政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
社会

福岡・中央保育園 定まらぬ避難計画と保育士不在
移転強行のツケで揺れる保育の現場

2014年3月12日 08:30

中央保育園工事現場 高島宗一郎福岡市長が移転を強行した市内中央区の認可保育所「中央保育園」(運営:社会福祉法人福岡市保育協会)が揺れている。
 市が9億円をかけて取得した風俗街の移転用地では開園を目指す工事が続いているが、11日までの取材で、重要視されていた園児の避難計画が出来上がっていないことが判明。さらに、保育士については、募集段階で人が集まらず、「派遣」で所定の人数をまかなうことも明らかとなった。子どもを置き去りにした杜撰な計画に、改めて批判の声が上がっている。
(写真は、中央保育園の新築工事現場)

定まらぬ「避難計画」
 中央保育園の移転にともない、新たに整備されるのは2つの園。新「中央保育園」と「第2中央保育園」だ。移転工事の遅れから、4月開園に間に合うのは新「中央保育園」だけで、「第2中央保育園」は6月オープンの予定となっていた。

 問題は、「第2中央保育園」の建設工事が続く数十日間、「園庭」が使用できず、災害時の集合場所がなくなること。そのため、運営法人や市は、新たな園児の避難計画を策定する必要性に迫られていた。

 新しいふたつの保育園の建物がつながっているため、建築基準法上はあくまでも一つの保育園。このため、建築工事なかばで新「中央保育園」だけを使用する場合、同法上でいう「仮使用」ということになり、これを認めるには新たな避難計画に「消防の同意」を得る必要が生じていた。

 HUNTERは先月、保育園側が新しい避難計画を提出したと明言したため、市消防局に提出された避難計画についての関連文書を情報公開請求していたが、開示決定期限の11日、同局から開示期限延長の連絡があった。延長の理由について、消防局側は次のように話す。
「文書を出さないというわけではありません。仮使用ということで、消防の意見を求められているのは事実です。事前協議が続いており、避難計画も出ていますが、延長をお願いするのは、その内容が流動的で、すぐに文書をお見せできる状況になっていないからです」――つまり、避難計画が固まっていないというのである。

 消防が苦慮するのは無理もない。前述した通り、無理に片方の園だけをオープンさせるため、もう一方の園舎の工事中は、災害時避難にあたっての集合場所である園庭がなくなる。さらに、法律上、工事車両の出入り口と人の通行範囲とを区分する必要があるため、避難経路自体が、やっと人が行き交うことができる程度の極めて狭いスペースに限られてしまうのだ。記事冒頭の現場写真をみれば一目瞭然だが、これで百数十人の園児と保育士が整然と避難できるはずがない。

 開園まで20日あまりとなった現在、災害時における園児の避難計画が出来上がっていないということは、まともな保育施設としての体を成していないことを意味している。ぎりぎりで間に合わせたとしても、しょせんは付け焼刃。いざという時に計画通りに事が運ぶ保証はない。仮に突貫工事で2つの園が4月開園を実現できたとしても、園児の避難は容易ではない。中央保育園は、さらに大きな問題を抱えているからだ。

急場しのぎに「派遣保育士」
 移転を強行した福岡市の無責任さに呆れるしかないが、中央保育園は、園児の誘導を含め、子どもたちを守る立場にある「保育士」が不足したまま、開園を迎える。同園の定員は、移転を機に150人から300人に増える。当然、保育士の数も大幅に増やさなければならないはずだが、募集が遅れたことなどが影響したのか、定数にはほど遠い状態。不足の人数を補うため、なんと「派遣」の保育士で急場をしのぐのだという。。園側の説明だと、その数6名。これは、現段階の入園予定者数である250人程度に対応するもので、定員いっぱいの300人が集まれば、さらに「派遣」が必要となることは必定だ。

 派遣保育士は、よほどの事情がある時に生かされるべきで、大人数を長期にわたって使うものではあるまい。正規の職員ではないと知れば、保護者も不安だ。緊急時の対応などで、保育士たちの足並みが乱れることもありうる。市側の杜撰な計画と無理やりに定員を増やしたツケが、いまになって回ってきたということになる。ツケを払わせられるのは、過大な負担を強いられる今いる保育士たち、そして保護者と園児である。

「失政」に厳しい批判
 山口県のある町では、新設の保育園が、やはり工期が遅れたことで開園時期を4月から夏に延ばしている。町側の説明によれば、開園が遅れても入園させたいとする保護者が大半で、一定の理解を得ているのだという。

 福岡市は、園舎の新築工事が遅れることを早い時期に公表し、施設全体の完成まで開園を待つべきだった。しかし、4月に待機児童をゼロにするという市長公約を優先するあまり、工期遅れの実態を隠ぺいするなど、主役であるはずの「子ども」を置き去りに愚行を重ねる結果となっている。

 ある市関係者は次のように話す。
「保育園移転の経緯が不透明なまま、工事を進めたツケだ。子どものことを考えるなら、新しい園舎が完成するまで開園を待つのが常識だろう。工事車両が行き来する横を、園児が通園するなどということは、これまでの福岡市なら絶対に許さなかった。待機児童ゼロに固執するあまり、肝心の子どもの安全や保護者の思いをないがしろにする事態となっている。明らかに失政。高島宗一郎という史上最低の市長を選んだ結果とはいえ、情けない気持ちで一杯だ。事故がないことを祈るしかない」

 在園児の保護者からも、厳しい批判の声が上がる。
「派遣ですか……。やっぱり保育士さんが集まらなかったんですね。移転計画発表以来、保護者も現場の保育士さんたちも、そのことを指摘してきたんですが……。保育士不足に悩む保育園が多いと聞いていましたから、簡単には集まらないと思っていました。市は本当に無責任ですね。避難計画のことにしてもそうです。私たちには、いまだに何の説明もない。子どもの安心・安全などはなから考えていない証拠ですよ。数字の上だけ、待機児童が減ればそれでいいんでしょう。これじゃ、まるで市長のための保育行政じゃないですか。一番幼稚なのは、市長じゃないんですか」

 まともな保育行政とは言い難い現状。高島市長はどう責任を取るつもりなのだろうか。



【関連記事】
ワンショット
 47年前と変わらぬ雄々しい姿が、そこにあった。太陽の塔。...
過去のワンショットはこちら▼
記事へのご意見はこちら
記事へのご意見はこちら
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