高島宗一郎福岡市長と市幹部が、飲酒絡みの不祥事を隠ぺいする方針だったことが明らかとなった。
先週末、福岡市の職員が飲酒の末に眠り込み、市が貸与しているタブレット型端末「iPad（アイパッド）」や会議資料を盗まれるという事案が発生。副市長や市長に報告が上がったものの、iPad盗難について公表しないことを決めたという。幹部を含む複数の市関係者が、この方針決定について認めている。
今年秋の市長選挙を控え、飲酒絡みの不祥事で騒がれたくない市長周辺の思惑が働いていると見られ、露骨な隠ぺいに市内外から批判の声が上がりそうだ。（写真は福岡市役所）
盗まれたiPad――原因は「飲酒」
iPadは市が特定の職員に貸与しているもので、価格は約80,000円。先週末、終業後に飲酒した市港湾局の職員が酔って戸外で寝込んだ隙に、iPadや会議資料、本人の名刺入れや財布などを入れたバックごと盗まれたという。またしても「飲酒」絡みだ。
市側の説明によれば、iPadや会議資料から個人情報などが漏れる心配はないとしている。だが、iPadは税金で購入したもの。「酔って盗まれました。ごめんなさい」で済む話ではない。会議資料にしても、簡単に外部に漏れてもいいというわけではあるまい。盗まれた物の中には、本人の名刺や業務で訪問する企業などの資料も含まれているといい、悪用されないとも限らない。すぐに公表して、部外者に迷惑がかかるのを防ぐのが当然の処置だろう。
隠ぺい
しかし、iPadや会議資料盗難の事実は、すぐに市幹部に報告されながら、「本件については公表しない」という方針が決められている。市関係者によれば、こうした事件性のある案件は、まず県警ＯＢで危機管理担当の大野敏久副市長に報告が上げられ、その後市長に伝わる仕組みになっているという。今回の件も、副市長や市長には報告済みだとされており、さらに、iPadや会議資料を盗まれた職員の上司も、事案の内容を市長が承知していることを認めている。
別の市関係者によれば、大野副市長を中心にこの事案についての対応が話し合われ、公表を控えることが決まったという。「市長公認で事が運んだ」と証言する市関係者もいる。事実、17日の定例会見で、市長はこの件について一切触れていない。
背景
隠ぺいの背景にあるのは秋の市長選。今年になって、市長周辺は、職員の不祥事を極端に警戒するようになっており、大野副市長からは「選挙前。絶対に刑事事件となるような不祥事は起こすな」といった厳命が下っているのだという。
飲酒絡みの事件が次から次の福岡市。その度に綱紀粛正を叫んできた高島市長は、2012年に「飲酒禁止令」を出し、問題を起こした職員を「腐ったミカン」とまで罵った。そのかいもなく繰り返される酒絡みの不祥事。選挙を前にまたしても「飲酒絡み」となれば、市長の威厳は地に落ちる。なんとしても不祥事の露見を防ぎたい市長とその周辺が、飲酒の末のiPad盗難を隠したということだ。
不祥事が続発する原因の一端が、職員から信頼されない市政トップにあることは疑う余地がない。議会開催中の業務時間内にフィットネスクラブで遊んでいる市長に、心服する人間などいるはずがないのだ。高島氏が職員を悪しざまに言えば言うほど、彼らの気持ちは離れていく。思い付きの施策ばかり打ち出し、問題が発生すると職員任せで逃げ出す姿勢にも、多くの職員が愛想を尽かしている。市長が、その職員たちの動向から目を離せなくなった状況は、自業自得というしかない。
今回の不祥事で職員が悪いのは確かだ。酔って公的な書類やタブレット端末を盗まれるなど言語道断ではある。が、こうした事案が続発する状況を招いている原因が、高島宗一郎という市長の幼稚な市政運営にあることを、福岡市民は知るべきだろう。それほど今の市役所は酷い。
ちなみに市長の懐刀といわれる大野副市長は、市長に批判的な報道機関や市民団体について、背後関係を調べていたらしい。が、この過程でまったく関係のない一般人の動きを嗅ぎ回っていたことが判明。さらに、この人物の名誉を棄損するような話を周辺に吹聴していたことが相手にばれて、激怒させているという。大野氏は、市役所と警察の区別がつかないようだが、ゲシュタポごっこも度が過ぎると市長の足を引っ張ることになる。
最後に一言。ＨＵＮＴＥＲの記者が取材した時点で、不祥事が漏れたことが市長周辺に伝わっているだろう。「詳細が判明してから公表するつもりだった」などという幼稚な言い訳など通用しないことを、付け加えておきたい。隠ぺいは「悪」なのである。
