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驕るNHK 受信料支払い拒否に「法的手続き」で恫喝

2014年3月19日 08:05

 会長や経営委員といった上層部の相次ぐ暴言で揺れるNHK。非常識が蔓延したのか、同局の取り立て部隊が、受信料支払いを拒むHUNTERの記者を、「法的手続き」という文言で恫喝するという、面白い事態となった。
 傲慢な手法と、相次ぐNHK幹部の問題発言に抗議した記者に対し、NHKの委託を受けているという取り立て屋は、籾井勝人会長の暴言について「私的な発言で何の問題もない」と明言。訴訟を受けて立つとした記者に、「NHKにその通り報告する」と開き直る姿勢を見せた。

払いませんよ!受信料
 HUNTERの記者は、長年NHKの受信料を払っていない。理由は簡単。同局が報道機関として、やるべきことをやっていないからだ。同局が流すニュースは、お役所発表が基になるものばかり。税金の無駄遣いや政治家、役人、企業の悪行について、自ら掘り起こして問題提起するケースなど皆無に近い。

 国民の受信料で成り立っている以上、どの報道機関にも増して厳しく権力側と対峙すべきだが、HHKにその姿勢は見られない。そればかりではない。過去には、当時官房副長官だった安部首相の圧力を受けて、従軍慰安婦を扱った番組の内容を変更したり、問題発言(神の国発言)で窮地に立った森喜朗元首相に、会見乗り切りのための指南書を示すなど、権力側との癒着を示すケースが目立っていた。

 NHKは、豊富なカネとマンパワーを使っての番組作りはお手のものだが、もともと国民目線で権力に切り込もうという考えは持ち合わせていないのである。そんなところに受信料を払ういわれなどない。

 ところが数年前、記者の不在中に、NHKの受信料取り立て部隊の甘言に乗った家人が、受信料支払いの契約を結んでしまった。しかも、居ないはずの記者の名前で。領収書に気付いた時は後の祭りで、しっかりと1回分を支払っていた。記者が翌月から支払いを拒否したのは言うまでもない。一度、NHKの取り立て部隊の訪問を受けたが、きっぱりと支払いを拒否していた。

「放送法」盾に支払い強要
 状況が変わったのは昨年暮れのあたりだった。安部首相が推した作家の百田尚樹氏や大学教授の長谷川三千子氏といった極右に近い方々が、NHK経営委員に就任したころから、記者宛てに受信料支払いを催促するハガキが送られてくるようになった。記者は当然これを無視。すると、今月になって、NHKが恫喝作戦に打って出た。まず送られてきたのは2枚の立派な文書。要は滞った受信料を払えという内容だ。「受信料Q&A」なる文書には、次のように「法律」を盾にした脅しの文句が並ぶ。(下が「Q&A」。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

受信料Q&A

曰く――受信設備を設置した者は、協会とその放送についての契約をしなければならないと、放送法が定めている。

曰く――日本放送協会放送受信規約は、「放送受信契約者は、…中略…放送受信料を支払わなければならない」と定めている。

曰く――支払わない場合は、法的手続きによりご契約・お支払いをいただく。

 ご丁寧にも、受信料未払いに対する取り組みについて、再度段階的な解説をし、最後にこう記している《裁判所を通じた法的手続きの実施

 受信料を支払わなければ、裁判所を使って「法的手続き」を行うのだという。面白い。徹底的に無視だ。

電話で恫喝
 次はどう出るかかと待っていたところ、15日土曜日の正午ごろ、記者の不在中にNHK側から電話があったという。取り立てである。電話に出た家人に対し、取り立て屋は、次のように話していた。

・今日、集金人が近所まで行っている。2,000円でもいいから、入金してもらいたい。
・入金しなければ、法的手続きをとる。

 もともと受信料契約は、記者の不在中に勝手に行われたたもの。契約した覚えなどない。しかし、契約者が記者本人になっている以上、NHK側が行う最終的な支払い意思の確認は、記者に対してでなくてはなるまい。

