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福岡市職員ポイント制 不透明な導入決定過程

2014年3月 5日 09:00

福岡市役所 福岡市(高島宗一郎市長)が、新たな組織編成方針として平成26年度から導入を図る「ポイント制」。職員や嘱託員の人件費を局・区毎にポイント換算し、各局区長の責任と権限で組織編成を行なうという手法だ。
 市長は行財政改革の一環だとして胸を張っているが、一律にモノ扱いされる職員からは不評を呼んでおり、「この制度は根付かない」と断言する幹部職員も――。
 そこで、ポイント制についてさらに調べようと行った福岡市への情報公開請求を通じて、極めて不透明な制度導入までの過程が浮かび上がった。制度設計上の課題も積み残したままとなっており、拙速に事を進めたとしか思えない状況だ。
(写真は福岡市役所)

見えない制度導入過程
 ポイント制導入は、どのような過程を経て決ったのか――福岡市への情報公開請求で得た資料と、市側の説明によれば次のような流れとなる。

 福岡市がポイント制を導入することになった発端とされるのは、平成24年5月に設置された「福岡市行財政改革に関する有識者会議」(第2回会議から『自立分権型行財政改革に関する有識者会議』に改称)。北川正恭氏(早稲田大学大学院教授)を座長に、11人の有識者委員が、翌年4月までの間に計9回の会議を重ねた。

 有識者会議では、行財政改革への取り組みについての評価や課題を検証。市としての今後の取り組みの方向性を示す「行財政改革プラン」について意見を交わしていた。議論を踏まえて出されたのが平成25年6月公表の「行財政改革プラン」(計画期間:平成25年度~平成28年度)である。同プランの中には、たしかに「ポイント制」導入が明記されている。しかし、情報公開請求の結果分かったのは、有識者会議において「ポイント制」という言葉は一度も出ていなかった、ということだ。

 市側の説明によると、ポイント制導入に向けての“方向性”が初めて示されたのが、平成24年8月24日の第5回有識者会議だという。この中で使用された資料には、次のように記されている。
《局区の自律経営機能の発揮に向けた改革》
《局長の権限・裁量の拡大と評価の明確化》
《「トップガバナンス」と「局区の自律経営」が両立できるよう、局区長の権限と裁量を拡大することと合わせ、市長・副市長と局区長が議論できるシステムを構築し、福岡市としての経営理念の確立を図る》
《予算編成だけでなく、一定のルールのもと、段階的に組織編成、人事に関する権限も局区に委譲する》
これが新制度に向けた考え方で、ポイント制の原点ということになる。

 公文書上でポイント制導入の過程をたどれば、次に方針が示されたのが平成24年9月28日に開かれた第7回の有識者会議。資料の中で、ポイント制に通じる記載は以下の部分だ。
《これまでの職員削減の結果、組織力の低下が懸念される一方で、厳しい財政状況を踏まえつつ、社会経済情勢や市民ニーズに的確かつ迅速に対応するため、組織力の最大化を目指す改革が必要となる》
《区長の権限や裁量の拡充、予算・人員の権限移譲による局区の自律経営の推進》
《局区枠予算の充実、組織編成権限の移譲と新たな編成手法の導入、人事権の一部移譲》
 重ねて方向性を示してはいるが、資料にも議事録にも「ポイント制」という言葉は出てこない。この日に提示された行財政改革プランの「原案骨子」(市側作成)にも、ポイント制の文字はない。

 平成25年1月の第8回会議の議事録でも、「ポイント制」という文言は出てこない。有識者会議の記録で、やっと「ポイント制」が確認できるのは、同年3月29日の第9回会議に示されたプラン「原案」。それまでは、議論の俎上にも載せられていなかったというわけだ。

「いつ、誰が」は分からずじまい
 それでは、「ポイント制」という呼称は、いつ、誰から提起されたのか――?
 市が開示した資料によると、平成24年10月に総務企画局長(貞刈厚仁現副市長)と財政局長の連名で、各局・区・室長に出された「平成25年度に向けた予算編成・組織編制等の考え方について(通知)」で、初めて「ポイント制」という言葉が使用されたことになっている。「通知」に添付された資料には、職級ごとの「点数」など、ポイント制の設計案が説明されており、この段階で、公表された同制度の概要が固まっていたことが分かる(下がその「通知」の記述)。その後、全く同じ内容で、10月29日に「平成25年度に向けた市政取り組み方針について」とする市長通達が出されていた。

鹿児島 1044.jpg

 一連の流れから言えるのは、有識者会議は、「ポイント制」という市側の方針を、議論することなく追認したということ。議事録にも会議資料にも「ポイント制」という文言が出てこないことが、それを裏付けている。

「九大を参考」の???
 市側の説明と公文書上では、「ポイント制」という言葉の発祥が判然としない。いつ、だれが提唱したものなのかが、全く見えないのだ。参考にした事例も紹介されていない。

 所管の市総務企画局行政部組織調整課にこの点を確認したところ、「九大がポイント制で管理しているということで、それを参考にした」という。おかしな話である。九州大学の組織運営を、福岡市役所に当てはめたということになるが、九大は国立大学法人、市民の多様なニーズに応えなければならない行政機関とはわけが違う。組織の目的も、運営手法も、全く違ったものなのだ。

 さらに詳細な説明を求めたが、「ポイント制」については、有識者会議での議論を受けて、総務企画局内部で検討する過程で浮上したものだという。だが、残された記録を見る限り、出所不明。どなたの発案なのか、まるで分からない。なんとも不可解な方針決定過程となった。

課題山積
 不透明な過程が、制度設計の甘さを招いているともいえそうだ。ある幹部職員は、こう話す。
「総務企画局では、採用から昇任、退職までを一元管理してきた。ポイント制導入で局や区ごとに勝手な人事を行えば、一元的な職員管理はできなくなる可能性が高い。長くは続かない制度ではないか。北川会議の意向なのか、市長が誰からか吹き込まれたものか分からないが、拙速であることは、職員の反応を見れば分かる。組織運営上は、極めて不適当な制度だろう」

 ポイント制導入に伴い、新たに新設される「嘱託職員」にも疑問視する声が多い。勤務時間の割に中途半端な報酬額で、応募者が集るかどうかさえ危ぶまれているのだ。前出の幹部職員の話と合わせ、制度設計上の問題点が解消されないまま、見切り発車したというのが実情だろう。

 報じてきた通り、職員の組合とも話し合っておらず、新制度が職員の理解を得ているとは言い難い。制度設計に課題が残っていることは市の担当課も認めており、今後、混乱が予想される状況と言えそうだ。

 市政改革のあり方を議論した有識者会議の座長・北川正恭氏は、その後、市の顧問を退任。自らが方向性を示した福岡市の行財政改革について、成否を見定める考えはなさそうだ。会見での態度を見る限り、そもそも市政トップの高島市長自身が、新制度の問題点を理解していない。
 不透明な方針決定過程に、無責任体制……。市政の行く末が案じられる。



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