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福岡市長「釜山の夜」(下)― お相手の女性は!? ―

2014年8月26日 08:10

旅行命令(依頼)書 福岡市の高島宗一郎市長が、出張先の韓国・釜山で女性と一夜を過ごし朝食を共にしていた問題で、市長の相手が市関係者以外の女性だったと断定したのは、市への情報公開請求で入手していた市長及び随行職員の出張命令書や復命書を精査した上で、関係者に確認取材した結果である。釜山出張に関する一連の文書を見ながら、実態解明までの過程を明らかにする。

あわてた市長、声かけた「福岡県民」を無視
 女性を同伴していた高島市長の釜山での姿を目撃し、直接話しかけたのは邦人の旅行客グループ。取材に応じた彼らの話に基づき、釜山のホテル内であった状況を、振り返っておく。

 問題の出張は昨年2月。福岡市と釜山市の産学関係者が、経済連携の在り方を討議する「福岡―釜山フォーラム 第7回釜山会議」に参加するため、1日から2日にかけての日程で組まれたものだった。下が、随行職員の復命文書に記された市長のスケジュールである(ホテル名部分の加工はHUNTER編集部)。

フォーラム復命書-2.jpg

 1日の17時40分にホテルに到着して、翌日「金海空港」に向かうまで、市長がホテルから出ることはない。出張初日の歓迎晩餐会は、19時30分から21時30分までの予定だった。

 市長が目撃されたのは、この1日の深夜と翌朝。日本人とみられる女性と一緒だったという。2日の朝は、エレベーターから2人で降りてきたところを、複数の邦人客に見咎められていた。

 市長の行動を見ていた邦人らは、釜山観光のため全国から集まったメンバー。ロビー脇で、市長の顔を見知っていた男性数人が、市長に声をかけていた。
――「市長さん、市長さん。私たちも福岡から来ているんですよ」。
 市長に声をかけたのは、福岡県民だったのである。ところが、話しかけながら握手を求めた男性に、市長は一瞥を与えただけで、素通りしたという。

 この時、同伴していた女性はうつむいて通り過ぎており、瞬間立ち止まりかけた市長は、あわてて女性の後を追ったという。2人が入ったのは、1階ロビーの奥にあるレストランのVIP専用室。市長のすげない態度に立腹した男性が、行動の一部始終を確認し、写真を撮ろうとついて行っていた。その男性の話。

 エレベーターから2人で出てきた時点で、どんな関係か分かりますよ。すぐにピンときました。ロビーに出てからは、女性が市長の少し後ろを歩く感じ。友人が声をかけた途端、その女性は驚いたように、足早にレストランの方へ向かいました。奥さんという態度ではなかったですから、おふたりのご関係に確信を持ちました。土曜日のことでしたが、私は、“この市長さんは真面目に仕事してるのかな”と思って見ていました。

 友人にとっては、地元の市長だから、親しみを感じるのは当然でしょう。だから(友人は)話しかけて、握手しようと手を差し出した。それが無視ですよ。あまりの態度の悪さに、見ていた私の方が不愉快になった。市長が『まずいな』という顔をしていたので、よし、記念に市長と同伴女性とのツーショットでも撮ってやろうかという気になって後を追ったんです。あのホテルのレストランには、VIP用の個室があって、市長と女性はそこに入ったんです。

随行の市関係者―女性は2人
 この出張に関する公文書の記録をたどれば、1日の夜、高島市長が宿泊したのは、フォーラムの会場にもなっていた釜山市内の高級ホテル。市長の他、市総務企画局の部長と、通訳が同じホテルに泊まっていた。フォーラムに参加した市の職員は、市長と同宿した部長、通訳の他4人。そのうちの一人が女性の主査(当時)だった。下が、復命文書に記された福岡市側の参加者だ。ここでは、通訳の名前が黒塗り非開示となっており、男性か女性か分からない(職員氏名の加工はHUNTER編集部)。

フォーラム復命書-3.jpg

 まず、女性主査だが、市長と同じホテルには泊まっていない。市の旅費規程に従えば、主査の旅費等級が低く、「特等級」である市長とは支給される宿泊費の額が違い過ぎるため、1日の夜は釜山市内にある別の日系ホテルに宿泊していた。2日の朝、市長と朝食を共にしていないことは、主査(現係長)本人に確認済みである。

宿泊料の調整について 残るは通訳の特定。嘱託職員であるため復命文書では名前が黒塗りになっていたが、別の文書によって人物を特定することができた。

 通訳の名前が明記されていたのは、市長の出張命令書に添付されていた『宿泊料の調整について』。市長らが泊まるホテルの宿泊費が高額だったため、規定の支給額を増やすことを説明した文書だ(右の文書参照。赤いアンダーラインと矢印、名前部分の加工はHUNTER編集部)。復命文書では通訳の名前を黒塗りで隠しておきながら、ここではオープンになっている。それによると、この時の通訳は嘱託採用されていた韓国人女性だった。

 調べたところ、通訳本人は昨年の初め頃に韓国人男性と結婚。3月いっぱいで市の嘱託職員を辞し、帰国していたことが判明した。周辺を取材したが、昨年4月以降の女性通訳の足取りは途絶えている。ただし、福岡市の嘱託職員だった当時の写真が残っていた。2月2日の朝、高島市長に同伴していた女性の顔を見ている邦人客グループに確認を求めたところ、市長が同伴していた女性と通訳は、まったくの別人であったことが確認された。市長の相手が、市関係者以外の女性だったことは明らかだ。

 1日の夜、そして2日の朝は正式行事の合間とはいえ、「プライベート」の時間とは言えまい。市長は、公・私の区別がついていない。出張先での行儀の悪さは、前稿に記した通り市内部からも指摘が上がっていたこと。歴代市長の時代には、考えられなかったレベルの低さである。これで職員に綱紀粛正が迫れるか?――答えは言うまでもない。



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