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隠ぺい体質強める高島市政
情報公開条例は形骸化

2014年10月 8日 09:05

市役所 高島宗一郎市長の出張問題で揺れる福岡市で、情報公開請求に対する開示決定期間を延ばすことが常態化、市情報公開条例が目的に掲げた市民の「知る権利」を阻害する事態となっている。市は延長の理由として、複数の請求が重なっていることや業務量の増大を挙げているが、要は多忙を盾に情報開示を遅らせているだけ。どれだけ忙しいのか、実態確認のため月ごとの請求件数を確認したところ、これまでと変わらぬ状況であることが分かった。なぜ、情報公開をいやがるのか?
(写真は福岡市役所)

開示決定期限を次々に延長
 福岡市が情報開示を遅らせる姿勢を見せ始めたのは8月の中旬頃。高島市長の出張問題をめぐり、HUNTERをはじめ各報道機関や市議会側が関連文書の情報公開を求めていた時期にあたる。開示決定期限延長の理由は、一貫して≪一時的な業務量の増大、また、公文書公開請求が同時期に複数行われているため、当初の期間内に遂行するには、通常業務に著しい支障が生じるため≫となっていた。

 しかし、9月に入っても情報開示を遅らせる姿勢は続いており、次から次へと「公文書公開決定等の期間延長通知書」が送られてくる有り様。9月22日に請求した、8月1日から9月20日までの市長の出張に関する文書も、開示決定までの期間を20日間延長するのだという。しかし、2か月弱の間に行われた市長の出張件数は知れており、対象文書も旅行命令書や領収書などに限られる。これまでの福岡市なら、規定の7営業日以内に難なくこなせた作業量なのだ。

延長通知

 最悪だったのは、改ざんが疑われる「旅行命令書」の最終版と、再々精算時に市長から提出された航空券代の「領収書」の請求に対する姿勢。市は、わずか2~3枚しかない文書の開示決定を、規定の7日から20日間延ばすという前代未聞の暴挙に及んでいた。この時も延長の理由は≪一時的な業務量の増大、また、公文書公開請求が同時期に複数行われているため、当初の期間内に遂行するには、通常業務に著しい支障が生じるため≫。多忙だから「開示するかどうか」の決定自体を先延ばしするというわけだが、これは職務放棄に等しい。

「業務量増大」に疑問
 それでは、どの程度請求が増えたのか――過去3年度における情報公開請求の件数を市に確認したところ、次のような結果となった。

情報公開請求の件数

 今年9月に請求件数が増えているのは確かだが、「215件」という数字は過去の月間請求件数と比べて特別に多いというわけではない。1件あたりの情報量が多いという反論もあろうが、過去の事例からいうと長期間にわたって業務が滞るほどの理由があるとは思えない。

 情報開示を遅らせる理由は別にあると見るべきだろう。そう考えて取材してみると、ある職員から次のような指摘を受けた。

 ―― 市長周辺は、HUNTERが次に何を狙ってくるか戦々恐々としている。開示請求があるたびに、原課はすぐにご注進に及んでいるはずだ。そうなると、請求された文書をよくよく吟味させないと、また叩かれることになる。必然的に開示決定までの時間は長くなる。たった2枚程度の文書の開示決定を20日も延長するなど、これまで聞いたことがなかったが、市長サイドの締め付けがきつくなっている証拠だろう。とくに出張がらみの文書はそうだ。市長は、情報公開制度の重要性なんか分かっていないのだから。

 市職員の見立てが正しければ、開示決定までの間に市長にとって都合の悪い文書を割り出し、開示対象から省いている可能性も出てくる。実際、認可保育所「中央保育園」の強行移転に関する公文書の開示にあたっては、職員が市側のミスを示す文書を隠していたことが判明しており、“隠ぺい体質”を疑われても仕方のない状況だ。

高島市政で後退した情報公開の姿勢 
 福岡市がらみの不祥事案が発覚するたびに情報公開請求の件数が一時的に増え、開示決定が遅れることがあったのは事実だ。しかし、長期間にわたり、多忙を理由に情報開示を滞らせるようなことは一切なかった。積極的に行政情報を提供しようという意識が高かった時期には、同様の請求が頻発するケースで、市情報公開室が公開請求文書のコピーを用意して請求者に便宜を図っていたことさえある。だがこれは山崎広太郎市長時代までの話。吉田宏前市長時代には、こども病院の現地建て替え工事費を水増した折の「公文書」を廃棄するという形で真相を闇に葬っており、この頃から福岡市の情報公開制度は形骸化したと見られている。「情報発信」を公約に掲げ市長に就任した高島氏だが、吉田市政以上に情報公開の姿勢は後退している。その証拠が相次ぐ開示決定期限の延長なのだ。

背景に「出張」の不始末隠し
 福岡市情報公開条例は市民の知る権利を守るために制定されたものであり、『実施機関は、公開請求に係る公文書の全部又は一部を公開するときは、その旨の決定をし、公開請求者に対し、速やかに、その旨並びに公開を実施する日時及び場所その他規則で定める事項を書面により通知しなければならない』と定めており、開示決定期限は『公開請求があった日の翌日から起算して7日以内』。『実施機関は、事務処理上の困難その他正当な理由があるときは、同項に規定する期間を公開請求があった日の翌日から起算して20日を限度として延長することができる』という条文もあるが、これはあくまでも例外規定。市長の不始末を隠すため、意図的に情報開示を遅らせているとすれば、福岡市役所の病状はもはや末期というしかない。



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