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福岡・中央保育園 公表されない開園の遅れと定員割れ
背景に商業施設急ぐ市長の思惑

2014年6月 2日 07:55

 高島宗一郎福岡市長が移転を強行した市内中央区の認可保育所「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)の建設工事が遅れていた問題で、6月1日開園予定だった「第2中央保育園」の開園が、9日にずれ込む状況となっていたことが分かった。
 原因は、やはり工事の遅れ。工事業者は作業終了を8日としており、正式な開園は翌日の9日。先月中旬には、この事態が予想されていたが、市は開園の遅れについて公表していなかった。
 杜撰な計画を象徴するように、150から300に増やされた定員も、40名近くを余したままとなっている。

破たんしていた移転計画
 中央保育園の移転にともない、新たに整備されたのは2つの園。新「中央保育園」と「第2中央保育園」だ。移転工事の遅れから、4月開園に間に合ったのは新「中央保育園」だけで、「第2中央保育園」は6月1日オープンの予定となっていた。

 従来150名だった同園の定員は、移転にともない300名に――。このため、「第2中央保育園」開園までの間、閉鎖される予定だった旧中央保育園を使用し、二カ所に分かれての運営を余儀なくされる事態となっていた。新年度を迎えた4月、入園式も旧・中央保育園と新・中央保育園でそれぞれ行われている。

 新・中央保育園は開園したものの、準備不足のままぶっつけ本番的に保育を開始。園児らが園舎に入る通路の真横を、工事車両が行き来するという危険な状況が2カ月間続いていた。災害時避難の安全確保は、無視されたのである。子どもを置き去りにした時点で、移転計画自体、破たんしていたと言っても過言ではあるまい。

開園の遅れ公表せず
 先月30日、新中央保育園を訪ねたところ、園庭奥の「第2中央保育園」に工事業者の姿(下の写真)。園の関係者によれば、開園は9日になるという。開園は6月1日の予定だったはず。園側に断わって、業者に工事終了時期を尋ねると、「8日で終わります」。建物自体の引き渡しは5月中というものの、工事は終わっていないということだ。しかし、福岡市は、「第2中央保育園」の開園が遅れることを、一切公表していない。13億円もの公費を投入した事業でありながら、無責任というしかない。

園庭奥の「第2中央保育園」に工事業者の姿

定員割れ
 福岡市が中央保育園の移転事業に神経を使っていたのは4月1日まで。開園すればこっちのものとばかり、HUNTERの同園の移転に関する情報公開請求を3月31日日まで延長するなど、隠ぺいやごまかしを重ね続け、偽りの「待機児童ゼロ」を発表したとたん、中央保育園に関する情報発信はピタリと止んでいた。誇らしげに待機児童ゼロ宣言を行った高島市長だったが、目玉であるはずの中央保育園は「定員割れ」。260人程度しか入園しておらず、中には一度も登園しないまま退園した子どが数名いるという。

子ども置き去りで開園を急ぐ理由
 常識的に考えれば、建物が完成した後、一定期間を避難経路の確認や施設のチェックに充てるのが普通。それから「開園」という運びだろう。しかし、4月の新「中央保育園」の時は工事終了から1日で開園。十分な安全対策もなされぬまま、ドタバタと保育を始めている。「第2中央」の開園遅れも胡散臭い。園側は、開園時期の遅れを「新施設に慣れる時間をとったため」と説明したが、前述した通り、業者はあっさりと工事の終了を「8日」と認めている。その後に慣らしの期間を設けるべきだが、今回も工事終了の翌日に開園という状況だ。工事の遅れで開園が遅れることを隠したい市側の意向が働いたと見るべきだろう。

 なぜ子どもの安全を軽視して開園を急ぐのか――?取材するうち、ある市関係者から次のような話が飛び出した。
「市長は、早く中央児童会館の建物を壊して、念願の商業施設の建設にかかりたいだけなんですよ。(事業者である)西鉄との関係もある。そのためには児童会館に併設されている中央保育園をどかさなきゃいけない。(保育園を)『早く出せ』という指示が出てるんですから。4月開園を急いだのは待機児童ゼロの公約を達成するためですが、最大の理由は商業施設。もともと、商業施設を作るために児童会館も保育園も追い出せと言った市長ですからね。開園が遅れるということは、それだけ商業施設の建設が遅れるということ。子どもの安全など眼中にない市長が、開園の遅れを許すはずがない。形だけでも開園させ、旧園舎や児童会館を壊すことしか頭にない」。

保護者から怒りの声 
 事実なら呆れた市政というしかない。こうした実態に、在園時の保護者から厳しい批判の声が上がるのは当然だろう。

「今更新たな疑惑が出てきても何も驚きませんが、善良な市民、保護者をここまでコケにする神経が理解できません。正式開園の日程が中途半端だと思ってましたが、やっぱり裏があったんですね。福岡市がやりそうな事です。そもそも無理なプロジェクト。結局、何一つまともに進んでない」(在園児の保護者)。

「工事が6月1日に間に合わないとわかっているのに、表だっては保護者と先生が慣れる期間が必要だと言い繕っただけでしょう。慣れる期間を設けて欲しいと要望したのは保護者側ですが、工期をその慣れる期間にすり替えようなんてもってのほか。工事が終わって、しっかり一定期間を設けてもらわないと困る」(別の在園時保護者)。

「4月の一部開園でもVOC検査も何もせずに強引に開園させ、今度は何が何でも6月に開園しようとした結果。1日でも早く児童会館を取り壊したいのだろうけど、本末転倒な話。引き渡しも出来ていない施設を消防は検査済とし、市の保育課も検査済とする。そんなバカなことがなんでまかり通るのか不思議で仕方がない。園児も保護者も保育士もみんな置き去りです。一体誰のための行政なのでしょうか」(同)。

 待機児童ゼロは高島市長の公約。その実現のために利用された中央保育園は、風俗街の中に移転させられたあげく、最後の最後まで市の杜撰な計画につき合わされた形だ。子どもを置き去りの数合わせ事業で残ったのは、土地取引の疑惑だけ。商業施設建設を急ぐため、安全を無視して開園の格好だけつけさせたのなら、この市長は“子育て世代の敵”ということになる。



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