政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
社会

「選挙公報」を否定 ― 福岡市長の無節操

2014年7月 4日 09:50

福岡市役所 為政者と民衆の間の隔たりが大きくなれば、独裁が生まれ、結果として歪んだ政治をもたらす。国も地方も同じ。日本はいつ戦争に巻き込まれるかわからない国になりそうだが、福岡市もおかしな方向に進みつつある。
 先月、福岡市議会の質疑を通して、市民を愚弄する市長の姿勢が露わになった。「選挙公報の記述は公約ではない」――政治家のものとは思えぬ暴論を展開したのは、マスコミ出身の若き独裁者、高島宗一郎福岡市長だった。

閉ざされた市長室 
 福岡市役所の9階に、市長室がある。廊下を挟んだ反対側には3人の副市長の部屋。以前は、エレベーターを降りてこのフロアへ、誰もが自由に行き来できた。しかし、最近になってガラスドアが締め切り状態となり、警備員に用件や訪問先を告げ、了承をもらわなければ通れなくなってしまった。歴代市長の時代にはなかった、息苦しい状況だ。風通しの悪さは言うまでもない。なぜこうも警備を厳重にしなければならないのか分からないが、高島氏と市民の乖離を示す象徴的な一コマと言えよう。

福岡市役所.jpg

有権者を愚弄する「選挙公報」の否定
 先月23日、福岡市議会で、共産党の中山郁美市議が保育行政に絡む高島市長の政治姿勢を追及した。今年4月に「待機児童ゼロ」を宣言し、公約を達成したとする市長。しかし、平成22年に行われた福岡市長選の選挙公報には、「未入所児童の解消」を明記していたからだ。「待機児童」とは、保育所への入所を望みながら定員等の関係で入所がかなわない子どもの総数。一方、“希望する保育所”が空くのを待っているのが「未入所児童」だ。未入所児童の解消を公約に掲げたのなら、待機児童をゼロにしても「公約達成」とは言えない。聞かれて当然。

 この質問に対する高島市長の答えは驚くべきものだった――「選挙公報は公約を書き写すものではなく、たくさんある中から切り取ってわかりやすく表現するもので、イコール公約ではない」。選挙公報に書かれた内容は、「公約ではない」というのである。これほど有権者をバカにした話は聞いたことがない。

 選挙期間中、候補者が自らの主張を有権者に伝える方法は限られている。街頭演説、個人演説会、郵便はがき、電話、そして選挙公報だ。とりわけ選挙公報は市内全域のほぼ全ての住民に配布されるため、市民が候補者を知るうえで最も重要視される印刷物。しかも税金を原資に作られたもの。そこに記された主張は、「公約」以外の何ものでもない。しかし、高島氏は「公約ではない」と明言したのである。選挙制度の否定であり、有権者を愚弄する逃げ口上と言えよう。

 念のため、問題の選挙公報を確認してみた(下参照。赤い矢印はHUNTER編集部)。たしかに、『未入所児童・特養ホーム待機者の解消』として、≪保育所未入所児童は柔軟に対応できる施設整備で解消します≫と記されている。「たくさんある中から切り取った」(市長答弁)ものであるなら、それだけ重要度が高いということ。これを「公約ではない」と本気で思っているのなら、高島氏は政治家失格。150万都市のトップに立つ資格はない。

選挙公報

 ちなみに、ローカル・マニフェスト推進ネットワーク九州が主催して同年10月17日に行われた候補者討論会(『福岡みらいづくり2010~マニフェスト型公開討論会』)で、高島氏が公表したマニフェストには、次のように記されていた(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。≪未入所児童1000人や入所待機高齢者7500人の解消≫――やはり「未入所児童」の解消を約束している。

マニフェスト

 選挙公報は選挙期間中、マニフェストは選挙前の時点で公表されたものだ。そのどちらにも、未入所児童の解消を掲げている。これが選挙公約でなくて、何が公約なのか?

問われる高島氏の政治姿勢
 じつは高島市長、当選直後の市議会で、今回と同じように公約をめぐっての政治姿勢を問われ、問題発言を行っていた。質問したのは民主党の田中慎介議員。公約が二転三転したことについて、市長の所見を問うたのに対し、答弁は次のようなものだった。

 選挙公約に関しての質問でございますけれども、選挙公約は、当選後に実施する政策を市民の皆様にお示しをするものという認識でございます。ですから、基本的に変えるものでないというふうに思っておりますし、市長に就任したということを受けまして、改めて公約の実現に向けて責任を持って実行していきたいというふうに決意をしている次第でございます。

 そして、私の公約に関する比較のお話ですけれども、9月20日に出馬会見をいたしました。そしていろんな考えもありました、いろんな意見も聞きました。そういったのを踏まえて、私が10月25日に発表をさせていただいた、それが公約でございます。この内容に関しては皆様にも発表していますし、それから私のホームページでも、これが私の公約ということで、いまだにそれは残して、しっかり皆様が見える形でお示しをいたしております。ですから、その10月25日に発表させていただいたものが私の公約というふうに御理解をいただきたいというふうに思います。以上です。

 高島氏が公約発表の記者会見を開いたのは、平成22年10月25日。これより前に訴えた政策は「公約ではない」と断言していたのである。断っておくが、これは議会での答弁。議事録も残っている。いまさらこの時の答弁を否定することはできない。

 前述したマニフェスト討論会は10月17日。「10月25日」より前のことなので、「公約ではない」となるのだろう。しかし、選挙は10月31日告示、11月14日投・開票の日程で行われている。選挙公報は、「10月25日」より後に市民に配布されたもの。高島市の議会答弁が嘘でなければ、そこに記された内容は「公約」でなければならない。選挙公報が公約の切り取りだとしても、「待機児童」と「未入所児童」を取り違えることはあるまい。高島氏の公約が「未入所児童の解消」だったことに、疑義をはさむ余地はない。

 自らが掲げた公約を、都合が悪くなると「公約ではない」と言う高島市長。市民との距離はひらく一方だ。二期目を目指すと見られているが、こんないい加減な人間の再選が許されるとは思えない。



【関連記事】
ワンショット
 47年前と変わらぬ雄々しい姿が、そこにあった。太陽の塔。...
過去のワンショットはこちら▼
記事へのご意見はこちら
記事へのご意見はこちら
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