団体「中村明彦後援会」が県選管に提出した平成21年、22年、23年、24年分(25年分は今年11月に公表予定)の政治資金収支報告書では、それぞれの年の人件費や事務所費といった経常経費や政治活動費の支出はいずれも「0」。会計上では後援会としての動きがない。(下は、平成22年分の収支報告書)
領収書などの支出を証明する書類が確認できた平成21年度から25年度までの政調費・政活費のうち、平成24年12月までの「後援会と按分」とされる人件費や駐車場代が、実際には後援会との按分ではなかったことが明らか。報告書の記載自体に虚偽の疑いがある。
中村県議――「私ではわからない」の無責任
中村県議の事務所に確認したところ、同県議の後援組織は「中村明彦後援会」だけであることを認めており、「後援会と按分」という政調費・政活費の報告書の記述は、現状では「虚偽」。詳しい話を聞くため、経理担当者に連絡を頼んだが、出稿までに連絡はなかった。
問題は、中村県議本人の無責任な姿勢だ。2日、福岡市長選挙の現職陣営の出陣式に来ていた中村県議に取材の趣旨を伝えたところ、「私ではわからない。担当者に話をしておきます」。兵庫県で起きた号泣県議の事件以来、政務活動費の不適切な支出が全国的に批判されてきたのは周知の通り。さらに、小渕優子前経産相や松島みどり前法相の辞任にまで発展した政治とカネも問題に注目が集まる中、自身の政調費・政活費や政治資金処理の実情がわからないという。無責任との批判は免れまい。
それでは、人件費や駐車場代を、政調費・政活費と按分する形で支出したのはどの団体か――調べていくと、法制度の抜け道を使った中村県議の政治資金処理の実態が浮き彫りとなった。