公費による東京出張を利用し、片道分の旅費を自己負担する形で「東京の夜」を満喫してきた高島宗一郎福岡市長が、8月以降の東京滞在を減らしたうえで、旅行命令書などへの「私用」という記述を控えていることが明らかとなった。
出張問題についての報道を受け慎重になったとみられるが、これまでの出張の在り方に問題があることを自ら証明した形。改めて市長の政治家としての姿勢が問われそうだ。
(写真は高島宗一郎福岡市長)
減った東京滞在
HUNTERは9月22日、福岡市に対し、高島市長の8月1日以降の出張命令書、領収書などを情報公開請求した。多忙を理由に開示決定期限を20日間延長され、対象文書が出てきたのは市議会決算員会が終わりに近付いた22日。それによると、8月1日から9月までの市長の出張は次の4回だった。
注目すべきは、東京滞在の少なさ。3回の東京出張で、都内に滞在したのはわずか2日間しかない。念のため、下にこれまでの東京出張のデータを整理した表を再掲してみた。表は、左から年ごとの出張日と出張目的、航空・鉄道・車の運賃、日当、宿泊料の順。3年半で東京への出張は78回。公務のため東京都内に滞在した日数は152日にのぼる。
表を見て一目瞭然となるのは、市長就任直後の平成22年12月から24年12月までと、25年1月以降の東京出張との違い。25年からの出張では、片道分の旅費を市長自身が負担し、東京の夜を満喫していたことが分かっている。平成25年1月以降の東京出張は38回。そのうち23回の旅行命令書に「私用」で支給額を削るという記載があり、プライベートを楽しんできた市長の姿勢が浮き彫りとなっていた。
一方、今年8月1日以降、少なくとも9月22日までは、市長の東京出張は3回。そのうち東京での宿泊は前述の通りわずか2日だ。東京宿泊を、公用と私用に区別していなかった平成24年の8~9月は4日間、私用の前泊・後泊を区別するようになった平成25年は7日間も東京に滞在していたことに比べると、回数減は明らか。出張利用のプライベート創出に、慎重になっていることがうかがえる。
旅行命令書から消えた「私用」
問題は、前泊した8月6日からの東京出張の旅行命令書。前日5日からの東京滞在だったが、旅費は復路分だけしか支出されていない。「私用」か別の出張に伴う前泊があったことになるが、6日までの公務出張はなく、この時の前泊は「私用」のはず。しかし、旅行命令書には、それまで明記されていた「私用のため」という文言はない。『起点は東京都に滞在』としか書かれておらず、意図的に「私用のため」という文言を記入しなかった可能性がある。“姑息”と言うしかない。HUNTERが市長の東京出張の実態を報じ始めたのが7月25日。8月以降に「私用」という言葉が影を潜めたのは、市長自身が問題を認識していた証しともとれる。
子どもも笑う市長の「言い訳」
9月の福岡市議会定例会や今月の決算委員会で、東京出張における私的な前泊、後泊を咎められた市長は、毎回次のような答弁を繰り返してきた。
―― 東京滞在の際には、政治的な活動も含め、企業誘致の可能性や福岡のシティセールス、また、国家戦略特区の獲得などについて、民間企業や各界のリーダーといったさまざまな方々と懇談や情報収集などを行っていたように思います。特に平成25年度に入ってからは、国家戦略特区の選定に向けて公務である東京出張の機会を捉えて、できる限り前泊や後泊等の行程を公務外で入れて、国会議員や関係省庁、民間企業やベンチャー企業家の方々、また、大学教授の皆さんなどの有識者など、さまざまなキーパーソンの方々との意見交換や情報収集、また、ネットワークの構築などによって福岡に特区がとれるように精力的に取り組んでいたところでございます。
私的な前泊、後泊は、すべて“福岡市のために有識者らに会っていた”と言いたいらしいが、ハッキリ言って虚偽に近い。福岡市にとって本当に必要な会談なら、堂々と公務扱いにするのが普通。わざわざ市長が旅費を個人負担する必要などない。相手の名前も公表できないという夜の日程が、福岡市のためになるはずがない。
事実、今年6月の東京出張では、公務終了の後、わざわざ延泊して芸人らの飲み会「福岡会」に参加していたことが明らかとなっている。
税金利用の遊興でしかないが、市長はこの件について議会で聞かれ、次のように答弁している。
―― 6月14日につきましては、福岡県出身の全国で多彩な活躍をされているアーティストや、また、芸能界の皆さんの集まりである福岡会にゲストとして呼ばれたものでございます。このような方々との交流を通して関係性を築き、また、今後、発信力の強い皆さんに地元福岡のことを積極的にPRいただくためのよい機会と捉え、参加したものでございます。後日のテレビやラジオでも、この福岡会に参加したアーティストや芸能界の皆さんが積極的にこのときの内容を発信されておりまして、福岡のクリエイティブ分野の盛り上がりなどが全国に発信をされています。福岡というところが非常に多彩な人材を輩出していることも改めて発信されたと思いますし、また、こういった皆様のお力をおかりして、これからも福岡の魅力などを積極的にPRしていただけることを期待しております。
子どもが聞いたら吹き出しそうな言い訳である。高島クン、気は確かですか?