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これが疑惑の「領収書」― 福岡市長東京出張問題 ―

2014年9月19日 09:45

 たった「2枚」の文書の開示決定を20日間も延長し、隠ぺい姿勢を露わにした福岡市。対象となったのは、改ざんが疑われる「旅行命令書」と高島宗一郎市長が最終的な精算を行うために提出した「領収書」だった。
 今年2月に精算が済んでいたはずの命令書は7月に書き換えられ、市議会開会を前にした今月2日から3日にかけて再度加筆されるという異常さ。7月にはなかったという領収書は、8月23日になって市長から提出されていた。
 命令書はHUNTERの記者が確認、領収書の写しは共産党福岡市議団に渡されており、いずれの文書も「公表済み」。なぜこれらの文書の開示決定を20日間も延長するのか?すでに領収書の写しを入手していた共産党福岡市議団の中山郁美市議を訪ね、問題の領収書を確認したところ、いくつもの疑問が浮かび上がった。(写真は福岡市役所)

深まる疑惑
 下は、共産党福岡市議団・中山郁美市議の資料請求に対し、福岡市が提出した問題の領収書の写しだ(同市議提供)。

領収書1

 この領収書の記述から、いくつかの疑問が生じる。

【日付】
 まずは領収書に記載された「日付」についての疑問。命令書が書き換えられ、再精算が行われたのは「7月10日」。しかし、この領収書が発行されたのは8月21日だ。なぜ、40日間も精算根拠となる領収書が出てこなかったのか?福岡市側は当初、記者の確認に対し「(市長サイドが)領収書を無くされたようです」と説明していたが、市議会ではまったく別の答弁を行っている。航空券を買ったのが市長の私設秘書で、いつも領収書をもらっていなかったため、支払いは3月31日だったが、領収書の発行が8月21日になったというのである。随分無理な言い訳。にわかには信じ難い。仕える政治家の買い物をして、支払いの証拠を残さないなどという杜撰な仕事をする秘書がいるだろうか。

 日付についてはもう一つの疑問がある。問題の東京出張は2月24日の起案。市長は即日上京しているが、この日、復路の航空券が市役所内の旅行代理店で購入されているのである(右下の領収書参照)。なぜ同じ日に、同じ旅行代理店で航空券を購入しなかったのか?この点について、きちんとした市側の説明はなされていない。

【エコノミークラス】
領収書3 次に「座席」の疑問。高島市長が東京出張する際に利用しているのはファーストクラスだ。実際、この出張の復路はファーストクラスだったことが、右の領収書からも明らか。しかし、新たに判明した領収書に記された往路の航空券代は31,770円。エコノミークラスの料金なのである。この航空券を購入する段階では、「私用」の上京だったためエコノミーにしたというのなら、とんでもない話。税金利用の旅はファーストクラス、自費ならエコノミーという市長の姿勢をし示すもので、まともな政治家のやることとは思えない。そもそも、8月発行の領収書は、本当に高島市長の利用分なのか?疑念は膨らむばかりだ。

【旅行会社】
 これまでの情報公開請求によって、市長が東京出張する場合の航空券は、すべて市役所内にある「西鉄旅行」で購入していたことが分かっている。しかし、この領収書は「JTB九州 福岡支店」の発行。平成22年から24年までの市長の政治団体の政治資金収支報告書を確認したところ、購入された航空券のほとんどが西鉄旅行からの購入。JTBでの購入は1件しか記載されていない。

 7月に行ったという旅行命令書の書き換えにともない再精算のための領収書が必要になったが、該当するものが無かったため、別の支出に関する領収書を再々精算の根拠に充てた――そうした疑いを持たれても仕方のない状況だ。

情報公開の恣意的運用―識者からも批判
 市側が開示決定期限を20日も延長するとしているのは、今回明らかとなった「領収書」と、再々精算が行われた時の旅行命令書。報じてきた通り、2枚の文書は公表済みで、いまさら公開するか否かを検討する理由など存在しない。こうした事態について、市民オンブズマン福岡の児島研二代表幹事は次のように話している。

 ひどい話だ。福岡市情報公開条例は、市民の知る権利を保障し、守るために制定されたもの。請求された公文書が存在する以上、速やかに公開することが義務付けられている。それを、多忙を理由に開示決定を遅らせるなど言語道断。恣意的な運用であることは疑う余地がない。役所が好き勝手に情報公開制度の運用を行うことを許してはいけない。
 開示決定期間の延長通知を出すにあたっては、決裁文書や通知文書を作成し、郵送する手間がかかっている。それに対し、公開対象の文書は2枚。写しをとるのに数分とかからないだろう。多忙を理由にした開示決定期間延長に、実は別の理由があると疑われておもおかしくない格好だ。



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