高島宗一郎市長の公費出張をめぐり、市による組織的な公文書改ざんの疑いが浮上した。
改ざんされたとみられる文書は、昨日報じたタクシーチケットの私的流用に絡むもの。市は、今年6月に情報公開請求でHUNTERに開示した市長の「旅行命令書」を加筆・修正し、日程前日の東京滞在を、私用から公用へと変更していた。チケットの私的流用を議会で追及されるのを恐れた市側が、市長の不正を隠すため無理やり辻褄を合わせた形だ。
HUNTERの取材によって、文書の改ざんを証明する事実が見つかっており、市長をはじめ、関与した職員らも公文書偽造に問われる可能性がある。
「旅行命令書」手書きで加筆・修正
下は、高島市長が今年2月25日から26日にかけて「成長戦略協議」のために上京した時の出張命令書。赤いアンダーラインで示したように、備考欄には2月25日が『私用で東京滞在中』であることが明記されており、精算時には往きの航空券代が支給されていない。これまで報じてきた「私用前泊」だ。そして、市長が正式な出張日程の前日である24日に「私用」で上京した折、羽田から都内までの移動にタクシーチケット(冒頭の写真)を使用していたことは、昨日の配信記事で明らかにした。
ところが福岡市は2日、HUNTERに対し、いったん開示した後にこの旅行命令書を書き換えていたとして、2枚の文書を提示した。前掲の命令書に加筆・修正されたものと、当初の命令書の一部。下が、その新たに加筆・修正された旅行命令書だ。
赤いアンダーラインで示したが、手書きで『東京都千代田区』や『2/24 』を記入し、公用のため『前泊』した形にしている。備考欄も、「公用前泊」に見合うように抹消や加筆がしてあり、旅費も「追給」で62,670円支払われることになっている。つまり、2月24日に市長が使用したタクシーチケットは、私的流用ではなかったと言いたいらしい。異例の公文書書き換えで市長の不正を隠したつもりらしいが、そうはいかない。結論から述べておくが、この書き換えは明らかに「改ざん」。公文書偽造の疑いが濃い。
文書改ざん 市側の主張
なぜ旅行命令書が書き換えられたかについて、市側の二つの部署は、次のように説明している。
【市東京事務所説明】
・HUNTERの記者に対する情報開示が済んだあと、共産党から市長の出張に関する資料請求があり、文書を精査するなかで、「これ(問題の旅行命令書に記された東京出張)は、公用での前泊だった」と気付き書き換えたと、市企画調整部が話している。
【市総務企画局企画調整部企画課】
・HUNTERの記者に対する情報開示が済んだあと、いろいろなところから市長の出張に関する情報公開請求があり、精査するなかで間違いが分かり、書き換えた。
じつは、市長によるタクシーチケット私的流用の記事を配信する前日(1日)の朝、HUNTERの記者が東京事務所に「私的流用がなかったかどうか」の確認を求めていた。この時、東京事務所側は「断じてない」と明言しながら、2月24日のタクシーチケット使用が私的流用だったことを指摘され、調べて返答すると態度を一変させていた。
昼過ぎになって再度確認の電話を入れたところ、東京事務所が言い出したのが上記の言い訳。HUNTERとしては、6月の情報開示の段階で示された東京出張に関する文書の写しを受け取っており、所定の料金まで支払っている。受け取った旅行命令書に記された記述がすべてであり、問題が生じてから「あれは違う」と言われても容認できるはずがない。開示された文書を書き直したなどという連絡は、この2ヶ月半一度もなかったし、そもそも問題の出張に関する旅行命令書を作成してHUNTERに開示したのは市総務企画局の企画調整部企画課。東京事務所の所管事項ではない。東京事務所が答えるべきは、「タクシーチケットの私的流用」があったかなかったかについてだけなのだ。そのため、所管違いであることを東京事務所側に伝えた上で、話を打ち切っていた。約2時間後、企画調整部企画課から連絡があったが、出稿間際であったため、一切話は聞いていない。
市長によるタクシーチケットの私的流用について2つのケースを挙げて記事を配信した2日、改めて企画調整部企画課を訪ねて話の内容を聞いた。同課の主張は≪HUNTERの記者に対する情報開示が済んだあと、いろいろなところから市長の出張に関する情報公開請求があり、精査するなかで間違いが分かり、書き換えた≫というもの。ちなみに、東京事務所側の言い訳と微妙に内容が違っているのは、東京事務所側が漏らした「共産党からの資料請求」という一言が、公文書改ざんとは別の、「守秘義務違反」という問題をはらんでいるからだ。この点については、記者が1日の時点で東京事務所側に指摘していたため、企画課が用心して「いろいろなところから」に表現を改めたと思われる。姑息と言うしかない。
この後、記者と同課との間で、「改ざん」の事実を証明するやりとりが行われることになる。