 家人は、記者に聞かねば、払うか払わないかの回答はできないと何度も言ったらしいが、取り立て屋は、「払わないと聞いた」として、記者本人への意思確認を拒否していた。

 取り立て屋からの電話の10分後。着信記録にあった電話番号に折り返したが、誰も出ない。NHKのお客様センターとやらも、時間外を知らせる音声が流れるだけだ。どうやらこの電話、NHKからのものではなかったようだ。

 すると翌日朝、着信記録に残っていた番号から、記者の携帯に電話が入った。こちらの電話番号が記録に残っていたので、かけてきたのだという。以下、記者と取り立て屋のやり取りの概要だ。

 ―― 留守中に電話をもらったらしいが。
 NHK 受信料の支払いの件で、NHK本局の方から、放送法第64条に基づき業務受託を受けております、九州総合サービスの○○と申しますが、余裕がありましたらお支払いの方をお願いしますということで、ご主人様がご不在だったもので……。

 ―― 昨日の話の記録を見ると、法的措置がどうのこうのということらしい。私のことは、「話を聞いたから結構です」ということだったらしいが、私はあなたと話したことはない。
 NHK 今回は、お支払いはしないという意思表示がありましたので、その旨、NHKの方には―。

 ―― いや、意思表示は誰がしたのか?
 NHK 奥さまです。

 ―― 契約者は誰か?
 NHK えーっと、ご主人さまです。

 ―― それなら、私に聞くべきではないのか?
 NHK ご主人様か、もしくは奥さまに対して、今回、私ども業務受託、NHK本局の方からですね……。

 ―― 本人じゃなくてもいいのか?
 NHK ええ、配偶者でも問題ございません。

 ―― それで、法的手続きが何だと?
 NHK お支払いされないとおっしゃったので、お支払されない方に対しては、法的手続きなんかも、NHKの方で、ご存じかもしれませんが、やっておりますので、とお伝えしました。正しいことを正しくお伝えしております。

 ―― 聞くが、NHKは正しいことをやっているのか?
 NHK 存じませんが、何か?

 ―― NHKの会長や経営委員が、何をおっしゃって、どういう姿勢であるのか、知っていてこういう取り立てをしているのか?
 NHK 何ですか?NHKの会長ですか?あ~、私的な発言でなにかここ最近、世間をお騒がせしているようですが

 ―― 私的な発言で騒がせた?
 NHK NHKの見解ではないですよね。私的な発言というようなことで……。

 ―― 会長としてモノを言ったら、それはNHKの見解だろう。
 NHK それが何か?それが何か、問題があるんでしょうか?もう、支払い拒否ということで処理しておきましたから、結構ですよ。

 ―― もちろんある。もともとNHKの体質に批判的だったから、受信料の支払いを拒否してきた。そこに会長発言だ。支払い拒否の理由を述べているのだから、きちんと人の話を聞けばどうか。
 NHK お電話口で、ご主人さまにお支払いの意思がないとうかがったので、それはそれで結構ですよと。

 ―― 恫喝じゃないか。
 NHK 恫喝ってどういうことですか。

 ―― 恫喝だろう。法的にやるぞという脅しじゃないか。しかも、契約当事者の私ではない人間に―。ところで、私的な発言で問題ないというが、そういう姿勢で取り立てをやっているのか?
 NHK 取り立てではございません。

 ―― いや、あんたの姿勢を問うている。NHKには反省はないのか?それで取り立てができるのか?
 NHK 結構ですよ。もう処理は終わっているので。

 ―― 訴えてみたらどうか?
 NHK ご希望ですか?

