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福岡市長選めぐる水面下の情勢

2014年4月24日 10:55

 福岡市長選挙まで7カ月余りとなった。再選を目指すとみられる高島宗一郎市長だが、「安泰」という状況ではない。市議会与党の自民党内部では、「市長交代」に向けた動きが顕在化しており、分裂選挙を予想する声もある。理由は簡単。高島氏の議会軽視と、独裁的手法の度が過ぎただけのことだ。社会問題化した保育園移転事業をめぐり、市長が福岡地検に告発されたことも響いている。
 一方、前回市長選で敗れ、与党の座を明け渡した民主党も、一枚岩で選挙に向かう態勢とはなっていない。市長選に向けた各党の動きと、その背景についてまとめてみた。
(写真は福岡市役所)

注目される自民市議団の動き
 市長選に向けてもっとも注目されているのが、最大会派である自民党市議団の動き。平成22年の市長選では高島氏を担ぎ出し、約21万票を獲得。民主党推薦だった当時の現職・吉田宏氏に6万票の大差をつける勝利で、4年ぶりに与党の座を奪還した。我が世の春を迎えると思われていたが、世の中は分からない。若い市長は就任から間もなく、同年代の側近を集め、独裁姿勢を強めていく。

 高島市長が私設秘書として重用しているのは、北九州を地盤とする衆院議員の元秘書。政務担当と称しているが、市の人事にまで介入するらしく、職員から顰蹙を買う始末。私設秘書氏の背後に、麻生太郎副総理や県議会の実力者である中村明彦氏の影がちらつくことにも反発が多い。

 市政運営に重大な汚点を残したのが、市顧問の人事。市長は友人の会社社長を顧問(広報戦略アドバイザー)に就任させたが、同顧問が、市発注業務委託の業者選定に選定委員として関わったことが判明。その大半が同業者を対象とした業者選定だったことや、懇意にしている企業が数回にわたって業務を受注していたことが分かっている。高島人事が市政を歪めた最たる例だ。

 暴走する市長に対し、自民党市議団はなすすべなし。「与党議員なのに、市長に会って話すことさえ難しい」(市議会関係者)といった具合で、両者の距離は広がるばかり。当然、やる事なす事議会無視。事前の根回しなくいきなり施策を公表するという手法が定着してしまった。これでは自民党の市議らが反発するのは無理もない。市長選まで半年あまりとなった現在、同党市議団は一部の長老議員を中心に「再選」を支持するグループと、中堅・若手を集め「再選阻止」を掲げるグループに分かれ、水面下の調整が続く事態となっている。高島氏以外の選択肢は、市議団の中から市長候補を擁立すること。これが実現すれば、分裂選挙の可能性もある。

 ただし、当の高島氏は自民党市議団の動きなど意に介しておらず、麻生副総理=自民党本部を後ろ盾にした再選戦略を描いているとみられる。

まとまらぬ民主
 前回市長選で、現職の吉田氏を擁しながら敗れた民主。市政奪回を狙いたいところだが、非常に困難な情勢だ。一時は、総選挙で落選した福岡2区の前衆院議員を担ぎ出す動きがあったものの、周囲の反対が強く頓挫。候補者擁立のめどは立っていない。一部市議が吉田前市長の擁立に向けて熱心に動いているというが、周囲がこれを支持するまでには至っていない。

 その吉田氏。みんなの党などに推薦を持ちかけているものの、体よく断られており、再挑戦への道は厳しい。党勢回復さえままならない民主党にとって、福岡市長選は来年の統一地方選に向けての重要な局面。もう一度吉田氏を担ぐか、あるいは新たな候補を擁立するか、結論が出るまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。仮に候補者を擁立することができても、これまでのように県議団と市議団が主導権争いを続けているようでは勝ち目はない。

 一時は勢いのあった日本維新の会やみんなの党だが、いずれも党首が起こした不祥事で、支持率が低迷。単独で候補者を擁立できる状況にはない。市長選は、地方議員の数からいっても、やはり自民・公明VS民主の構図になるだろう。高島市長が再選出馬を正式表明するとすれば、直近では6月議会が最有力。各党の候補者調整から、目が離せなくなりそうだ。



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