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NHK受信料取り立て ― 「あなたにとってはよろしくない話になる」で恫喝

2014年6月19日 09:00

NHK 《かかってこいNHK》――そう書いたら本当にかかってきてくれた。今年3月、NHKの受信料不払いを続けているHUNTERの記者に、「法的措置」をチラつかせて恫喝した取り立て屋とのやりとりを報じたが、今度は別の取り立て屋が、暴力団まがいの手口で支払いを迫ってきた。
 会長も経営委員も右翼的な体質のNHK。受信料の取り立てをNHKから委託された業者も、同じ穴のムジナばかりということらしい。

また来たNHKの取り立て屋
 16日の夕刻、次の原稿を出稿するため、苦手なパソコンと格闘していた記者宅のインターホンが鳴った。“どなた?”と聞くと、ドア越しにボソボソと男の声。開けてみたら、首から社員証のようなものをぶら下げた若者が立っている。もう一度“どなた”と問えば「NHKの者です」とキッパリ。性懲りもなく、また受信料の取り立てだ。

 “何か?”――問いかける記者に若者は言う。
「現在、受信料の支払いが滞っていることはご承知ですよね?このままですと、あなたにとって……」
 『あなたにとって』の後の言葉は察しがつく。いったん会話を打ち切って短パンだけの服装をおなすことにし、ついでに録音の準備もした。やりとりの経過は以下の通りだ。(取り立て人は「NHK」と表記)

 記者:もう一度最初から。どうぞ。
 NHK:このままお客様がご滞納を放置されてしまいますと、あなたにとってはよろしくない話になる可能性がございましたので、本日、そうならないように私の方が直接お伺いさせていただいたと……。

 記者:『よろしくない話』とはどういう意味か?
 NHK:過去分一括請求になってしまいまして、お客様にとってのご負担というものが大きくなってしまいますので……。ここでお支払いしていただいた方が……。

 記者:その前に、『よろしくない話』とは何か?脅しているのか?
 NHK:別に脅してるわけではないんですね。ただ、まあ、ご請求書の中味を見られたことはありますか?

 記者:見ている。
 NHK:そうなってしまいますと、お客様のご負担というのも大きいじゃないですか。

 記者:別に。負担が大きいから払わないのではない。前回来たNHKの方に話したはずだ。
 NHK:ま、そうですね。一応、記録に残ってるものはですね……。

 記者:どんな記録になっているのか?
 NHK:すいません。細かいところまでは、ちょっと……。

 記者:それも聞かずに、ここに来ているのか?
 NHK:……。

 記者:物騒な発言をした会長や経営委員が辞任し、国営放送らしい姿に戻れば、すんなり受信料とやらをお支払いしますと言ってある。状況が何も変わっていない以上、話すことは何もない。そもそも、あなたは最初にNHKの者ですと言ったが?
 NHK:○○と申します。

 記者:○○さん。あなたの会社は?
 NHK:株式会社グッドスタッフと申します。

 記者:『NHKの者』ではないだろう。何の会社か?
 NHK:まあ、会社は会社です。

 記者:何が言いたいのか?よろしくないことになるぞと言いに来たのか?
 NHK:過去分の一括請求ということになりますので……。

 記者:だから、請求は承知している。
 NHK:これ以上放置されましても、金額が増えていってしまうじゃないですか。

 記者:増えていい。払わない理由も、NHKの人間に説明している。
 NHK:いいんですか?

 記者:法的措置結構。裁判やりましょうと言っている。
 NHK:あー。そうですか。

 記者:あなたは『NHKの者』ではない。『委託を請けた会社の者』、だ。最初から間違っている。
 NHK:はい。

 記者:もうひとつ。『あなたのためによろしくないことになります』。これは脅し。
 NHK:私はもう帰ります。

危ないNHKの体質
 『よろしくない話』になるぞと脅かし、受信料を払えば助かるのだという。脅しておいてカネで片を付けようという手口は、まるで暴力団のそれ。調べてみたところ、『NHKの者』が所属しているという「株式会社グッドスタッフ」は、東京都に本社を置く人材派遣の会社だった。前回来た取り立て屋は、NHKから受信料徴収を委託された「九州総合サービス」(福岡市博多区)という九州電力関連企業の社員。この時は、「法的措置」を恫喝の材料にし、支払いを強要してきた。会社こそ違うものの、取り立ての手法は似たり寄ったりである。NHKの悪い体質が、業務委託先の企業にまで乗り移ったか、はたまた業者の質が低かったか……。いずれにせよ、お粗末であることに変わりはない。

 会長の籾井勝人氏、経営委員で作家の百田尚樹氏、同じく経営委員で大学教授の長谷川三千子氏。公共放送の幹部としては見逃せない問題発言や情報発信を行ってきた面々が、いまだにNHKに居座り続けている。18日には百田氏が、静岡市で開催された講演会における参加者との質疑応答で、「日教組は日本のがん」と発言。さらに「南京大虐殺はなかった」「従軍慰安婦はうそ」などと持論を展開したという。

 籾井氏が会長就任会見で放った「暴言」が、受信料不払いの拡大につながったことは、周知の通りだ。その時の従軍慰安婦に関する発言は、次のようなものだった。
 ― 従軍慰安婦は、「戦争をしているどこの国にもあった」
 ― 「韓国が、日本だけが強制連行したように主張するから話がややこしい。それは日韓基本条約で国際的には解決している。蒸し返されるのは おかしい」

 NHKの経営委員は、会長を指導する立場にある。そのひとりが、会長以上に過激で偏った発言を行ったことは、籾井問題への反省の無さを示している。これが放送法で「不偏不党」を義務付けられた放送局の実相であるとすれば、やはり受信料を支払ういわれはない。



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