 ―― 当たり前だ。そちらが先に言ったこと。やってみればいい。
 NHK その旨、局の方に伝えます。失礼します。

取り立て屋は「九電」の関連会社
 会長や経営委員らの影響を受けているのか、ずいぶん乱暴な手法である。契約者本人の話も聞かず、「処理した」という。これだけ問題視されている会長発言を、「私的発言で問題ない」とまで言い切る。世間をなめているとしか言いようがない。一体どんな連中なのかと調べてみた。

 NHK受信料の取り立てを行っていたのは、「九州総合サービス」(福岡市博多区)。電気の検針業務や電柱敷地調査業務、水道検針などを請け負っている業者で、NHKの受信料収受も行っている。主要な取引先は九州電力。九電は同社の大株主にもなっている。なんだ、九電の関連企業か。それなら親方日の丸的な物言いも理解できる。世間の批判など、歯牙にもかけない連中ということだ。

見逃せぬNHK幹部の暴言
 ここで再度、NHK会長らの問題発言を列挙しておきたい。

 まずは籾井勝人氏。就任会見で放った暴言は以下の通りだった。
― 従軍慰安婦は、「戦争をしているどこの国にもあった」
― 「韓国が、日本だけが強制連行したように主張するから話がややこしい。それは日韓基本条約で国際的には解決している。蒸し返されるのは おかしい」
― 「日本の立場を国際放送で明確に発信していく、国際放送とはそういうもの。政府が右と言っているのに我々が左と言うわけにはいかない」
― 特定秘密保護法については、「通ったので、言ってもしょうがないんじゃないか。必要があればやる。世間が心配しているようなことが政府の目的であれば大変だが、そういうこともないのでは」

 一連の暴言が問題となった後も、籾井氏は撤回と謝罪を繰り返しながら、その都度「自分は悪くない」という態度をとり続けている。
  
 最低の会長を選んだ経営委員もまた最低。長谷川三千子経営委員は、象徴天皇制を否定し、百田尚樹経営委員は、都知事選候補を「クズ」呼ばわりした上、「1938年に蔣介石が日本が南京大虐殺をしたとやたら宣伝したが、世界の国は無視した。なぜか。そんなことはなかったからです」「極東軍事裁判で亡霊のごとく南京大虐殺が出て来たのはアメリカ軍が自分たちの罪を相殺するため」などと発言していた。NHK上層部は、極右のたまり場と化している。

報道失格
 問題は、幹部による一連の問題発言について、NHKがきちんと検証報道を行っていないことだ。それどころか、同局が公表した会長会見の要旨は、編集ではなく、改ざんに近い行為でごまかされていた。

 特定秘密保護法についての記述では、実際のやり取りの中の「(法案が)通ったので、言ってもしょうがない」が省かれていた。また、従軍慰安婦についての発言からは、「韓国が、日本だけが強制連行したように主張するから話がややこしい」の「韓国が」が消されていた。ドイツ、フランス、オランダについての発言に至っては、スッポリと抜け落ちており、発言全体のトーンを落とした形だ。「要旨」だからこれでいいというわけにはいくまい。まがりなりにもNHKは報道機関。であるなら、物議を醸している会長発言を、一言一句あますことなく、正確に公表すべきだった。しかし、NHKはそれさえできない。公共放送としても「報道機関」としても、失格ということなのだ。

広がる不払いと放送法の問題点
16日 西日本新聞の朝刊 今月16日、西日本新聞の朝刊に「NHKへ抗議の不払い」と題する記事が掲載された(右、西日本新聞3月16日朝刊から)。 籾井会長らの言動に反発し、受信料の不払いを表明する視聴者が増えている現状を伝える内容だ。まったく同感。知り合いのジャーナリストも、同様の理由で受信料の自動引き落としを止めたという。そうした中、NHKの取り立て部隊は、傲岸無礼な手法で受信料の取り立てを行っている。

 NHKの強引な受信料取り立ての根拠は、「放送法」にある。しかし、同法の規定は違憲の疑いが濃い。テレビがあるだけで、NHKと契約をしなければならないという規定は、思想信条の自由を保障した憲法とは相容れない。放送受信契約者が、放送受信料を支払わなければならない、という日本放送協会放送受信規約も身勝手すぎる。テレビがあれば契約が当然という規定自体が間違いなのだ。自由主義を否定するNHKの存在こそ、問われるべきだろう。内外からの批判を招いた上層部を野放しにするようなNHKが、国民にとって必要な組織だとは思えない。

 かかってこいNHK。負けでも結構。裁判の過程を詳しく報じるまでだ。

<中願寺純隆>



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