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福岡・高島市政 職員ポイント制の問題点
― きしむ組織 ―

2014年2月25日 09:55

 福岡市(高島宗一郎市長)は昨年9月、平成26年度からの新たな組織編成方針として「ポイント制」の導入を決定、これに伴い週あたりの勤務時間を現行より長くする嘱託員制度を新設することも公表した。
 ポイント制とは、職員や嘱託員の人件費を局・区毎にポイント換算し、各局区長の責任と権限で組織編成を行なうという編成手法。市はこれによって総人件費の抑制が図れるとしている。行革の一環、ということだ。
 しかし、結論から言って、この制度が市政の発展に寄与する可能性はゼロ。職員のモチベーションを下げるだけの愚行である。ポイント制と新設嘱託員の問題点について検証した。
(写真は福岡市役所)

職員からのメール
 ポイント制導入決定後、HUNTERには多くの市役所職員から、これを批判する意見が寄せられた。いくつかを紹介しておきたい。

《職員の「ポイント制」というのも奇妙奇天烈ですが、これもちょっと職員個人個人を馬鹿にした話で、組合は抗議していますね。係長になっていない職員は、ベテランの総括主任も新人も、同じ「ポイント」とか。やる気をなくします》

《人をモノ扱いしている市長と執行部に怒りを禁じえない。今回導入が決った「ポイント制」は、職員を身分ごとに点数に置き換え、ゲームの駒のように前後左右に動かせというもの。人権なんてあったものじゃない。政令市初だかなんだか知らないが、職員をばかにするにもほどがある。業務時間中にフィットネスクラブで遊んでいる市長にとって、職員はモノ、道具に過ぎないということだろう。バカにするなと言いたい》

《やる気なくしました。私は現在の仕事に誇りを持って取り組んできましたし、上司からも信頼されていると信じています。ですが、新人と同じ点数で横並びにされ、あたかも将棋の駒のごとく、組織の都合で配置転換されるというのでは、到底納得できません。大体、初めから局や部ごとにポイントが決っていること自体、ナンセンスでしょう。これでは積み上げた事業などできるはずがありません。その時ごとに市政の課題があり、部や課ごとの予算が決まっていくのに、最初に職員数を決め込むポイント制では、活力など生まれようはずがないのです。これは行革などではなく、だれかの浅知恵に市長が乗っかった結果でしょう》

市職労の話
 悪評ばかりのポイント制について、何が問題なのか福岡市職員労働組合の幹部に話を聞いた。(以下、3種類の表は市職労提供の資料を基に作成)

 ―― ポイント制の問題点について、聞かせて下さい。
 一言でいうと「人をモノ扱いする愚行」ということです。福岡市は職員をモノ扱いしているとしか思えない。

 ―― 具体的には?
表1-1.jpg そもそも職員を点数で管理する手法が正しのかということです。職員はすべて「100ポイント」なんです。これを基準に、係長級以上に加算されています(右の表参照)。ベテランの総括主任が、新年度採用の新人と同じ点数など、考えられません。新人に先輩と同レベルの仕事ができるはずがないからです。現場を無視した結果ではないでしょうか。

 ―― さらに問題があるそうですが?
 ポイントを予算に換金できる点は驚きとしか言いようがありません。1ポイントが68,000円なんですが、例えば、与えられたポイントを超えることが想定される新規事業に1,000万円必要だとします。すると170ポイントの課長を売りに出して1,156万円を捻出するか、140ポイントの係長をカネに換えて952万円を作るかということになります。100ポイントの職員なら2名減じないと、とても足りません。どうしても新規事業が必要な場合、こうして職員の数を減らして予算を無理矢理捻出することが求められてしまうのです。まともな仕事ができるとは思えません。まったくおかしな制度なんです。

表1-2.jpg ―― それでも人手が足りなければどうなるのですか?
 そこで、新設の嘱託職員制度が誕生したわけです。嘱託ですから、もちろん非正規。従来の6ランクある嘱託員のポイントが40~90ポイント。これに対し、新設の嘱託員は、30ポイントです。使い勝手がいい。しかし、勤務時間が現行の週27.5時間から30時間に増えるというのに、報酬は月額128,000円まで。現行の嘱託制度では、月額171,900円から341,400円なのに、新設嘱託員は極端に報酬が低いのです。なぜかというと、勤務内容に専門性がない、いわば雑用係というわけです。

 ―― 新設嘱託員は集りますか?
 パート希望の主婦が集ってくると踏んでいたようですが、難しいでしょう。年収が130万円を超えると、配偶者の扶養から外れ、社会保険料も自己負担になります。月額12万8,000円で1年間嘱託勤務に就けば、年収は150万円を超えてしまうのです。どう考えても損な話で、うまく機能するとは思えません。問題は、専門性を必要とされない嘱託員が増えた場合、市民の抱く思いがうまく汲み取れなくなることです。これは行政にとって致命傷です。

表2.JPG

 ――ポイント制導入に至る過程で、組合には相談があったのですか?
 行政プランの策定では、組合との協議は一切ありませんでした。制度改正だから、労使協議事項ではないというのです。交渉のテーブルさえ設けられなかったのです。北川行革プランは、市長の一方的なマネジメントで進められており、職員の気持ちや意見などは一顧だにされていません。「心」のない行政が、市民のためになるとは思えませんね。

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問われる職員無視の姿勢
 昨年9月の定例会見、高島市長はポイント制導入について次のように述べている。

《財政改革の方については、これは行財政改革プラン、同時につくってみましたので、こちらに基づいて、平成26年度から局や区の自律経営を本格的に実施したいというふうに思います。各局長、区長にこの組織の編成権限を大幅に移して、人件費をベースとしたポイント制の定員管理を行うなど、新たな手法を導入いたしまして、限られた人数でいかに最大の成果を出せるかということで、組織力の最大化を図っていきたいというふうに考えております》

 ポイント制導入で組織力が上げると思っているようだが、これは現場職員の気持ちなどまったく理解していない証左である。前述した職員からの意見や市職労の説明にあるとおり、これで組織が活性化するはずがない。

 会見で、ポイント制導入で組織がかみ合うのかと聞かれた市長は、こうも話している。
《今回ですね、いわゆる予算ということのやはり最適化をしてゆく、選択と集中をしていくっていうことで、当然ビルド・アンド・スクラップが大事になってくるわけですよね。つまり本当に必要なものは何か。じゃあそこに力を入れていく分、じゃあ他のどの部分というところとバランスを取らなきゃいけないかということも一緒に考えなければいけないわけですよね。で、そうしたやはり、各局、各区の中で、そこのところを融通を利かせて、一番本当に現場で見ていて、ここにこういう人が必要だという、そうしたところを、いわゆる本庁の方が決めてしまうのではなくて、局長、区長が、自分たちの局の中で、区の中で話をし、考えていく中で、そのポスト数も決めていくと。こういったことの裁量権を与えることによって、本当に必要な場所にですね、臨機応変に人を配置することができるというようなことが、今回の狙いです》

 質問に対する答えになってないことは歴然だが、この市長の発言内容は、意味不明というしかない。アナウンサーあがりだけに饒舌。立て板に水でしゃべられると、なんとなくごまかされてしまうようだが、市長発言を文字に直すと、何を言いたいのか判然としないケースばかり。この時の発言はその典型だ。ただ、この会見での答弁ではっきり分かることがある。

  • 高島市長は、ポイント制がもたらす弊害について、何も考えていない
  • 部下たちの立場、気持ちを思いやるという組織トップとしての資質が欠如している

 間違った見方ではないと思うが……。



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