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福岡市 出張疑惑の問題点

2014年8月21日 07:45

福岡市役所 福岡市のトップである高島宗一郎市長と、ナンバー2の大野敏久副市長に、相次いで「出張」に絡む疑惑が浮上した。市長は、東京出張を利用して、片道分の旅費を自己負担する形で東京の夜を満喫。大野氏はカナダ・トロント市への「観光出張」に約90万円の税金を費消していた。
 ともにファーストクラスあるいはビジネスクラスを利用。福岡市の厳しい財政事情を顧みぬ姿勢は、傲慢な市政運営の象徴ともとれる。顕在化した福岡市政の歪み……。それぞれの「出張」について、問題点を整理しておきたい。
(写真は福岡市役所)

東京出張 プライベートタイムの問題点
東京出張 平成25年1月~26年6月 東京出張を利用してプライベートの夜をひねり出してきた市長。平成25年1月から今年6月にかけての1年半で、市長が片道分の旅費を自己負担したのは、38回にのぼる東京出張のうち最低でも27 回。出張の前日か翌日を、プライベートにあてていた。正式な日程にある宿泊日の夜などを加えると、60回前後、月3回以上は「東京の夜」を楽しんでいた計算だ(右の表参照)。

 日帰りはたったの2回。予定では日帰りのはずの8回の出張に、私用での前泊を6回、後泊を4回も加えて、泊りの出張を無理やり作り出していた。日帰り予定に、私用の前泊と後泊を付け加えて、東京滞在を2日間延ばしたケースも2回ある。まさに「病気」だ。

 “片道分の旅費を自己負担したのだから、問題はない”という言い訳は通用しない。往きか帰りは公費、つまりは税金が使われており、市長のプライベートを税金で補助した形。この手法が許されて世に広まれば、全国の自治体で大変な騒ぎを引き起こしてしまうだろう。「公」と「私」は、厳然と区別されるべきもので、プライベートの時間が必要なら、いったん福岡に帰り、出張日程を終えてから改めて東京に向かうのが筋だろう。それが「公人」としての身の処し方だ。

 問題は、税金を私的利用したことだけにとどまらない。市政トップが福岡不在を続けた場合どうなるか――少し考えれば分かることだ。大きな災害や事故が発生した場合、市長不在がもたらすマイナスは計り知れない。緊急事態の時の司令塔は、紛れもなく「市長」。市の最高責任者が遠隔地にいれば、状況を正確に把握することも、判断を下すことも難しくなる。大規模災害や事件においては、膨大な量の情報がリアルタイムで飛び込んでくる。携帯電話やインターネットが発達した世の中とはいえ、いちいち転送していては事態に即応することはできないだろう。為政者に求められるのは「現場での陣頭指揮」。市長の不必要な東京滞在は、福岡市民にとってはマイナスでしかないのだ。

 しかし、市長には福岡市に腰を据えることの重要性が理解できていない。そればかりか、福岡にいる必要性すら否定していた。2012年12月28日の市長のブログ。高島氏は次のように記している。

 こんばんは、福岡市長の高島宗一郎です。

 今日は今年最後のブログ更新ですので、時々質問される内容や一部マスコミの報道で明らかな間違いがある部分についてお答えします!                 

―中略―

海外出張が多く市役所の業務がストップしている?
→海外も含め出張する際には当然、各局が出張の必要性をきちんと精査し、市にとって重要な事案について、私本人が参加しています。委員会で「市長の出張が多いので、市の業務が滞っているのではないか?」と質問した議員は、スマートフォンなども無い時代に市長室長をしていたことのある元市職員の議員で、今は彼の時代とは仕事の仕方が全く違います。出張期間中も手元のiPhoneやMacBookに通常通りメールが届きますし、業務に関してはそもそも各担当の副市長が責任を持って進めています

 市議会で、海外出張が多すぎることを咎められたことに反論したものだが、≪手元のiPhoneやMacBookに通常通りメールが届きますし、業務に関してはそもそも各担当の副市長が責任を持って進めています≫の一文が、市長の考え方を端的に示していると言えよう。『現場にいなくても仕事はできる』――これが高島宗一郎という政治家の姿勢なのだ。

 海外出張の多さを指摘した元市職員の市議に≪今は彼の時代とは仕事の仕方が全く違います≫と噛みついているが、昔も今も為政者に求められるものに変わりはない。必要なのは、市民の身近で市民の暮らしを見つめ、市民の息遣いを感じることなのだ。残念ながら、高島氏にはそれがない。≪業務に関してはそもそも各担当の副市長が責任を持って進めています≫とも述べている。あまりに無責任。副市長で市政運営が滞りなく進むのなら、市長などいなくても同じということになる。「そもそも」論でいけば、“副市長がいれば遊んでいてもいいのか?”と聞かざるを得ない。

 2001年2月、ハワイ・オアフ島沖で、愛媛県立宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」が、米海軍の原子力潜水艦に衝突されて沈没。同校の実習生4人を含む9人が犠牲になるという事件があった。この時の首相は森喜朗。ゴルフのプレー中だったが、事件の一報を受けた後もゴルフ場に居続けたことで、厳しい批判を浴びた。トップが遠隔地にいることの危機管理上の問題を浮き彫りにした事案だった。そして昨日、その森元首相と静養先でゴルフの予定だった安倍晋三首相が、豪雨のため広島市内に甚大な被害が出ていることを知りながら、プレーを続行したことが発覚。国民目線とかけ離れた、ボンボン政治家の姿を見せつけている。

 もし、東京の夜を満喫している時に、地元福岡で重大事故や災害が起きた場合、高島市長は対応できるのか?手元にあるというiPhoneやMacBookで事が済むのか?――「そうだ。大丈夫だ」と答えるようなら、高島氏に市長を続ける資格はあるまい。自己都合で東京滞在を増やす手法は、明らかに市民軽視の表れなのだ。

県警OB副市長に古巣からも厳しい批判
 県警OBから副市長になった大野敏久氏。この人事は高島市長が進めたものだ。類は友を呼ぶということか、二人とも出張時の航空機はファーストクラス(ANAはプレミアムクラス)かビジネスクラス。新幹線ならグリーン車だ。ともに税金を使って公務を行っているという感覚が欠如している。

 大野氏のカナダ・トロントへの出張は、どう甘く見ても「観光」が目的。無理やり出張を作り出したところは、高島氏の東京出張を膨らませる手法と通底している。副市長は時に市長に諫言し、暴走を止める役割も担っている。若い市長に仕える副市長なら、なおさら責任は重い。しかし、大野氏のカナダ出張の実態は、まさに「大名旅行」。庶民とっては「夢」に等しいビジネスクラスで、ふんぞり返るとは言語道断だろう。為政者は、より厳しく己の身を処するべきだろうが、部下がエコノミーに座るのを平然と眺めていた感覚は、理解に苦しむ。

 ある県警の現職警官が、大野氏のカナダ出張の記事を読んでこう漏らした――「県警の面汚し」。これは古巣の県警にだけ当てはめる言葉ではなく、福岡市にとっても同じこと。ある福岡市の幹部OBは、次のように話している。
「歴代市長が航空機を利用する時は、いつもエコノミークラスだった。出張に同行した時、『市民の目を意識しないと』と言われた当時の市長の言葉が忘れられない。高島さんや大野さんは、福岡市の良き伝統を壊すばかりで、市民のためにという意識がなさすぎる。経費削減の先頭に立つべき市長・副市長が、ファーストクラス、東京でのプライベート、観光旅行では示しがつかない。市民にも申し訳が立たないだろう。福岡市は病んでいる。いずれ市民が呆れるようなことが起きるのではないか」

 じつは、この元市幹部の予言、あながち外れてはいない。違っているとすれば、すでに「市民が呆れるようなことが起きている」という点だけだ。



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